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LoveとLikeと

「あ、桜井さん」


 俺が登校すると、下駄箱にいる桜井さんと目があった。


 結局、あの後考えても、まだ正確にこれだという答えは出なかった。


 そんな状態で声をかけるのも少し躊躇ったが、目が合ってまで無視はできないので、声をかける。


「・・・・・・」


 あれ?そんな大きい音量で喋りかけてないから聞こえなかったのか?


「桜井さん?おはよう」

「・・・ごめん」


 小さくそれだけ呟いて桜井さんは逃げるように去って行ってしまった。


 もしかしなくても避けられてる?




「おぉーやっと司が来た」


 俺はクラスに着くと遥紀の言葉も無視して席に座った。


「答えは決まったのか?」

「いや、まだ決まってない」


「早く決めないと、せっかく告白してくれた桜井さんに失礼だぞ」

「それはそうなんだけど・・・」


「なにかあるのか?」

「今朝から避けられてる」


「あちゃー、そういう方向に行ったか」


 俺は一応スマホを取り出して、桜井さんにメッセージを送る。


『今日の放課後、一緒に帰らない?』


***


 お昼休みになると、桜井さんに送ったメッセージに返信が来た。


『今日は、用事があるの。ごめんなさい』

『じゃあ、明日は?』

『明日も用事があるの』


『じゃあ、今週のどこでもいいからいつが帰れるかな?』

『今週はちょっと、用事があって』


「桜井さんは今週、用事があるんだって。それはしょうがないね」

「そんなわけないだろ!?」


 これ完全に避けられてます。


 俺としてはいきなり返事を求められても、それはそれで困るんだが、最悪このまま避けられ続けてなあなあで行くのはもっと良くない。


 でも、避けてる桜井さんを過度に追うのもなぁ・・・


「これどうすればいい?」

「なんとも言えないけど、とりあえずは様子見しかないんじゃない?学校で嫌がってるのに話しかけてたら、嫌がらせと思われるかもしれないし」

「だよなぁー」


 俺は、緊張していた体を少しほぐして、ぐったりとした姿勢を取る。


 一旦、桜井さんの件は保留にするしかないかぁー。


「あ!そういえば!」

「なんだよいきなり。何か方法が見つかったのか?」


 昨日は桜井さんの一件で考えることを忘れていたことがあった。


「どうしよう、あの2人も俺のことが好きなんだ」

「あの2人って?」


 周りに聞かれるとまずいので、耳元で遥紀にだけ聞こえる声だけで言う。


「瑞希と希」

「え!?分かったの?それとも2人にも直接言われたの?」


「いや、その2人には直接言われたわけじゃないけど、根拠があるんだよ」

「???」


「俺が熱がありそうと言ったら、3人全員、俺の額に手を当ててこようとしたんだ。好意があるってことはそうするってことなんだ。桜井さんがそうだったからな。遥紀が周りを見て比べろって言ってたから分かった」


 どうだ、遥紀。俺は恋愛に鈍い人間じゃないんだ!


「え、それだけ?」

「うん」


「根拠ざっこ」

「なんだと!?」


 そこはよく分かったなって俺を見直す場面じゃないの?


「友達なら別にそれくらいしてもおかしくないでしょ。俺だって司が熱っぽかったら手を当てると思うし。異性の好きもラブとライクがあるんだよ」


「え、ほんとに!?」

「それが分かってないから司は恋愛音痴なんだよ」


 それじゃあ、俺は今まで恥ずかしすぎる勘違いをしていたってことなのか?いや、そんなわけがない。そうじゃないと信じたい。


「せんぱーい!」


 俺の前提が崩れようとしたとき、ちょうど後輩が俺の元へやってきた。


 ちょうどいい機会だ。遥紀見てろよ。俺は間違ってないはずだ。


「ねぇ希。聞きたいことがあるんだけど」

「なんですか?司先輩?」


「希って俺のこと好き?」


 本当に好きなら桜井さんみたいにここで好きと答えるはずだ。


「え、いきなり何言っちゃってるんですか?」


 希は引いたような顔で俺を見る。


 グサッ


 俺の心にひびが入る音がした。


「なんか変なものでも食べたんですか?あと、そんな聞き方する人初めて見ました」


 グサッ


「司先輩は羞恥心とかないんですか?」


 グサッ、グサッ、グサッ


 俺の心は完全に折れて、その場でうずくまった。


「あれ、これどうなってるんですか黒瀬先輩?司先輩なんか丸まっちゃいましたけど」

「そっとしておいて。今、司は色んな事が重なって、たまにキャパオーバーになるから」


「なんか司先輩の様子がおかしいので、私は色々察して、今日はお昼一緒に食べるのはやめときます」


 グサッ


 頼むから、死体蹴りしないで。ありがたいけど。


「あ、あと言い忘れてましたけど」


 希は一度少し離れた後、忘れ物を取りに来るかのように自然な動作で俺の耳元まで来て、吐息交じりの微かな音量で囁く。


「好きですよ。・・・先輩として」


 それってどっち?


 好きにラブとライクがあるのは分かったけど、先輩としてもあるの?じゃあ後輩も同級生としてもあるの?いったい何種類あるの!?


「司が導き出した答えが合ってるかは別として、恋愛って行動一つでとか、そんな簡単に分かるもんじゃないんだよ」


恋ってマジで理解不可能じゃね!?

105話も読んでいただきありがとうございます。

改めまして100話到達本当にありがとうございました。次の目標はあと10万を切った累計100万PVです。

その際にはこうやってまた少しでも何か還元出来たらいいなと思っています。

更新頻度は一旦これまで通りに戻りますが、理想は2日ごと、最低でも4日は空けないように頑張ります。(空いたら本当に申し訳ないです)

これからも応援よろしくお願いします。

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好きになった人がこんな行動して来たら蛙化しそう() 最近バイトの先輩が大人しいな...
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