表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/35

2 世の噂

「家庭菜園の世話をしてたの。クロード様もよく手伝ってくれるのよ」

「そ、そう……。仲、いいのかしら……?」


 レモネの問いに、モカはこくりと頷いて、肯定を返した。

 俺たち夫婦は、仲がいい。

 モカがそう思ってくれていること、外からもそう見えることに、俺、大歓喜である。


「ふうん……? まあいいわ。急にお邪魔してしまって申し訳ないけれど、少しモカと話をさせてくれる?」

「ええ。久々でしょうし、二人でゆっくりお話しください。モカ、残っている作業があったら俺がやっておくから、君は着替えておいで」

「ありがとうございます、クロード様」



 

 レモネは屋敷に通され、モカは着替えに向かう。

 急ぎの作業はないそうだから、片づけだけ済ませたら、俺も家に戻った。

 リビングで談笑する二人の邪魔をしないよう、私室へ。


「噂、か」


 やっぱり噂は本当だったのか、という、レモネの言葉を思い出す。

 どんな意味かは、大方、想像ができた。

 俺たちの結婚をよく思っていない人は多い。


 俺は一代限りの男爵家の長男で、モカは伯爵家の娘。

 騎士団内でのポジションも、俺は小隊長で、モカは守護天使とまで呼ばれる特別な人。

 本当なら、こんな婚姻は成立しないのだ。

 彼女を引退に追い込んだ責任をとる、という形で逃げられないよう囲いこみ、結婚に持ち込んだ。

 そうして伯爵家の後ろ盾を得て、出世しようとしている。

 こんな見方をしている人間は、それなりにいる。

 俺だって、自分のことじゃなかったら、同じように思うだろう。


「退役した女を使ってまで出世したいかねえ」


 と、聞こえるように言われたこともある。

 当事者のモカも、出世の後押しのための結婚だと思っているぐらいだ。

 外から見れば、俺は責任を盾に伯爵家の娘を娶り、出世しようとする男なのである。

 そんなつもりはなかったが、俺たちには、あまりにも差がありすぎる。そう思われても、仕方がないのだ。

 実際、結婚したあとから、昇進の話もきている。

 レモネも、そういった話を知っていて、モカの様子を見に来たのだろう。

 

「どう言われようと……。今更、モカを手放せるはずがない」


 この先も、モカを利用した男として蔑まれ続けるかもしれない。

 今回のように、疑いの目を直に向けられることもあるだろう。

 それでも、もう、モカと離れることなどできない。

 彼女自身が俺との結婚生活を辛く思っていたら、手を放すことを選ぶかもしれない。

 だが、今の彼女は、笑顔だ。

 手をとってくれてありがとう、とまで言ってもらえた。

 誰になんと言われようと、彼女が今の生活を心地よく思っていてくれるのなら――俺は、彼女のそばに居続ける。

 モカが笑っていられるなら、自分がどう言われたってかまわない。


「まあ、本人には、いつか伝わってくれるといいが……」


 あなたのことが好きだから求婚した。あなたを大事にしたい。可愛くて仕方がない。

 急ぎはしないが、いつか、モカ本人に伝わってくれたらと思う。




 レモネの来訪から1時間ほど経過して、「旦那様、レモネ様がお呼びです」とセアナが。

 一階へ向かうと、玄関ホールには、仁王立ちしてきっと俺を睨みつけるレモネの姿。


「クロード・セイジ。ちょっといいかしら?」


 三人で話すのかと思ったが、モカは俺と入れ替わる形で二階へ。

 階段のうえからモカがひらひらと手を振ってくれたものだから、顔がにやけそうになってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