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7 本命さん? いいえ、奥様の大ファンで、これからはお友達

「忘れもしません。初めてともに戦場を駆けたときの、あの衝撃を。仲間を守る鉄壁の結界術に、傷ついた者を癒す治癒術。どちらもこの国トップクラスのうえに、同時使用も可能だなんて! 私も治癒術師のはしくれだから、わかるんです。同時使用の難しさも、あなたの魔術の腕も。あなたがいるだけで、どれだけ安心できることか!」


 たしかに、私は結界術と治癒術を同時に使用することができたし、魔術の同時使用は高等技術ではあった。

 中程度のものであれば詠唱もいらないため、守ることと癒すことを平行して、素早く行うことができたのだ。

 なにかのスイッチが入ってしまったのか、ビスカはとまらない。


「失礼ながら、最初は、守護天使だなんて大袈裟だと思っていたんです。見た目と家柄で男たちが盛り上がっているだけなんじゃないかって。でも、違いました。あなたの力は本物です! あの優しい笑顔と頼もしい背中は、私の憧れで、目標なんです! ルイヴァリエの守護天使、モカロリーゼ様!」

「しゅ、しゅご」

「守護天使様!」


 ビスカの水色の瞳は、キラキラと輝いている。

 ルイヴァリエ王国の守護天使。そう呼ばれていることは知っていた。

 ただ、その二つ名、すごく、ものすごく恥ずかしいの……。

 真正面からの守護天使呼びに、顔に熱が集まるのを感じる。


「あの、ビスカ。その呼び方は、その呼び方はあ……」


 あまりのことに、両手で顔を覆う。頬がすごく熱い。耳まで赤くなっていそうだ。

 私から、うう……と、呻きにも近い声が漏れた。

 そんな私に、ビスカは。


「……いい」

「へ?」

「可愛い~! 守護天使様が、て、照れて、照れて、照れていらっしゃる! かわいい、可愛い~!」

「ひい……」


 なにをそんなに盛り上がっているの!?

 可愛い可愛いと繰り返すビスカと、それに怯える私。

 そんな図が出来上がって、収拾がつかなくなりそうになった頃。ようやく助けが。


「ビスカ。静かに!」

「はい! 隊長!」


 家では聞くことのない、クロード様の隊長モードの声。

 ビスカもそれに反応してびしっと姿勢を正し、とまった。

 助かりました……。ありがとうございます、クロード様。

 ビスカの前でそう言うわけにもいかないから、心の中でクロード様にお礼を言った。


「ええ、まあ、こういうことでして。俺たちは恋仲などではありません。今回も、ビスカは俺ではなく、あなたに会いたくて来たそうです」


 わざわざ今日じゃなくてもいい物まで持ってきて、とクロード様がつけ加えた。


「では……。クロード様の本命がビスカというわけではなく」

「違います。断じて違います」

「私だって違います! モカロリーゼ様目当てです」

「それで急に押しかけるのもどうなんだ」

「す、すみません……。隊長の忘れ物をみつけて、つい」

「きみなあ……。モカへの憧れは知っていたが、まったく」

「『モカ』呼び……?」

「いちいち殺気立つな」

「ふふっ……」


 二人のやりとりを見ていたら、ほっとして、つい、笑いが漏れてしまった。

 

「モカ?」

「モカロリーゼ様?」

「よかったなあ、と思って。二人が恋仲ではないと聞いて、安心しました」

「! モカ、それはどういう……」

「本命さんがいる方と結婚してしまったとなると、流石に申し訳ありませんから」


 よかった~、と口にすると、クロード様は「なるほど、そういう……」とどこか遠い目をしていた。



「そうだ。ビスカ。あなたはこの町の出身よね?」

「そんなことまで覚えていてくださったなんて……!」

「よかったら、オススメのお店を教えてくれない? 私、飲食店の開拓がしたいの!」

「私などでよければ、いくらでも!」

「ありがとう!」


 


 以降、彼女の非番の日に、ビスカとはよく会うようになった。

 私は本当に憧れの存在だったらしく、なかなか慣れてくれないけれど……。

 一緒に喫茶店に入ることもあり、地元の女友達ができた、という感じでとても嬉しい。

 菜園作りも順調に進んでいる。

 家庭菜園作りに、飲食店探しに、新しいお友達。

 願いが叶った新生活、とても充実しています!


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