テフテフライ
私はフージン。テフテフライよ。
30羽近い集団で生活していて色が目立つせいか、どこへ行っても捕食対象になってしまう私達。
その点、色とりどりのユラリンが群生している場所だと目立たなくて気が休まるのよね。
そうしたら、この町のスッパイダラは変わってた。
なんでも、住処を失う怖さを知っていて、救われる希望も知っている、とか。
『僕らも食べないと死んでしまうから』
と、少し吸われるだけで済んでしまう。
今では、他から守ってくれる騎士様よ。
ちなみに私のパートナーは紺。
羽根に汚れが付くと色がくすんで美しくなくなってしまうのだけど、紺は毛のフサフサした手で優しく羽根を繕ってくれるんだもの。
ウキウキと紺のところへ来てみると、今日は誰かいるみたい。私の紺にちょっかい出すのは、どこのどいつだい?
って、オチョウじゃないの!
こいつはね、どこに行っても私のものばかり取ろうとする、女狐なのよ。
紺もそんな女に引っかかって〜!
『紺、私の方が美味しいでしょう?』
『いいえ、私に決まっているわ。フージンよりも7つも若いんだから』
なんですって〜!取っ組み合いのケンカをしていたら、なんだか紺の機嫌がいい。
『こんなにいっぱい粉が舞ってる〜』
『あ、あら私の鱗粉は美しい水色ですものね。』
嬉しそうな紺の声に私も嬉しくなるわ。
『違っていてよ。私の黄色がこうしてキラキラと輝いているから喜んでいるのよ』
わ・た・し・の・お・か・げ
とか、区切って言うの腹立つわ!
『リーナがいろんな色で水着っていう服を作りたいって言ってたから、喜ぶだろうな〜』
糸に鱗粉をからめ取りながら、紺が弾んだ声を出す。
『リーナ?他にも女がいるの?』
私が聞くと『紺は私のものだわ!』とオチョウがいきまいた。次いで『リーナという女を潰してやらなくちゃ!』と言った瞬間だった。
黒いモヤモヤがオチョウを覆うと、オチョウが動かなくなった。
「誰が誰を潰すって?」
軽くドスの効いた声を出して現れたのは、見た目は美しいけれど禍々しい気配の人間、だった。
イヤ、人間か?
人間じゃないかも。人間はあんなに恐ろしくない。あれは噂に聞く伝説の魔神なのではないか。
魔神はオチョウをワシッと掴むと行ってしまった。
私はオチョウが死んでしまうと思った瞬間、後を追いかけはじめた。
あんなのでもいないとさみしいじゃないの。
『激オコのカイにはリーナしか勝てないよ』
後ろから紺のアドバイスが聞こえてくる。
なるほど。あの魔神はカイという名前で、あの魔神に勝てる恐ろしい女魔神がリーナね!
気配を追っていくと、途中でリーナと呼ばれている人物がいた。
『あなたがリーナ?』
けれど全然強そうじゃない。この子ではないわね。
「どうかしたの?」
『私の友達が魔神カイに連れていかれてしまったの。リーナという人を探して、魔神を倒してもらわないと殺されちゃうのよ』
必死でそれだけ言うと、私は気配を追ってまた飛び出した。少女もついてくる。
魔神は恐ろしいのに、この子大丈夫かしら。
あ、この扉の向こうにいるわね。
私が開いている窓でもないかと探そうとしたら、リーナが扉を開けて入った。
「カイ、私のお友達を解放してちょうだい」
「ダメだ。こいつは危険だ」
リーナを潰すって言ってたからな、って。
「私のお洋服を作るお手伝いをしてくれている子よ」
言うとオチョウの口に何かを塗りつけて扉の外にそっと出してくれた。バタンと扉が閉まる。
扉の向こうの黒い気配が一瞬で収まった。
リーナ、なんて強い子なの!
途端オチョウが元気になった。オチョウの口についている何か、床についたのを舐めてみたら驚く美味しさじゃないの!
以後、率先して鱗粉をリーナに届けに行くようになった私達。けれど恩を返すためであって、美味しい回復水を飲むためではないからね!
そこのところ4649、ヨロシク!