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カスレアみかん!  作者: あもら
ウェルカム! ラーグタウン編
1/79

朝おんしたら最初に何をするかって?

初投稿です。

力不足な点が多々あると思われますが、よろしくお願いします。

 いったい、ここはどこなのだろうか。


 目の前は一面真っ黒な暗闇であり、それ以外の物は一切見えない。体は常に宙を浮いているような感覚であり、動かす事ができない。耳を澄ましても、音という概念が存在しないような静けさだ。

 あまりの非現実さに、夢なのかと思ってもみた。しかし、それにしてはあまりにも自分の意識が鮮明であった。

 そのように状況を確認すると、突然自分がいる空間全体が揺れたような感覚に襲われた。目が回るような感覚と吐き気を覚えるが、それを抑える方法を今の自分は持ち合わせていない。時間だけが、この感覚を抑える事ができるようだった。


 この状況、どうすればいいのだろうか。


 しばらくの時間が経ち吐き気が収まると、何をするかという事を考える余裕が出てきた。すると、目の前に白く小さな光が見え始めた。その光はこの暗闇の中に一つだけ存在する、小さな出口のようだ。

 その光に手を伸ばそうとするが、自分では体を動かす事ができない。しかし、自分の体は暗闇の中を進んでいき、光に近づいているような気がする。目の前の光は段々と大きくなっていく。

 やがて光は自分の視界を覆い、自分の体を覆い、暗闇を消し去っていき、そして……。


 ごちっ


「!!??」


 突然の痛覚に、『俺』の体は宙に跳ねた。

 もう、宙に浮く感覚も体を動かせない事もない。さっきまでの出来事の記憶はおぼろげであり、夢から覚めたような気分だ。

 今、俺を包み込むのは布団の中のような安らぎだ。今、俺は手足といった体を動かす事ができる。これなら寝返りもできそうだ。そして今、俺の目の前には木目のわかる木の板が並べられた……、天井がある。しかし、俺の記憶の見慣れた天井と、目の前の天井は全く一致しない。


 ここはどこだ?


 俺は目覚める前、暗闇の中を漂う夢よりも前の記憶をたどり、この場所の手掛かりを探る。確か、長期休暇で両親の実家に帰っていたはずだ。それから両親と買い物に行って、墓参りに行って、それから……。

 その先の出来事はどうしても思い出せない。無理に思い出そうとすると頭がずきずきと痛みだす。頭痛が辛くなって、俺は右手で額を押さえる。押さえた所は更に痛み出す。それは頭痛というよりは頭を怪我しているような痛みだ。つい手を放すと、目の前に見慣れないものが映った。

 それは、自分のものとは思えないほどに白くか細い右手だった。一瞬、俺の思考は麻痺する。


 俺は一体どうなっている!?


 今の自分を確かめようと、俺は寝ている姿勢から上半身を上げる。視線が想像よりも低い位置にあるように思える。左手を目の前にかざすと、それは右手と対になる白い手だった。

 両手で頭の横側に触れて、手の位置を徐々に下げていく。手に触れていた髪は肩に当たるほどの長さだ。一束つまみ視界に入れると、それは窓から差し込む陽の光を反射して、金色に輝いている。

 手のひらを胸にあててみる。今着ている服は1枚の肌着で、見た目では胸のふくらみは分からない。しかし、服越しに手で触れると、男ではありえない柔らかさが感じられた。

 両手は更に下の方に進んでいく。胸から胴にかけての曲線は滑らかだ。腹は少し膨れているような気がするが、それは脂肪がついているというより内臓が詰まっているような感じだ。

 そして、両手は脚の根元の方に辿り着く。そこで、今までの信じられない光景を決定づける事に気づいてしまった。


 女だ。この体は少女のものだ。


 俺の体がこうなったのか、俺が少女の体に憑りついているのかは分からない。ただ、今の俺がこの金髪の少女だという事が分かる。試しに声を出そうとする。この体で初めて声を出す事になる。話す言葉を何にするか決める時間は、それほど必要とはしなかった。


「……は、はろー、わーるど」


 その声は声変わり前の少年のものより高く、透き通っている。本当に少女になったのだと、俺の心に刻みつけるものであった。あとは、自分の顔を確認しておきたい。


 俺は辺りを見回し、鏡がないか探してみる。ここは木造の家の中の、6畳ぐらいの広さの個室のようだ。俺が寝ている所はベッドのようで、すぐ横には開かれた窓から雲一つない青空が見える。反対側には丸いドアノブを持つ扉は一つあり、それは完全に閉じきっている。天井には照明が無く、全て木目が印象的な木の板で埋められていた。

 室内にはベッドの他に、椅子と引きだし付きの机が一組ある。机の上にはスタンドライトのような物があるが、電源コードが見えない。更に上には壁掛けの時計が時を刻んでいる。俺が知っている物と同じ形で、もうすぐ9時である事が分かる。


 そして、机の隣には縦長の壁掛け鏡があった。探していたものだ。

 俺はベッドから脚を下ろして立ち上がる。長い間眠っていたのか、初めに少しふらついた。そのまま鏡の前へと足を進める。しかし、途中で足に何かがぶつかってしまう。拾ってみると、それはボールのようだった。大きさと硬さは野球ボールそのものだ。


 ボールを掴んだまま、鏡の前に辿り着いた。

 鏡に映る金髪の少女は幼く見える。ランドセルの卒業はまだ早そうだ。上の方の髪は癖があるらしく、一束ほどあさっての方向を向いている。瞳は吸い込まれそうな黒で、顔を鏡に近づけると、瞳は緑がかっている事が分かる。髪を寄せて耳を確認すると、少女のものではあるが普通の人間の形をしていた。額は一部が赤くはれている。手に持っていたボールと見比べると、原因はこれのようだ。


 ……どこからどう見ても金髪の美少女だ。


 目覚める前の自分の面影が微塵も感じられない。それは寧ろ安堵する事のようにも思えた。人前に出る事を躊躇うような姿でなくてよかったと。

 顔を確認した後は、肌着の内側が気になり始める。これは現状の確認というよりは、好奇心に近いものだ。

 俺は服の首元を引っ張り、中を確認する。服が無ければ、胸の膨らみが見た目でも分かるようだ。次に、ズボンの口を前に引っ張ってみる。


「うわぁ……」


 僅かながらフリルの飾りがついた下着が視界に入り、思わずため息をついてしまう。それは肌に密着していて、少女の秘密を守っていた。

 男ではありえない光景を目の当たりにして、急に恥ずかしくなり顔を上げる。目の前には鏡があり、少女の姿を映している。そして、端には開かれた扉の取っ手が映されていた。


 俺は驚いて扉の方に顔を向ける。部屋の前には青髪の青年が立っていた。今の俺が見上げるほどの背丈で、頭の羽根飾りが特徴的だ。しかし青年の見た目は、今はどうでもいい。


 見られた! しかも、初対面の知らない人に!


 羞恥心と恐怖心が混ざり合い、俺は体が震えて声も出す事ができなくなる。脚に力が入らず、床に腰を下ろしてしまう。そんな光景を目にしながら、青年は部屋の中へと入る。

 扉を閉めた後で、彼は俺に向けて静かに微笑んだ。


「お気になさらず、続けて」

「続けませんよ!」


 俺は思わず青年に向けて叫んでしまった。その時には、体の震えは既に止まっていた。


予約掲載で、分は指定できませんでした。残念です。

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