1 こんにちはリュウちゃん
進化条件のレベルを少し改訂しました。
目を覚ますと、そこは暗黒だった。
「ガウガウ(ここはいったい・・・?)」
なんだ?思うように言葉が発せないぞ。それに記憶がイマイチ曖昧だ。
とにかく暗すぎて何が何だか・・・
手を伸ばすと、硬い何かに当たる。
ん?なんだこれ。
少し力を込めると、それはピキピキと音をたてて弾けたように割れる。
「ガウ!」
んー、1週間の便秘が解放されたような気分だ。実に清々しい。
どうやらここは洞窟・・・というよりは洞穴の中みたいだ。わずかに木漏れ日が入ってくるのでさっきほど真っ暗じゃない。
うまく動けないな、なんでだろ。
思わず自分の手を見る。
80歳になった皺だらけの人間の手でもなければ、若々しい20歳くらいの手でもない。
「ガガウウウ!!(ドラゴンの手!!)」
びっしりと鱗でおおわれ、鋭い爪の生えている手、間違いなくドラゴンだ。
よく見ればさっき突き破ったのも卵の殻じゃないか!
だんだんと思い出してきたぞ・・・
たしか死んだと思ったら空の上にいて、そこには女神竜エイリューン様がいて・・・それで俺は神竜に・・・。
そうだ!神竜!おれは彼女と番になるために神竜にならなくちゃいけないんだ!
つまりその第一歩としてドラゴンに生まれ変われたわけだ!
人間の時は念じると“あるスキル”のおかげで頭に自分の基礎情報が流れてきたけど・・・
むむむ、と念じてみる。
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リュウLv.1
種族 ドラゴンキッズ(変異種)
体力 10/10
魔力 10/10
攻撃力 3
防御力 3
素早さ 3
称号 【竜を愛する者】
スキル 《火の息》《鑑定》
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ぎゃーーーー!本当にドラゴンになれた!!よっしゃあああ!
それにしてもよっわいなあ!
前世で冒険者やってた俺だったらステータス軒並み50000くらいはあったのに。
まあ生まれたばっかりだししょうがないか。
(変異種)っていうのは人間の記憶があるからかな、きっとそうだろう。
55年間続けた祈りが、エイリューン様、いや、エイリューンたんに引き合わせてくれただけでなく、エイリューンたんの夫になるチャンスをくれたのだろう。ああ感謝感謝
《火の息》はドラゴンブレスのスキルだろうけど、《鑑定》は俺が人間のころに持っていた便利スキルだ。おそらく引き継いだのだろう。
《鑑定》は様々な動植物や道具の情報を読み取ることができ、もちろん今みたいに自分の強さも確認できる。
よし、これからガンガン鍛えて進化して、いつの日か神竜になるぞ!
「ガウガウウ(とりあえず洞穴から出ようか)」
やっとこ体が思うように動かせるようになったので、洞穴から出てみる。
ああ、足を踏みしめるたびに伝わるこの感じ、これがドラゴンの体かあ・・
洞穴を出ると、そこは森だった。
うっそうと茂っているという感じじゃなくて、まばらに木が生えていて明るい森だ。よかった、いきなり魔物の巣窟とかに生まれて即捕食じゃなくて。
それにしても改めて見てもこの体は最高だな。
明るくなって露わになった自分の体を観察する。
やや黒みがかった赤色の美しい鱗にしっかりとした手足、背中には一応小さい翼が生えてるみたいだけど飛べそうにないなこれ。
確かに身体的特徴はドラゴンキッズだけど、この赤黒い鱗は見たことないな。これも変異種の影響か?
とりあえず二足歩行が一番楽だ。
四足歩行もできなくはないが、何となく違和感を感じる。人間の時の名残かな。
それにしても神竜って、どうやったらなれるんだ?
まさか一生ドラゴンキッズなんてことは・・・・
もう一回自分の種族に関して鑑定してみると、頭の中に情報が入ってくる。
【種族】ドラゴンキッズ(変異種):ドラゴンの幼体。通常とは異なる性質を持っている。
【進化先】
・ヤングレッドドラゴン(変異種)
・ヤンググリーンドラゴン(変異種)
・リトルワイバーン
・プチバーサクドラゴン
おお!こんな情報は人間の時には出てこなかったぞ!
魔物はやっぱり進化するんだなあ。
さらに詳しく見てみよう。
【ヤングレッドドラゴン(変異種)】レッドドラゴンの若個体。高熱のブレスを吐ける。性格は温厚。(進化条件Lv.20)
【ヤンググリーンドラゴン(変異種)】グリーンドラゴンの若個体。植物を操る力を持つ。やや気性が荒い(進化条件:Lv.20)
【リトルワイバーン】飛行能力に長けたドラゴン。ただし肉体は脆弱。(進化条件:Lv.20)
【プチバーサクドラゴン】強靭な肉体を持つが、理性のない凶暴なドラゴン。(進化条件:Lv.20+称号【同族殺し】の所持)
進化条件なんてのもあるんだな。
うーむ、まずプチバーサクドラゴンはないよね。理性なくなるとか意味ないし。そもそも称号【同族殺し】ってことはドラゴンを殺さなきゃならないってことだろ?ドラゴンを愛する俺には無理だな。
リトルワイバーンもなあ・・・人間時代にオスワイバーンをなんどか倒したけど確かに弱かったな。飛行能力は魅力的だけどこれはナシかなあ。
そうするとヤングレッドドラゴンかヤンググリーンドラゴンだな。
どっちが“神竜”になるかなんてわからないぞ・・・。
待て、エイリューンたんを思い出すんだ。あの神々しく美しい姿と慈愛に満ちた瞳を。
そうだ、神を名乗るドラゴンになるには広い心が必要だ!エイリューンたんのように、己の領域に人間が来ても歓迎するような広い心が!
ということは、気性が荒いなんて言語道断!つまり選ぶべきは温厚な性格のヤングレッドドラゴンだ!
よし、方針は決まった。ヤングレッドドラゴン(変異種)への進化を目指してLv15まで頑張ろう。
その前にお腹が減ったな。
よし、森で食料を探しつつ、魔物も見つけて自分の強さを確認しようか。