3 ボマー
ハングリーベアは俺の匂いを辿り、とうとう大岩2つ挟んだ所まで迫ってきた。
距離にして20mくらいか?もし見つかれば5秒とかからずに捕まるだろう。
くっそー、前世の俺ならあんなやつ0.0003秒でみじん切りにできたのに!
エイリューンたんに会うまで死ぬわけにはいかない。
しかし、最後の手がまだある。
さっき見つけたニトロストーンだ。
今いる岩場や鉱山なんかでよく見かける鉱石で、誤って近くで火を起こしてしまえば大爆発、年に何十人もの犠牲者を出していた。
今ハングリーベアから見えない位置でニトロストーンをかき集めてみた。
拳大のサイズが20個ほどだ。運が良ければこれで倒せる。倒せなくとも洞穴に逃げるまでの時間稼ぎくらいにはなるはずだ。
多分俺の目の前で爆発したら木っ端みじんだ。間違っても口から火が出ないように気を付けよう。
――――さて、コソコソととなんとか罠ができた。といってもニトロストーンを一か所に集めただけ の、罠と呼ぶのもおこがましい代物だ。
ハングリーベアの位置から俺を追いかけようとすれば、必ず目の前の一本のルートを通るはずだ。ニトロストーンはそこに配置した。
よし、腹を決めるか。
俺は大岩から颯爽と飛び出す。
「ガア!ガアアアウ!!(来い!熊公!!)」
ハングリーベアはすぐにこちらを向くと、よだれをダラダラと垂らす。
あー、怖い、「やっとみつけたあ!」って顔だよあれ、間違いねえよ。
「ガフッガフッ!!」
ハングリーベアが勢いよく走りだす。
よし、予定通り罠のあるルートを走ってきたな。あと5m・・・3m・・1m
今だ!!!
「ガウ!!《火の息》!!」
最大火力じゃあああ!!
ハングリーベアがニトロストーンに足をかけた瞬間、俺は火の息をぶちまける。
良し!タイミング完璧!!
ッッドオオオオオオン!!!
うおーーー!!すげえ爆発!予想以上だ!
いてっ!こっちまで岩の破片が飛んできやがった。
爆発をもろに受けたハングリーベアは遥か上空に吹き飛ばされ、クレーターになった地面にドチャっと落ちた。
腕や足が衝撃で吹き飛んだようだ。ダルマみたいになっている。
ピクリとも動いてないけど、あれは多分死んでない。だって“あれ”がまだ来てないし。
鑑定さん!
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ハングリーベアLv.20
体力 3/150
魔力 0
攻撃力 150
防御力 100
素早さ 100
称号 【悪食】
スキル 《噛み砕く》《地ならし》
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やっぱりな、ここで油断して近づくとガブッといかれて終わりってわけだ。
魔物との戦いは最後まで油断してはいけない。
しかしさすがに手足が吹き飛んでいる以上、動くことができないだろう。
離れて様子を伺うと、グググ・・・と弱弱しくこちらに顔を向ける。
なんて目してやがる。「俺がこんな雑魚にやられるなんて」って怒りに満ちた目だ。
雑魚だと思って侮るからこういう目に合うんだ。
悪いけど、俺の夢への糧になってもらうぞ。
手元に一つだけ残しておいたニトロストーンをハングリーベアの顔の前に転がす。
「ガウ《火の息》」
ドパァン!!
ハングリーベアの顔が吹き飛び、全身から力が抜ける。
よし、確実に死んだな。これで“あれ”が来るはず。
『ハングリーベアを倒しました。350の経験値を獲得、レベル13に上がりました。称号【ボマー】を獲得しました。』
お、きたきた。頭に流れ込む世界の・・意・・思・・。
今の鈴の音のような声、エイリューンたんか?
いや間違いない、あんな美しい声がこの世に二人といるはずがない!!
レベルが上がったときや称号を得た時に、頭に直接聞こえる声を”世界の意思”とこの世界では呼んでいる。
前世でも確かに女性の声だったが、今聞こえたものとは違った。
もしかして、”世界の意思”を告げているのは”神”を関する者なのか?
人間には人間の神。ドラゴンにはドラゴンの神、つまり女神竜であるエイリューンたんってことか!
