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月【yue】--殺人邸で殺しなさい--   作者: 癒原 冷愛
下弦の月―halfmoonからの予兆 ―
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【序奏】a sleepless night

2017年12月25日~2020年02月08日投稿



 手筈は整えた。あとはアイツらを始末するだけだ。一人残らず殺してやる。この手で――。


 その人物は蘇る憎しみに煩悶していた。


 蒼白い温度が電熱線のような血管を流れて浸透し、身体中はどうしようもない憎悪に腐食されていく。


 これから起こる惨劇に身震いがした。


 今日の夜の色は際限なく不気味だ。漆黒に碧を垂らしたような女の髪の色。何もかもを濃く深く塗り潰してくれる引力をも秘めている。


 白んだ雲がひび割れて、バナナ色の光源が顕あらわになる。ふたたび月がお出ましのようだ。真っ二つに割れた半月。同時に共存する光と影は、くっきりコントラストを作り上げている。決して混ざりあうことのない対なる2色だが、不思議と調和して見えた。


 まさに天使と悪魔だ――。ほんの僅かに残っていた自分の中の良心と、それに準ずる恐怖の破片。迷いを消し去るように、その顔面に薄ら笑いがへばりつく。


 バナナ色のハーフムーンがその人物の素顔を照らした。


 先の被害者どもに対する哀れみなのか、己への蔑みなのか、自身でも解らずにいる。無意識に傷を負った胸をまさぐっていた。




 殺意は夜も眠らない。あいつらを殺すまで――


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