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小さいときの刷り込みでなかなか離れてくれない幼馴染から離れようとしたら、余計に迫られてます!?  作者: 鶯埜 餡
意思と代償と想いの夢

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終焉

しょっぱなに微グロ描写ありますので、お気をつけてください。

 っていっても、結局は無様な姿をさらすだけだった。

 櫻は目標地点を決めていたのか、気づいたときにはその姿はなく、俺は木々に引っかかりながら急な斜面を落ちていった。


「総花君!!」

「……っ茜さん、櫻は……――?」


 どうやら茜さんが近くにいたようで、駆け寄る音が聞こえてくる。


「大丈夫よっ。それよりも、あなたの方が心配」

「心配ありがとうございます。でも、俺も大丈夫です」

「そう……なら、いいわね」


 どうやらここら辺に落ちていたようで、アイツの無事も確認できた。ゆっくりと起きあがって土を払う。だけれど茜さんの服を見て、俺はすごくヤな予感がした。


「――って、茜さん、どう、したんですか、その赤いの……」

「突然現れた猪と戦って返り血を浴びて……って、信じられるわけないよね」


 おどけたように笑う彼女になるほどと理解してしまった。

 多分、そこらへんにいた(・・)んだろう。


「まさか……」

「そうよ。真っ赤な嘘よ」


 俺の推測に肯定する茜さん。背後には一人の男が横たわっていた。

 このご時世、本当に殺しあうなんていうことがないから、少し現実としてとらえたくないと脳が拒否するが、現実(リアル)なものだ。


「なかなか見事な戦いぶりでしたよ」


 俺と茜さんの間に降りた気まずい雰囲気を破ったのは、ひょうきんな声の持ち主。


「紫鞍さん……!」

「アイツの兄として引導を渡してやってくれて感謝します」


 なるほど、『アイツの兄』か。

 この喋り方は三苺苺、三苺野苺兄妹の喋り方と似ているな。


「どういうこと?」


 俺もそうだけれど、茜さんも目の前の男の行動に疑問を持ったようだ。

 なんで敵対しているはずの俺たちに拍手なんて送っているのか、そして感謝なんていう言葉を使っているのか。


「アイツはやりすぎたのさ」

「やりすぎ? だというのならば、あなたのだって……!!」

「ええ、そうですよ。僕だってやりすぎです」


 茜さんの激昂にそうですよと軽くいなす紫鞍さん。

 振りあげたこぶしを柔らかく包む姿は、二人はなにか関係していたのか?


「けれど、一松宗家を巻きこんだのは悪手だったし、一松ここまで皆藤家を煽ったのは奴だ。少なくとも櫻はそのつもりはなかった」


 ため息をつきながら言う姿は、どこか後悔をにじませていたのだが、それは本当なのだろうか。


「事を荒立てる天災(・・)であり、稀代の『死霊使い』郷獏(ごうばく)劉基。それがアイツの今の世での本名といえば皆藤茜さん、あなたならわかりますよね?」

「……なるほどね。そして、あなたはその兄にして彼のストッパーでもある、郷獏雄基」


 どうやら三苺苺、三苺野苺そして、一松紫鞍を名乗る前から彼らのことを茜さんは知っていたようだ。


「ご名答。それでどうします? アイツが死んだ以上、僕はもう表舞台に立つこともないし、一松を名乗ることもない」


 彼らの本当の姿を知らない俺は、ここで出る幕はない。茜さんに任せておけば十分な落としどころをつけてくれるだろう。


「この子を置いていくのね」

「正直に薄情と言ってくださって結構ですよ」

「ふふ。お義姉(ねえ)さまとお兄様に免じて言わないでおこうと思ったのに……――そう、じゃあ言わせてもらうわ」


 茜さんと紫鞍さんの間には昔、なにかがあったのだろう。


「薄情もの」


 遠慮ない言葉だけれど、紫鞍さんは黙って受けいれる。


「とりあえず任務完了(・・・・)ということで僕は先に櫻を連れて帰ります」

「じゃあ、よろしくね」

「かしこまりました」


 俺はどうして櫻を紫鞍さんが連れて帰ることに、茜さんが反対しなかったんだろうと思ったけれど、多分、皆藤家に戻ったらすべてがわかる気がしたから、ここではなにも言わなかった。

 紫鞍さんが去っていった後、俺はゆっくりと立ちあがる。


「終わったわね」

「はい……――ところで、茜さん」

「なにかしら」


 そういえばと思いだしたことを茜さんに告げようとすると、どうやら彼女も気づいていたようだ。


「こないだ約束した件ですが、俺が日時を指定しても?」

「いいわよ」


 やっぱり俺が思った通りで、驚かなかったようだ。眉一つ動かさなかった。


「では、流氷さんに報告をしたあとすぐにでも、夕ご飯を食べながら」

「わかったわ」


 日の入りまでまだ時間はあったが、俺と茜さんは一松本邸に戻らずに船を泊めてある桟橋まで戻ることにした。

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