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8 旦那様とお買い物(武器等没収状態)

「モカ。次の休日、買い物に付き合って欲しいのですが」

「お買い物、ですか」

「はい」


 一緒に住むようになって、一か月近くが経過していた。

 もう新婚特例状態ではなくなり、クロード様の夜勤や急な出動も始まっている。

 それでもクロード様は空き時間やお休みの日に、一緒に過ごす時間を作ろうとしている。

 私に時間を使わせるのが申し訳なくて、普段はなるべく断るようにしていた。

 でも、今回は。「付き合って欲しい」という言い方だから、私がいたほうがいい理由があるのかもしれない。


「わかりました。次のお休みの日ですね」


 そう思い、頷いた。




 休日はすぐにやってきて、二人で出かける時間に。

 もう出発直前だというのに、私は鏡の前でうーんと悩んでいた。

 足首まで届くふわふわしたワンピースに、白いボレロ。髪は編みこまれている。

 バッグは手に持つタイプの小さなもので、さほど中身が入りそうにない。

 歩くことを想定してか、靴は動きやすさにも配慮したものが選択されている。

 どれもセアナが用意してくれたのだ。


「セアナ。可愛いけど、やっぱりこれじゃ落ち着かないわ。荷物を持ったり、動き回ったりもしにくいし。今からでも着替えて……」

「ダメです。今日は旦那様が一緒なのですから、いざというときは旦那様が守ってくださいます」

「でも」

「ダメなものはダメです。それでいきましょう」

「うう……」


 退役した私は、普段からワンピースを着ていることが多いけれど、今日はいつもと仕様が違う。

 スリットが、ないのである。

 いつも着用しているものは、若干のスリットをいれてあったり、動きを阻害しない程度に広がるようになっていたりする。

 もしものときに備えて、走ったり蹴ったりといった、緊急時の対応がしやすいようにだ。

 上着の下に、ちょっとした防犯グッズを仕込んでいることもある。

 今日は、それらがない。普通の可愛いお洋服だった。

 前線に出ていた期間が長いからか、戦闘に向かない服装だと、なんだかむずむずしてしまう。


 セアナに見送られながら玄関、門と進む。


「セアナったら。目的はお買い物なんだから、動きやすい格好のほうがいいと言ったのですが……」


 彼女にもそう伝えたけれど、ダメです! おめかししましょう! もしものときは旦那様に頼りましょう! と押し切られてしまったのだ。

 一方クロード様は、白いシャツに黒いパンツといった、普段の休日とあまり変わらない服装。

 こちらだけものすごーく気合をいれてきてしまったようで、少し恥ずかしい。

 ふう、と軽く息を吐くと、隣を歩くクロード様からは、こんな言葉が。


「いや、そんな。あなたに荷物を持たせたりはしませんから、大丈夫です。それに、と、とても、お似合いです。可愛らしい」

「まあ。ありがとうございます」


 気遣いであっても、そう言ってもらえるのは嬉しい。

 笑顔を返すと、クロード様は「ん゛っ……」と謎の声を出して私から目をそらした。


「クロード様?」

「いえ、なんでもありません。さあ、行きましょう」

「はい」


 差し伸べられた手をとって、丘をくだり、町へ。

 実は、一緒に暮らすようになってから、二人揃って町に出るのは今回が初めて。

 私だけでもすぐに気が付かれるのに、クロード様も一緒だから、よりわかりやすいようで。


「おっ、クロード! 奥さんとデートか?」

「可愛い嫁さんもらって! 泣かせたら承知しないよ!」


 などなど、あらゆるところから声がかかる。

 そのたび、クロード様はちょっとめんどくさそうに手を挙げたり、わかったわかった、と返したりしている。


「前から思っていましたが……。町の皆さんと仲良しなんですね」

「はは……。俺のこと、まだガキだと思ってるだけですよ」

「ふふ、やっぱり仲良しなんじゃないですか」


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