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カスレアみかん!  作者: あもら
ウェルカム! ラーグタウン編
8/79

この二人、ミカンが介入する余地なし!

 孤児院一階の大部屋、食卓机の椅子に腰をかけて、俺は心地よい風が流れ込む四角の青空を眺めている。


 金色の髪は水気が抜けきっていないのか、束になって肌をなでる。首からは肌触りがよく、水を吸い込みそうなタオルをかけている。服装は外出用のものに着替えた。初日もそうだが、これはリブレが予め用意した物らしい。シャツと長ズボンという男が着ても問題なさそうな見た目であり、俺は安心している。

 昨日は孤児院に帰ってすぐにベッドで寝てしまったため、今日は起きてすぐにシャワーを浴びた。この世界の水回りが元の世界と同じと思えるほどである事は幸運だ。

 この姿で自分が裸になるのは初めてだったが、できるだけ見ないように気を付けたし、湯気が濃くてあまり気にならなかった。また、ルジェリアが順番待ちをしていたため、すぐに終わらせた。




「街に出てカード乞食になるぞ!」


 黒紫の髪の少年、カストルは外に漏れそうなほどの大声で、髪を湿らせた俺とルジェリアを呼んだ。ルジェリアは大部屋に入ってきたところだ。浴室の湯気に当てられて、肌はわずかに熱さが感じられる。

 俺の対面では、ボイルが食卓机で液体の入った瓶を並べていた。


「私は魔術ギルドで講義を受けるため、遠慮します」

「それじゃあミカン、一緒に出掛けようぜ!」


 ルジェリアは早々にカストルの申し出を断った。

 俺はボイルの方へ振り向き、答えを待つ。外に出る場合はボイルが付き添う事になるため、彼の都合を聞く必要がある。


「最初に『魔術ギルドの隣の冒険者ギルド』へ行くなら、俺は構わない」


 かくして、俺とカストルとボイルの3人は、カード交換+αという名目で、街に出る事になった。

 カストルの右手には折り畳まれた紙が握られている。この街の地図だそうだ。ボイルは腰の鞄だけでなく、ガラスの音が聞こえる木箱を背負っている。俺は手のひらの上の銀色の硬貨を見つめる。リブレが「昼は3人で外食でもどうかな」と渡してきたものだ。

 そして、気がつけば俺たちの目の前には冒険者ギルドが建っていた。




「おはよう、ボイル。傷薬はもう出来上がったの?」

「ああ。これはすぐに作れる物だからな」


 建物の中で俺たちを出迎えたのは、ボイルと同じぐらいの歳の女性だった。

 ヘアバンドが巻かれた頭からは艶のある黒髪が腰まで伸びている。服装は整っていて、礼儀正しい人物だという印象を受ける。首から下の線は直線的で、男性かと見間違うかもしれない。

 ボイルは冒険者ギルドに傷薬を納品するようだ。背中の木箱を下ろし、女性がその中身を確認する。そして、女性は紙を取り出し何かを記入すると、それをボイルに手渡した。これが依頼達成の小切手なのだろう。


「もう1つ渡す物がある。これが疲労回復に効く薬だ」

「あら、気を利かせてごめんなさいね」

「これ位は問題無いさ。お前はキアヌが無理しすぎないか見ていてくれ」

「キアヌは、最近はちゃんと夜に寝ていますから大丈夫ですよ」


 どうやらボイルと彼女、そしてキアヌという人物は知り合いのようだ。話を一通り終えると、彼女は俺とカストルの方へ歩み寄る。


「初めまして。俺はミカン。昨日から孤児院に住む事になりました」

「初めましてミカンちゃん。私はエリシャ。ここ『魔術ギルドの隣の冒険者ギルド』で書類整理をしているわ」


 俺の会釈に対して、彼女は笑顔を返す。そして、隣でカストルの期待が膨らんでいくような感覚を覚える。


「エリシャ! ミカンはドリクロを始めたんだ。それで今日はカードを交換してもらいに、街を回る所だ」

「そうなの? 私は水と光の属性なら用意できますよ」

「はい! よろしくお願いします」


 早速、俺はエリシャとカードを交換した。彼女は俺のカードを見て少し驚いた様子だったが、その後は笑顔で受け取ってくれた。俺は彼女から青枠のカードを受け取る。



『静止の指揮棒』

 水属性アイテム(武器)、3コスト3/2

 自分が攻撃した相手または敵ユニットを『拘束』する。



「来ていたのか、ボイル」

「ああ。前より顔色が良さそうだな」


 部屋の奥の扉から一人の青年が会話に割り込んできた。

 目線に迫るほどに深くかぶられたニット帽から、暗い色の髪がちらりとのぞかせる。戦いがあるわけでも無いのに、金属板のようなベストを身に付けている。

 何より鋼鉄の塊のような鉄板を腰から提げているのか目に留まる。それは強度を上げるためなのか規則的な凹凸があり、下半身を半分囲うように曲線を描いている。


「初めまして。俺はミカンと言います」

「ボイル、顔色が良かったら面倒事を押し付ける気か?」

「いや、これはリブレから俺に任された事だ。キアヌは気にしなくていい」

「そう言われて、俺が本当に気にしないと思っているのか? お前は」

「……そうだった。すまないな」


 キアヌは俺ではなく、ボイルと話を始めてしまった。その話にエリシャが加わり、俺とカストルは蚊帳の外状態だ。

 キアヌは気難しそうな雰囲気があり、自分から話しかける事をためらわせてしまう。すると、カストルは俺の手を引き、外の広場を指さした。


 どうやら、広場に誰かがいるようだ。


街に出る回です。

すぐに出番がある人、しばらく出番がない人、両方とも出てきます。

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