若かりし日のメイドチョー、無双す。
「名のあるメイドと見受けられる」
「先に抜きな」
賞金首の男が、目の前のメイドに言った。
ここはアメリゴの田舎町。
酒場の前の通りに、メイドと賞金首の男は立っている。
かさかさと丸まった草の塊が転がって行った。
賞金首の男の頭にはカウボーイハット。
腰の二丁拳銃に、両手を添える。
45口径6連発リボルバー・コルト・シングル・アクション・アーミー。
通称”ピースメーカー”である。
チャリッ
賞金首の男のブーツのかかとにつけられた、拍車が音を立てた。
ビュウウウウ
パウアウア~~
パウア~~
どこからともなく、風の音とBGM。
チャキリ
メイドは、腰の愛刀”菊一文字”の鯉口を切った。
腰の後ろの大きなリボンが刀の鞘に当たり、微かにゆれた。
パウアウア~~
パウア~~
シュララララ
メイドは、ゆっくりと刀を抜き、エプロンドレスを纏った左肩の前に愛刀を構える。
生真面目そうな顔が、唇をきゅっとひきしめた。
”次元一刀流、蜻蛉の構え”
「キィエエエエイッ」
メイドは、裂帛の気合と共に、一瞬で相手の懐に飛び込み、愛刀”菊一文字”を振り下ろす。
メイドのイギリス式のロングスカートが翻った。
メイドの白いエプロンが、白い残像を空に残す。
「ば、馬鹿な」
ガハア
賞金首の男は、銃を抜くひまもなく倒れた。
メイドは、片手に愛刀を下げ、もう片手でスカートの端をつまみ”残身”する。
メイドの頭につけられた、ホワイトプリムが風に揺れた。
後に”命道(メイド―)家”のメイドチョーとして、名をはせる侍女の修業時代の話である。
装甲お嬢様シリーズ、第八弾。