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プロローグ
『お前と結婚する男なんていない』
『可愛くないんだよ』
『男より上に立つな』
『お前なんかと結婚する男は可哀想だな』
『こんな、可愛げのない女』
男の子たちに囲まれて、何度も何度もぶつけられた言葉たち。
幼い頃からずっと、これらの言葉は私のどこかに残り続けていた。
自分には価値がないから、人に好かれることはないから。
だから、認められるよう人一倍頑張った。
居場所を作ろうと必死だった。
でも。
「モカ。好きだよ」
黒い瞳が、迷いなく、真っ直ぐにこちらに向けられる。
そう言ってくれる人が現れて。
抱きしめられて、一緒に眠って。
最初は動揺したけれど、いつの間にか、彼の言葉を信じられるようになっていた。
「……私も、あなたのことが大好きです。クロード様」
こんなことが、自分からも言えるようになってしまうぐらいだ。
これは、ゆくゆくは騎士団長まで上り詰める旦那様と、彼に愛されて過去の呪いを解く奥様の物語。