うおお!レベルアップするたびにエイリューンたんの声が聞こえるなんて!なんてご褒美だ。ますますやる気が出てきたぞ。
よし、とりあえずステータスを確認しよう。
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リュウLv.13
種族 ドラゴンキッズ(変異種)
体力 120/120
魔力 100/100
攻撃力 150
防御力 150
素早さ 150
称号 【竜を愛する者】【ボマー】
スキル 《火の息》《鑑定》
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おお!レベル20のハングリーベアよりステータスがほとんど高いぞ!
そうだよな、腐ってもドラゴン、熊公ごときとは潜在能力が違うのだ。
ん?体力もレベルに合わせて回復してるぞ。
これは今までにない現象だな。人間の時も回復はしなかったし、戦った魔物やドラゴンも途中で元気になるなんてことはなかった。
これも変異種の影響かな?
まあいいや、多いに越したことはないしね。
称号の【ボマー】ってのはなんだろう・
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【ボマー】:爆弾魔に贈られる称号。爆発攻撃に上昇補正あり。
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誰が爆弾魔じゃ!!
でも爆発攻撃に補正がかかるのはいいね。
今回みたいにいきなり格上と出会う、なんてことがこれからもあるかもしれない。
少しだけでもニトロストーンを拾っておこう。
片手に4つほどの小さなニトロストーンを握りしめる。
ああ、それにしても逃げ回ったらお腹が減った・・・オオリスもハングリーベアに食べられちゃったし。あんまりおいしくなさそうだけど、ハングリーベアを食べるか。
今度はちゃんと洞穴の傍で料理しよう。
レベルアップで筋力も上がっているからか、3mほどあるハングリーベアを引きずって歩くのは、そこまで苦にならなかった。
途中、遭遇した場所に寄って鍋を回収する。
これがなくちゃ始まらないよね。
よし、魔物に会わずに洞穴の前までついたぜ。まずは解体しないとな。
む、硬いな、俺の爪がなかなか入らない。毛皮が相当分厚いな。
何度かガリガリし、ようやく腹に爪が入る。
一度入ってからは結構簡単に切れるな。
ピー―――っと腹を裂いてくと、内臓が飛び出る。中でも大きいのは胃袋だ。
こいつは俺の前にも何か食ってたのか?
試しに胃袋を切り開いてみると、そこからでてきたのは
う、うげえ!人間の死体!!
ドロドロになった人間の死体だった。
あー気持ち悪い。死体は前世で何度も見てきたけど、やっぱり慣れるもんじゃないな。
こいつは多分、散乱してた装備の持ち主の冒険者だろう。
依頼でこの森に入ってきたものの、実力不足でハングリーベアに食われたってわけか。
あんたの装備はいらないけど、鍋は使わせてもらうよ。
ん?見覚えのある袋があるな。
死体のすぐそばにある袋を取り出す。
胃液でねちゃねちゃして気持ち悪い。
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マジックバッグ(中):異空間に物を保存できる。容量は10m四方ほど。
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やっぱりマジックバッグだ!いやいい拾い物をした。
これで食料の持ち運びと保存ができるようになるぞ。ニトロストーンも後で回収しに行こう。
とりあえず気持ち悪いから近くの枝にかけて干しておこう。
さて解体に戻りますか。
内臓は臭みが強くて食べられそうにないので除外、とりあえず毛皮を剥いで肉を手に入れよう。
◇
それから一時間ほどかけ、お腹ペコペコになりながらもなんとか捌き終えた。
サイズがサイズなので食べきれない分はマジックバッグに入れて保存だ。
キノコや香草も拾っていないので、今回はただの串焼き。
《火の息》でじっくりと焼いていく。
むん、意外といけるな・・・でもやっぱりオオリスにくらべるとなあ。
なんて思いつつむしゃむしゃ食べていると、アッという間に無くなってしまった。
んーまだまだ足りないな。もう一回焼くか。
この体は本当によく食べられるようだ。
それから食べて焼いてを繰り返して、結局全部の半分ほど平らげてしまった。たぶん50kg以上は食べてるな。我ながらすごい胃だ。
はーご馳走様。レベルも一気に上がったし、今日はもう休んで、明日から獲物をさがしつつレベルアップに励もう。
乾いたマジックバッグとハングリーベアの毛皮をもって洞穴に入る。
そして生まれ変わって初めての睡眠に入る。
あー、濃い一日だった。




