9 デート続行えいしゃおらあ
巡回中の騎士、エルダーさんにばったり出会ったときには、クロード様は本当に嫌そうな顔をしていた。
エルダーさんは、クロード隊所属。彼の部下で、幼馴染で、親友だ。
オレンジに近い茶色い髪が、彼の明るい雰囲気をより引き立てる。
セイジ家にも何度か来ているし、私も任務でご一緒したことがある。
二人は本当に仲がいいようで。
「これはこれはモカロリーゼ様。今日もお美しい」
「おい。旦那の前でなにしてる」
「美しい人に美しいと言ってなにが悪い。あ、お前は言えないんだったか?」
「貴様……」
エルダーさんは、私に会うたびにこんなことを言って、クロード様を怒らせるのだ。
今日は、私の手をとって、ぎゅっと握るおまけつき。
最初は驚いたけれど、クロード様をからかっているのだとわかってからは、相変わらず仲がいいのねえ、ぐらいに思うようになった。
外では凛々しく、家では柔らかい雰囲気になるクロード様も、このときばかりは怒りをあらわにする。
男性というよりは、「男の子」といった感じだ。
いつも通り二人が口論を始めたので、私はちょっとだけ離れて、そっと見守る。
喧嘩しているように見えるけど、仲がいいからこそのじゃれあいなのだ。
男性同士の友情って面白いわあ……。
「こんなところで油売ってないで仕事に戻れ! 隊長の前で堂々とサボるな!」
クロード様のその言葉を最後にエルダーさんは巡回に戻り、また二人に。
もうそれなりの時間、町を歩いているけれど目的地はまだわからない。
今のところ、途中でちょっとしたドリンクやスイーツを口にしたり、露店のアクセサリーを見たりしているだけだ。
「あの、クロード様。お買い物はよろしいのですか?」
「えっ!? え、あー……。茶葉を……。茶葉を購入しようかと考えていまして。来客もありますし。あなたの方が詳しいのではと思い」
「まあ、そうでしたか。でしたら、色々見てまわってみましょうか。クロード様の好みにも合いそうなものを探しましょう」
「っしゃあ!」
「!?」
ぐっと拳を握っての、謎の声。
こちらが驚いてびくっとすると、クロード様ははっとして、キリっとしたお顔つきに戻った。
「……失礼しました。茶葉選び、よろしくお願いします」
「はい!」
そうして、茶葉を扱う食料品店、雑貨屋、専門店などを中心にまわりはじめる。
途中、お昼の時間がやってきて、どこか入ろうかという話に。
「希望は?」
「でしたら、私……。最近できた、お気に入りのお店に行きたいです!」
旦那様と! 「地元」で! 外食!
地元、お気に入り、行きつけ。そんなものがずっと欲しかった私は、ここぞとばかりにお店を提案。
クロード様は、どういった店なのかも聞かず、「では、そこにしましょう」と頷いてくれた。
そうして向かった先は、ケーキやパスタが評判の店。
店内にはドライフラワーなどが飾られており、椅子やテーブルもあたたかみのある木製で統一されている。
女性に人気だと、ビスカに教えてもらったのだ。彼女ともこの店には来ている。
そのときに食べたケーキの盛り合わせがとても美味しかったのを覚えていて、クロード様に希望を聞かれたとき、ぱっと思い浮かんだのだ。




