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調査

「あ!そういえば私、100均で買うものあったんだ。食べたら行っていい?」

「それはいいけど、新宿御苑はもういいのか?」

「うん、もう大満足」


 回ったところと言えば旧御涼亭くらいしかないし、12月で紅葉だったり綺麗な緑を見たわけじゃない。


 それなのに、これだけ満足してるのはやはり女子って難しい。


 100円ショップを調べると、先ほどまでいた映画館の下の階にあったらしく、結局俺達は映画館の施設に戻ってきて買い物を済ませた。


「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるね」

「ああ」


 瑞希がトイレに行っている間、することもないので周りをぼぉーっと見ているとエスカレーターから見知った顔が降りてきた。


 今、鉢合わせてここで立ち話なんてされたら、瑞希がトイレから出てきたときやばいので、咄嗟に近くのお店の商品棚の裏に隠れた。


 降りてきたのは俺の後輩である水上希と同級生の桜井鈴賀だった。


 え、2人が初めて会ってからまだ1週間経ってないよね?女子ってそんなスピードで仲良くなるものなの?


 それとも、希がコミュ力お化けなだけ?


「ん?どうしたんです桜井先輩?なんかびっくりしたような顔しましたけど」

「今、司がいたような気がしたんだけど」


「え、司先輩ですか!どこですか!?」

「いや、もう見えなくなっちゃって。でも、多分見間違いだったと思う」


 危ない。咄嗟に隠れたのが功を奏したか。


「きっと見間違いですよ。司先輩は陰キャなんですからこんなとこいるはずありません」


 おい、希。いないと思って好き勝手言いやがって、俺はここにいるぞ。出てきてやろうか。


「そういえば、司先輩と桜井先輩ってどういう関係なんですか?」

「えっ!予備校が一緒で趣味が合うってだけで・・・」

「ほんとにそれだけですか?」


 希のやつ何が言いたいんだ?


「そ、それだけだよ!逆に水上さんこそ司とどういう関係なの?」


 どういう関係って言ったって桜井さんの知ってる通り、ただの先輩後輩の関係だけどな。


「それは、後輩先輩の関係ですよ」


 ほら、やっぱり。


「・・・それだけ?」


「そんなわけないじゃないですか」


「「え、」」


「もちろん司先輩は先輩ですけど私の大好きな人でもあります」


「「!!!」」


「それって・・・恋愛的な・・・」

「もちろんです」


「私は言いましたよ。桜井先輩はどうなんです?」

「わ、私も!・・・」


 2人は歩きながら話していたので、俺が隠れていた位置からはこれ以上は聞こえなかった。


 俺の聞き間違いでなければ、希は俺のことが好きだと言った。しかも恋愛的な意味で。


 もちろんあいつのことだから桜井さんをからかうためにわざとそういうことを言った可能性もある。


 だが、商品棚の隙間から見たあいつの目はどうしてもそういう可能性を考えることを否定した。


「あれ?司は?」


 あれから何分経ったか分からないほど頭が混乱しているときに瑞希がトイレから出てきて俺を探し始めたのでようやく少し正気に戻り、瑞希の元に姿を現す。


「あ、いたいた。ん?なんかあった?」

「いや、なんでもないよ」


「じゃあ、夜ご飯の支度もあるからそろそろ帰ろっか」

「そうだな」


***


 家に帰ってきて時間が経っても、どうも先ほどの出来事が頭に残って消えてくれない。


 希は箱根で偶然会って以来、仲の良い後輩という目でこれまで見てきた。


 向こうもそれくらいの認識でいると思っていた。だけど、今日聞いた内容はそれをひっくり返す内容だった。


 希は最初、絡みづらいという誤解も受けていて友達も少なかったが、今では誤解も解けて同級生にも友達はたくさんいる。それなのにも変わらず俺に突っかかってくるのは、ただ単に恩を忘れない義理堅いやつだからだと思っていた。



 それに聞こえたわけではないが桜井さんも希に流されて何か大事なことを言いそうな雰囲気だった。


 あの流れで言うことは1つしかないが・・・


「司ーお風呂入らないのー?」

「ああ、今入る」


 考えることが山ほどあって、頭がパンクしそうだ。


 でもまだ俺の聞き間違いだってこともあるし、桜井さんをからかうだけだったという可能性もないわけではない。


 最近、つい恋愛的な方向に走って、から回ることもあったからな。(勉強合宿での人狼ゲームとか)


 その人物がいない場面で相手の感情を読み取ろうとしたって無駄なだけだな。


 油断すると考えてしまう脳を今日はなるべく頭を空っぽにして寝た。


***


「司せんぱーい!お昼食べましょう!」


 翌日、ちょうどよく俺の前に希がやってきた。


「・・・・・」


「どうしたんです?そんなに私のことじーっと眺めて。なんか顔についてますか?」

「いいや、そうじゃない。じゃあ食堂行くか」


「あら、珍しい」

「いつもなら絶対拒否って来るのについに司先輩は素直になった!」


 俺の言動に遥紀も希も2人して驚いていた。


 今日ばっかりは希が本当に俺に気があるのか調査しなくては。

100話も読んでいただきありがとうございます。

記念すべき100話目に到達することが出来ました。本当にありがとうございます。

長くなりそうなので、この続きは活動報告に載せておきます。

長くと言っても1分ほどで読めますし、これからの更新情報も載せていますので、あと1分ほどお付き合いいただけると幸いです。

これからも応援よろしくお願いします。

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