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バチン!


「痛ってええ!!!」


 突然遥紀から受けたのは、強めのビンタ。しかも左右両方の頬を両手で。


「司、大丈夫!?」


 俺の悲鳴を聞いた瑞希が飛んできて、俺の部屋の扉を開ける。


「大丈夫、ちょっと遥紀にビンタされただけ」

「あ、もう治ったんだ!」


 瑞希は俺の顔を見ると、さっきの心配はどこに行ったのか嬉しそうにしていた。


 そんなに俺がビンタされると嬉しいの?


「じゃあ、私は晩ご飯の支度に戻るね。今日の晩ご飯は茄子の肉詰めだから」

「え、待って。違う選択肢は・・・」


 そうして、晩飯は俺の苦手な料理に決定してしまい、扉は閉じられた。


「それにしても何で遥紀がいるんだ?」


 というか、今日俺どうやって帰ってきたんだっけ。


 家に着いてからも今まで何していたのかあんまり思い出せない。


 ずーっとぼぉーっとしていたような。


「涼風さんから司がおかしいって連絡貰って、治しに来たんだよ」

「それは、すまなかったな」


 確か俺は、桜井さんから告白されて・・・


「おい、またあっちの世界に行きそうになってるぞ」

「あ、すまんすまん」


 ちょっと考えることが多すぎて、逆に考えられなくなってしまったのか。


「で、桜井さんから告白されたこと悩んでるんだよな」

「なんで、知ってるんだよ!?」


 こいつ、ここまで来るとエスパー確定じゃないか。


「なんでって、さっき司が自分から言ってたんじゃん」

「まじかよ。他にはなんか言ってないよな?」


「いや、大事なこと言ってたよ」


 おいおいまじかよ、過去の俺、口柔らかすぎだろ。


 心あたりはないけど、黒歴史とか話されたら恥ずかしくてここから飛び降りるぞ。


「何を?」

「えっとね、司が!いっつも!涼風さんが寝てるところに手を出そうか迷ってる!とか!」

「おい!瑞希に聞こえてるって!マジでやめろ!」


 慌てて扉を開けて、料理をしている瑞希に弁明する。


「いや、これは遥紀の冗談で、思ってないからな!」

「・・・・・・えっち」


 瑞希は顔を真っ赤にして言う。


 こんな時に冗談を言うなんて、遥紀をボコボコにしよう。


 犯行現場を見られないように扉を閉めて、遥紀の方に体を向ける。


「つ、司、そんなに怖い顔して、どうしたの?今やったことは謝罪するからさ。早まるなって。あれ以外は何にも言ってないから!」

「本当だな?」


「本当、本当。神に誓っても!」

「じゃあ、まぁぎり許してやるか」


 部活帰りで俺の元に来てくれたのに、流石にボコボコにするわけにはいかないか。でも、本当にギリギリだったけどな。


「それにしてもちょうど桜井さんに告白されるなんて、タイミング凄いな」

「いや、俺が聞いたからだよ」


「・・・お前メンタルえぐいな。普通自分のことが好きかなんて聞けないって」

「色々な状況が重なったからだよ!」


 俺だって、罪悪感さえ感じてなかったら正直に言うはずがない。


 しかも、絶対否定されると思ったから言ったのに。


「で、どうするんだ?」

「・・・分からない」


「分からないって何が?」

「なんて返せばいいのか」


 桜井さんとはすごく仲がいいし、女子の魅力を感じたことがないかと言ったらそうでもない。


 でも、きっとこの感情は恋と言うのものではないのだと思う。


 桜井さんは、マジファンを語れる唯一の友達だ。


 俺は、桜井さんという友達を失いたくはない。


 OKをすれば、友達から恋人に名称は変更されるが仲良くすることは出来る。


 でも、恋愛的な恋心を持っているかどうかで決めるのならば俺は、桜井さんの告白をOKはしないのだろう。


 どんなに伝え方を工夫したところで、告白を受け入れなかった以上は、これまで通り話すのは厳しいのでないか。と考える俺がいる。


 それ故にどうしたらいいのか分からない。


「仲のいい異性の友達とこれまで通り仲良くする方法はないのか?」

「基本的にはないね」


 遥紀はやけにきっぱりと言い切る。


「表面上は取り繕えるかもしれないけど、どうしても思ってしまう。この人は私のことは好きじゃないんだ。俺はこの人のことを振ったんだって」


「だから、俺は友情を失うくらいなら告白を受けるべきか悩んでる」


「なるほどね、じゃあ俺はそろそろ帰るわ」

「え、おい!ここまで話しておいて途中で帰るのかよ!」


 これまで、話を聞いていたのに遥紀は突然、帰る支度を始めた。


「だって、これ以上は部外者である俺がなにか言える内容じゃない。もしこれで俺が自分の気持ちが大切だから振った方がいいなんてとてもじゃないけど、桜井さんに失礼すぎて言えない」


 確かに、そうだよな。ここからは俺だけで結論を出さないといけない。


「でも、帰る前に1つだけ。別に俺はこれから司がどんな選択をしたって責めたりはしない。自分の気持ちを大切にするのなんて普通だけど、好きじゃなくても付き合うカップルなんて死ぬほどいる。だから、()()()。これだけ忘れないようにな」


 遥紀はそれだけ言って、俺の部屋出た。


「あれ?黒瀬君もう帰るの?」

「うん、司はもう治ったし。夜も遅くなりそうだしね」


「分かった。ありがとね」

「こちらこそ、大事な時に呼んでくれてありがとう」

104話も読んでいただきありがとうございます。

明日も投稿します!

これからも応援よろしくお願いします。

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