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3 あの子のためにも見せつけろ!

「仲良くしてるみたいね。あの子、楽しそうだったわ」

「親友のあなたにもそう見えるのなら、よかったです」


 やはりレモネは、俺がモカを利用しているのではないか、不当に扱っているのではないかと心配して、うちへやってきたようだ。

 事前の連絡がなかったのも、抜き打ち検査のようなものだったのだろう。

 俺への態度はやはり冷たいが、彼女の声には、安堵の色が滲んでいた。


「モカを悲しませてるようなら、ぶっ潰してやろうと思ってたんだけど。今のところ大丈夫そうね」


 その気になれば本当にそれができそうな人が相手のため、はは、と乾いた笑いが漏れる。

 彼女のお眼鏡に叶わなかった場合、最悪お取り潰しである。


「あなた自身も知ってると思うけど、悪い噂も聞くから心配してたのよ? でもまあ、見たらわかったわ。あなた、モカのこと大好きでしょ」

「はは……。お見通し、ですか」

「あの子を見る時、そういう顔してたもの。モカも『クロード様がね』って、すごく楽しそうに話してたし。……モカのこと、大事にしてくれて、ありがと」


 レモネは、ふい、と俺から顔をそむける。

 そっけないようにも見えるが、彼女の声は優しい。

 モカには、心から想ってくれるいい友人がいるんだな。そう感じられて、自然と口角が上がった。


「な、なによその顔。……まあいいわ。それよりあなた、モカと一緒に社交の場に出る気はない? 二人で並んだら、悪いイメージもそれなりに払拭できると思うわよ」

「二人で、ですか」

「ええ。出世のために強引に結婚……という話そのものは消えないかもしれないけれど、あなたたちの仲がいいことぐらいは伝わるんじゃないかしら? あなたも一応は男爵家の出だし、全く経験がないわけでもないでしょう?」

「ええ、まあ……」


 レモネの言う通り、男爵の息子として晩さん会や舞踏会に参加したことはある。

 だが、回数は少なく、規模も小さかった。

 彼女の言う「社交の場」は、おそらくもっと格式の高いものだろう。

 それこそ、彼女やモカのような、れっきとした貴族が参加するような。

 そんな場に、俺が。正直、想像しづらい。


「歯切れ悪いわね。下級貴族だから不安なの? モカの旦那で、あなたも一応は貴族の息子なんだから、経験を積むにこしたことはないわよ。……それに、あの子はちゃんと笑ってるって、知って欲しいのよ」


 好き勝手言ってる人もいるんだから、とレモネは付け加えた。

 

「私だって、実際に見るまでは、勘違いしてた。モカのためにも、見せつけてやりなさい、クロード・セイジ! わかったら返事!」

「はい!」

「よし!」


 青い瞳をきっと釣り上げて、びしいっとこちらを指さすレモネ嬢。

 彼女の勢いに押されて、仕事中のようないい返事をしてしまった。


「決まりね。不安があればモカに色々と教えてもらうといいわ。騎士だった分、参加回数は少ないけれど、あの子だって淑女としての教育はしっかり受けてるから。じゃ、私はそろそろ帰る。モカのこと、泣かせたら承知しないわよ」


 最後は、詰め寄るようにして睨まれた。

 こうして、レモネ・フォン・グラス伯爵令嬢、突然の襲撃事件は幕を閉じた。

 レモネ嬢に圧倒されて終わった俺は、「ご令嬢にも色んな人がいるんだな……」と、明後日の方向に思考を飛ばすのであった。


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