決着のとき
途中に三人称、残酷描写あります
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二週間後。
少し涼しい風が吹く季節。とうとうその日がやってきた。
「来なきゃいいって思っていた」
「皆藤首領殿」
「今からでも遅くない。やめようよ」
「皆藤首領殿」
「だって、ソウが死ぬなんて!!」
「皆藤首領殿!!!!」
ここは公衆の面前です。
そう言うと、ぷいとそっぽをむく櫻。
だいぶ皆藤家の首領、『学園』の理事長らしくなってきた櫻だったが、まだまだ俺が絡むと子供だ。
俺は今から『暗炎氷殿』にのぞむ。
これは首領、次期首領がその座を一身上の都合で辞退するときにだけ行われる試験のようなもの。
読んで字のごとく、暗闇、炎の中もしくは氷の檻でできた建物から出てくるという過酷なもの。
三百年以上の歴史がある武芸百家で、何人かこの『暗炎氷殿』を行ってきたが、成功したのはたったの一人だけしかない。
たいてい発狂するか、焼け死ぬか、押しつぶされて死ぬかのどれかだ。
だから『武芸百家、それも宗家の嫡子として生まれたのならば、首領からは逃げられない』とはそういうことなのだ。
目の前に用意されているのは木造平屋建て。だから氷の建物ということはないだろう。とするならば、暗闇か炎か。
まあ薄を本拠としている人間に氷というのもおかしいか。
簡単すぎるからな。
「では、行ってくる」
「ご無事で」
準備ができたようだ。少し無理やりだったが、櫻に笑ってみせ、心の中で呟く。
ああ、きっとな。
ここからそこまでは近いが、眠らされるために迎えの籠に乗る。そのまま建物に入り揺さぶられる。
そして音もなく俺を揺さぶった人は出ていき、たった一人寝ぼけた状態で俺は状況を確認する。
少し焦げ臭いな。
『炎』か。
そう感じた瞬間、建物内に一気に火が回っていた。
* * * * * * *
「大丈夫でしょうか」
「大丈夫、私は信じる。ソウはきっと、絶対に戻ってくる」
総花が連れていかれた後、茜は本当に自分の判断は間違っていなかったのか、不安で櫻にそう聞いてしまった。
けれど、さっきまで総花を引きとめていたはずの櫻は大丈夫だと笑う。
「櫻ちゃん」
「だって《湖》の持ち主だよ?」
「……そうだったわね」
櫻が言ったのは一件、関係なさそうに見える話。
でも、それにはちゃんとした確証があった。
なぜなら。
総花まで持ち手が現れなかった《湖》の双刀の先代の持ち手は伍赤家初代首領。
彼こそが武芸百家における三百年間の中で、ただ一人だけこの『暗炎氷殿』から生還した人物なのだから。
「だから、絶対に戻ってくる」
燃えさかる建物をしっかりと見つめながらも、そう力強く櫻は断言した。
* * * * * * *
思っ、たより、も火の、ま、わ、りが、早いな……――――
想像以、上にあ、たまも……からだ、も……動かせ、ない、な…………
……――で、も、これは、俺の先祖、殿も乗り越える、こ、と、ができ、た……んだ……――だから……お、れ、も乗り越えられるはず……!!
ここでた、おれたら……どんなに気持ちがいいんだろうなぁ……? でも、そしたら、アイツは泣くな……うん、ぜったいになく……――――だから、だからこそ、ここで、たお、れるわけには、いか、な、いんだ……――――――
か、ぜ?
ということは、もしかして……――あれ、は、に、げるべ、き、道な、のか……?
それ、ともフェ、イク、なの……か……――
……――まあ、いいっかぁ……ダメ、だったと、きは、ダメ、なん、だ、から……――――
ああ、よかった。
ようやく、外に……出れ、た、な……――――
あと少しだ。そうすれば……アイツ、に、あ、える!!
くっそ……なんかいたいし、あっつかったなぁ…………
みずって、こんなに、きもち……いいんだ、なぁ――――
作者も火災はトラウマですが、苦手克服と称して書きましたm(__)m




