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7 クロードside あなたを、大切にしてみせる

 その後、あれよあれよという間に話は進み、婚約。入籍。

 ほぼほぼロマイル伯爵家の出資により新しい家が建ち、求婚から半年ほどで、モカロリーゼ様が妻としてやってきた。


 まさかまさかの展開に、夢でも見ているのかと思った。

 モカロリーゼ様は、俺が新米騎士だった頃からの、憧れの人だったから。

 年齢はこちらが上だが、彼女は才能を認められての特例入団者。

 騎士としては、モカロリーゼ様の方が先輩なのだ。

 まだまだ弱く、たいしたやる気もなかった新米の頃、彼女の結界術と治癒術に救われて以来、あの背中は憧れで。

 ずっとずっと、あの優しさと強さを、追いかけていた。

 小隊長になれたのだって、少しでも彼女に追いつきたくて、努力するようになったからだ。

 すれ違うたびに目で追っているうちに、いつしかそれは恋心になっていて。

 でも、届くはずがないと諦めていた。


 たしかに、彼女の退役のきっかけを作ったのも、その任務への彼女の同行を求めたのも俺。

 お前のせいでこんなことになったと言われても、仕方がないと思っていた。

 なのに、モカロリーゼ様は笑った。もうすっかり元気だと言って、気丈に振る舞ったのだ。

 気を、遣わせてしまった。心臓が締め付けられるような心地になった。

 そのうえ、彼女が既に騎士団員ではないことまで教えてしまった。

 事情は聞いていなかったとはいえ、失言だった。


 取り柄も居場所も失ったというモカロリーゼ様の言葉と涙を前に、責任を感じたのだって事実。

 だが、突然、結婚、だなんて。

 なんの気持ちもなければ、その場で急に出てきはしない。

 彼女のことが好きだったから、ずっと片思いしていたから、咄嗟に、結婚などと言ってしまったのだ。

 

 憧れの人が、妻になる。

 絶対に届かないと思っていた人が、同じ家にいる。これから一緒に暮らすことになる。

 経緯はいかがなものかと思うが、浮き足立って、そわそわするのも無理はない。



 新居に到着したモカロリーゼ様を、彼女の私室へ案内する。

 ロマイル伯爵家から多くの出資があったとはいえ、モカロリーゼ様から見れば、新居はこじんまりとした質素なものだろう。

 一階には、リビング、ダイニング、水場等、生活に必要な機能が。

 二階はそれぞれの私室に、一応の夫婦の寝室に――いつか使うかもしれない、子供部屋。

 使用人もほとんどいない。数でいえば、一人だ。

 その使用人というのも、ロマイル家でモカロリーゼ様についていたセアナというメイドである。

 義理の父となったロマイル伯爵が、大事な娘を心配してこちらによこしたのだ。


 きっと、モカロリーゼ様に不便な思いをさせる。

 それでも、彼女は俺の妻となってくれた。この結婚を、なかったことにはできないし、する気もない。

 なら、俺がやるべきことは。

 私室を見回すモカロリーゼ様に、向き合った。


「一代限りの男爵家ゆえ、使用人もほとんどおらず、不便な思いをさせてしまうかと思いますが……。精一杯、た、大切に! させていただきます……!」


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