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調査結果

「ねぇ、この前出たコミカライズ読んだ?」

「ああ、読んだよ」


「最高じゃなかった!?」

「もちろん最高だった」


「だよねぇー!」


 ほら、どう考えたって友達の距離じゃないか。


 好きな人とはもっと、きゃぴきゃぴした話をするものだ。マイナーなライトノベルの近況報告で楽しくなったりはしない。


 仲は良いかもしれないが、それは恋愛的な意味でなくて、オタク友達としてだ。


「なんか俺、今日調子悪い気がするな。熱でも出てんのかな?」


 もうほぼほぼ核心まで迫っているが、一応今日希にやられたことをやってみる。


「え!?さっきまで元気だったじゃん!どれどれ」


 桜井さんも希と同様、俺の額に手を当ててきた。


 今回は予想してたこともあって、避けはしなかった。


「うーん、熱はないと思うけどなー」

「じゃあ、俺の気のせいか。ごめんな心配かけて」


「うん、大丈夫・・・で、でも今日は念のため安静にしておきなよ」

「ありがとな」


***


 家に帰ってじっくり考えてみた。


 今日の希と桜井さんは導入部分は違えど、同じ行動を取った。すなわち2人が俺に抱いている感情はほぼほぼ一緒ということだ。


 それなら導かれる結論は2人は俺のことなんか好きではないということだ。ただの知り合い、友人くらいに感じているということになる。


 でももし、万が一、自惚れすぎた考えだとは思うが2人とも俺のことが好きという可能性も0.0001%くらいはあるだろう。


 考えてると、玄関から瑞希が帰ってくる音が聞こえてきたので、一芝居打つことにした。


「ただいまー。って何してるの?」


「ううー具合が悪いなぁー」

「何ふざけてるの?」


 芝居とは言ってもさっき桜井さんに仕掛けたときに罪悪感が満載だったので、今回はこれが冗談でやっていると初めから分かるようにわざとふざけてやってみる。


「具合が悪い、具合が悪い、ああーばた」


 俺はソファに寝転んで瑞希の方をちらっと見た。


「ああ!これは大変だ!どうかしたんですか!?」


 ノリのいい瑞希はこれがおふざけだと分かると予想通り乗ってきた。


「うーん、なんだか熱があるような気がするんです」

「それは大変ですね!じゃあ、測りまーす」


 すぐ近くに体温計があるのに、瑞希は俺の額に手を当てて測りだした。


「はーい、熱なんかありませんね」

「やっぱりそうだよな!」


 勢いよく体を起こして、大声で言った。


「うわっ!いきなり元気になるなんてびっくりした!」


 やはり、好きな相手じゃなくても友人くらいなら額に手を当てるくらいなんてするのか!


「ねえ、いきなり始まったけどこれなに?」

「普通は熱が出てるかもしれない友人を確かめるときは手を当てて確認するよな!」


「え、普通に体温計使えって言うでしょ」

「だって、今そうやったじゃん」

「あ、あぁー!そういえばそうだね。手を当てるくらいするね!」


 ほらやっぱり。これで俺のことを好きな説は0.0001%どころか完全に払拭された。


 俺は同じ過ちを繰り返さない男。変に先走ったりしないのさ!


「それだけ分かればいいんだ」

「本当になんだったの?」


 考えてみれば、歩きながらあんなラフに好きな人なんか公開しないか。


 そんなことにも気づかないなんて、俺ってバカだなぁー!!!


***


「それで、昨日桜井さんと帰ってみてなんか分かった?」


 翌日、学校に行くと遥紀が開口一番聞いてきた。


「もちろん、分かったに決まってる。俺の勘違いだっただけだ!」

「一応、聞くけどどうしてそう思ったの?」


「桜井さんにも瑞希にも昨日希にやられたことを試してみたら、みんなおんなじ様な行動を取ったんだ。それすなわちみんな俺のことは友達程度に思っているってことだ!」

「まぁ司ならそういう考えにたどり着くよね」


 遥紀なら当然俺が正解にたどり着くことくらい知っているか。


「そんな、褒めるなって」

「全く褒めてないけど」


「じゃあ、違うって言うのか?」

「少なくとも俺はそう感じたけど」


 なんでも知っている遥紀も女心は理解できないかー。弱点は誰にもあるものだな。


「なんだ、その勝ち誇った顔は」

「いいやー何でもないよ」


***


 今日も遥紀はテニス部があるので、俺1人で帰ることにした。


 下駄箱に行くと、昨日と同様桜井さんに遭遇したので、昨日と同じように一緒に帰路についた。


「昨日本当に大丈夫だった?」


 昨日俺がついた嘘を信じ切っていて、心配してくれた。


「ごめん!あれ、嘘だったんだ!」

「え、なんでそんなこと」


「実は、桜井さんが俺に気があるのか確認してたんだ」


 本気で心配してくれていた桜井さんにまた嘘をつくことが出来なかった俺は、醜態を態をさらすようだが本当のことを話すしかなかった。


「そんなわけないのにな。自惚れすぎってやつだよな。気を悪くしたなら本当にすまん」

「・・・・・・」


 俺の言葉を聞いた桜井さんはしばらくの間黙ってしまった。


 やっぱりきもいやつだと嫌われてしまっただろうか。


 しばらく会話のないまま、俺と桜井さんが分かれる交差点までやってき来た。


「じゃ、じゃあまたな」


 頼む、俺のことを嫌ったとしてもせめて別れの挨拶は返して欲しい。


「・・・・・・自惚れじゃないよ」

「えっ」

「好きだよ、司のこと」

102話も読んでいただきありがとうございます。

内容変更により、更新遅れてしまったことお詫びいたします。103話、104話、105話は予定通りの投稿予定です。

これからも応援よろしくお願いします。

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