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小さいときの刷り込みでなかなか離れてくれない幼馴染から離れようとしたら、余計に迫られてます!?  作者: 鶯埜 餡
律する利する凛々しい

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新旧交代、攻守交替

「仔細は省くが、あいつには大きな借りがある。だからと思ってやったのが、間違いだったな。それは認める」

「全くです」


 ここにいる人の中で伍赤家が五位会議に加わった経緯を知っているのは少ない。

 実を言うと、伍赤家の次期首領の俺でさえ知らない。『ちょっといろいろもめ事(・・・・・・・)があって、その『詫び』ということで五位会議の第三位として加わった』というのはおじから聞いたことはあるものの、それがどんなもめ事なのかまったく知らない。

 当時を知っている小萩さんと師節家首領、理事長はそれの責任を理事長にあると断言しているのだが、俺にとってはさっぱりだ。


『で、皆藤邸への盗聴は禁忌指定されていることの一つ。処罰はもうお決まりで』


 テレビ画面の向こう側で腕を組みながらそう尋ねる師節首領。



《皆藤家は化け物》

 皆藤家の成人一人で一家を半消滅(・・・)、《十鬼》ならば一人で一家を消滅させることはできる力があるからこそ、神秘でいなければならない。



 そのごく当たり前に触れるものはいなかったはずで、触れてはならないということが当たり前なのだ。

 だからこそ親父がしでかしたことは重罪だ。未成年の俺でもそれは理解できる。


「どうしようかとちと(・・)迷っているのだ。もっとも現在の規定における大逆罪では問えないから死罪はしない。だが首領、それも五位会議の首領という立場のあるものが行ったということを考えると、それ相応のものにしなければほかに示しがつかん」


 理事長は悩んでいるようだった。それは幼馴染だからという理由なのだろうか。それとも別の理由があるのだろうか。

 俺はなんとも言えずに頬の内側をギュッとかんでしまった。血の味が口の中に広がる。クソまずい味にしかめっ面を作ったとき、櫻に手をぎゅっと握られた。師節先輩も小萩さんも俺のことををじっと見つめている。


「こういったのはどうでしょう」

「なんだ?」


 沈黙を破ったのは意外にも小萩さんだった。

 口数が少ないとかというわけではなくて、紫条家として(・・・・・・)提案をするのが珍しいと思ったのだ。あそこは他人(ひと)の出した提案に反発するのが家業に近い。


「伍赤家首領の座を彼の息子(・・・・)に早々に明け渡していただくこと、五位会議からの追放、十年間の皆藤家への無償奉仕。この三点を守れるようであるのならば、紫条家はなにも言いません」


 ううむ。

 意外と寛容だな。


 お家取りつぶしを出してこなかっただけでもかなりましだ。聞いた話だが、記憶が間違ってなければ紫条が中心となって卯建家のお家取りつぶしにかかわっていた気がするが。まあ、もっとも本家であったあそこをつぶしたいと思っていたからと言われればそれまでな気もする。


 しかし、櫻はそれだとお嫌らしい。手を再びぎゅっと握った。


『師節もほぼそれで同意する。五位会議になった当初は利口であったものの、それを今になって恩を仇で返す真似など言語道断だ』


 そうだよなぁ。

 取りたてて功績もなにもなかったはずの伍赤家(うち)が師節と紫条を抜かして第三位に君臨するなんて、この二つの家からすればとんでもないことだからなぁ。


「一松殿はどう思うか」


 理事長ではなく、小萩さんが櫻に尋ねる。

 幼馴染の家のことだからといって、遠慮はするな。多分、この発言でお前の評価は変わると思う。


 一松内部でも、五位会議でも。


「私には……よくわかりません。いいえ、正確にいえばたしかに近年登用されたのは皆藤首領殿の恩情によるものだと私も聞いておりますので、それを仇で返す真似はいかがなものかと思います……――ですが、もう少し様子を見た方がよろしいのではないのでしょうか」

「どういうことかな、一松殿? あなたは伍赤首領の肩を持たれるということかな?」


 櫻の長台詞に身を乗りだす小萩さん。

 続ける言葉によってはしばらく第二位を保っている一松にも牙を向けるぞ。しかし、動じることなく淡々と説明する櫻。


「い、いいえ。私は盗聴を行ったという部分についてはいけないと思います。私が言いたいのは、五位会議の追放の必要性はないという部分です。それ以外の部分については、ええと、本当は皆藤家への無償奉仕の部分も必要ないと思いますけれど、とにかく五位会議の追放だけは反対です」

『それはお嬢さんが彼の幼馴染だからそう言っているのかな』


 櫻の説明に身をひっこめた小萩さんだが、今度は画面の向こう側、師節家首領が的確な指摘を入れる。だが、櫻は大の大人にも負けないつもりのようだ。


「いいえ、違います。たったの十八年で、そしてたったの一代で成果をあげれる人って、ごくわずかなんじゃないのかなぁって思ったまでで」

『なるほど』

「たしかにそうかもしれないね」


 最後の方は少し焦りながら話した櫻だけれど、なんとか納得をしてもらえたようだ。


「わかった。では、それでよかろう。現在、伍赤家別邸で軟禁状態の伍赤柚太には蟄居、首領の座については息子の総花に譲ることを命ずる。また、新首領には今後七年の皆藤家への無償奉仕を義務付ける」


 どうやらそれで手打ちしてくれるようだ。命拾いをしたようだ。しかし、いいな? そう言いながら理事長は俺を睨む。

 怖い怖い。

 しかし、それだけで怯むにはまだ、早い。


「……――――わかりました」


 謹んで拝命いたします。

 俺はそう言って、丁寧に頭を下げる。

 さて、やることが多くなるな。

この章でほとんどの伏線を回収します。

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