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第4話 業務内容

 翌日の放課後。

 寄城(よりしろ)は再び早明浦(さめうら)事務所にやって来ていた。

 その手には、ついさっき買ってもらった新品のスマホが握られている。


「はあ……最近のスマホは十三万もすんのかよ」

「フィルター代も入れたら十四万ッスね」

「そうだった……ぼったくりかよ」


 ため息をつく早明浦(さめうら)をよそに、寄城(よりしろ)は満面の笑みでスマホを触っている。


「おい寄城(よりしろ)。仕事はちゃんとしてもらうからな」

「そりゃあもちろんです! 何でもやらせていただきます!」


 寄城(よりしろ)は心からそう言った。

 彼は金に関してはケチだが、金を貰える仕事に対しては人一倍熱心であった。


「それじゃあ寄城(よりしろ)先輩、業務内容を説明するッス」


 一応”後輩”に当たる人物から、「先輩」と呼ばれながら仕事の説明を受けるのはおかしな気分だ。

 寄城(よりしろ)はソファーの上で、居住まいを正した。


「早速本題なんスけど、先輩は”メリーさんの電話”って知ってるッスか?」

「聞いた事はあるけど……都市伝説でしょ?」

「そうッスそれッス! 先輩には、そのスマホでメリーさんを呼んでもらうッス。やり方はここに書いてあるッスから」


 そう言って、招鬼(まねき)はテーブルに紙の束を置いた。

 何枚かのA4用紙に印刷されたスライド資料が、ホッチキスでまとめられていた。


「この資料、招鬼(まねき)さんが作ったの?」

「もちろんッスよ。どうッスか?」

「めっちゃ綺麗だし見やすい……すごいんだな、俺より年下なのに」

「もう、褒めても何も出ないッスよ~? あっ、ケーキ食べます?」


 「あーっ、それ取っといたのに」と制止する早明浦(さめうら)を振り切って、招鬼(まねき)はキッチン横にある小さな冷蔵庫からケーキを出してきた。

 その迅速な動きと、皿に添えられたフォークからも、彼女の仕事の出来が窺える。

 寄城(よりしろ)はケーキを口に運びながら、資料に視線を落とした。


「あっ、寄城(よりしろ)先輩にやってもらうのはここッスね~」


 招鬼(まねき)の指さしたところには、どこかで聞いたような内容が書かれていた。


***


 公衆電話から自分の携帯電話にかけて、「メリーさん、おいでください」と三回唱える。

 しばらくするとメリーさんから電話がかかってくる。

 かかってくる度にメリーさんは近付いてきて、最後には召喚者の背後に現れる。

 この時に、メリーさんの機嫌を損ねなければ、何でも一つ質問に答えてくれる。

 しかし機嫌を損ねたり、振り返ってしまうと、どこかへ連れて行かれてしまうという。


***


「で……俺がやるのこれだけ?」

「はいッス」

「都市伝説の検証か何か?」

「うーん、早明浦(さめうら)先生はメリーさんを退治したいらしいッスけど」

「なるほど……?」


 さすが自称”陰陽師”の人の考えることだ、と寄城(よりしろ)は心の中で笑った。

 正直バカらしいが、スマホを新調してもらった恩は返さねばならない。

 最後まで付き合おうと、彼は決意を新たにした。


「じゃあ早速行くッスか」

「行くって、どこへ?」

「だーかーらー、公衆電話ッスよ! メリーさんにかけないとッスから」

「ああ、そうか」


 寄城(よりしろ)招鬼(まねき)に連れられるがまま、事務所を出た。

 例の狭いエレベーターで下り、ビルを出ると、彼女は路地の奥へと歩き始める。

 ここに来るまで知らなかった、不気味で細い路地。

 その奥の方へ行けば行くほど、なぜだか足を踏み入れてはいけないような、不気味な重力のような圧が一帯を支配していた。


寄城(よりしろ)先輩、平気ッスか?」

「うん。大丈夫……」

「あーそっか。んーまあそのうち慣れるんで大丈夫ッスよ!」

「……?」

「顔色悪いッスね。手ぇ、繋ぐッスか?」


 寄城(よりしろ)の返事を待たず、招鬼(まねき)は片手を繋いだ。

 その途端、彼の身体を押さえつけていた圧のようなものが、ふっと和らいだ気がした。


「何か、少し楽になったかも……ありがとう」

「良かったッス。初めての人には、確かに奥の方はちょっとキツいかもしれないッスね~。一番奥には()()があるッスから」

「アレって……?」

「完全に消しきれなかった怪異とか霊を、向こうにある社に祀ってるんスよ。ほら、あそこッス」


 招鬼(まねき)の指さす遠くの方には、赤い鳥居のようなものがある。

 が、その周囲はなぜか霞がかったようになっていて、はっきりとは見えなかった。


「今のボクでも、アレの近くまで行くと結構圧力感じるんスよね。俗に言う”霊圧”ってやつッス」

「へ、へえ……。そんな危ないもの、こんな街中に置いといて大丈夫なのか?」

「この路地全体に、人払いの結界が張ってあるッスから。事務所(うち)の場所を知っていて、明確な目的がある人じゃないと、この路地には入れないんス。目には見えても、自然と意識から逸れるようになってるんスよ」

「なるほど。そういえば俺もそうだったな」


 寄城(よりしろ)は、自分もなぜかこの道の存在に気付いていなかった事を思い出した。

 少しだけ気持ちに余裕が出て、やっと彼女の手の柔らかさに気付いた頃。


「はい、着いたッスよ」


 招鬼(まねき)はパッと手を離し、目の前を指さした。

 そこには、巨大な墓石のような重苦しい雰囲気を纏った電話ボックスが佇んでいた。

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