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説明と選択

投稿が遅れてしまい申し訳ありません。

風邪を引いしまいダウンしている中、納得いくものが書けず何度も書き直してしまいました。

では召喚された主人公への説明回です。

 召喚の間に広がった沈黙を破ったのは勇者召喚の開始を告げた神官だった。


「ようこそ、おいで下さいました勇者様。わたくし、イヴェリア教の神官長を務めさせていただいております『セルメス』と申します。姫様はずっと心待ちにしていた勇者様と会えて緊張しておられるようです。」


 そう言って、地面に座ったままの心哉にセルメスは手を差し出した。

 差し出された手を見つめたまま何か考えているようで動こうとしない心哉。

 

 「勇者様、どうか致しましたか?今は召喚した際、一時的に翻訳魔法が付与されているのでこちらの言葉が伝わっているはずですが……」


 再度、手を差し出すセルメスの手を取り、心哉は立ち上がった。


 「ああ……すみません。私は『神薙心哉かんなぎしんや』と言います。言葉は理解できているのですが、その『勇者様』というのは?」

 

 困惑した表情の心哉にセルメスはこの世界における勇者について説明をした。


 「勇者というのは本来、この世界を滅ぼそうとした『魔王』に立ち向かうために女神イヴェリア様が遣わされた異世界からの召喚者のことを指します。……今は先代の勇者様が魔王と和解したため、そのお役目の意味はありません。」


 「……セルメスさんの仰っていることは理解しましたが、勇者としてのお役目がないのであれば、私は何のために勇者として召喚されたのでしょうか?」


 「先代の勇者『ヤマト様』は魔王と和解後、世界の真の敵であった『邪神』の存在を暴き、魔王と共闘してそれを討ち倒しました。その後、こちらの世界に留まったヤマト様は、この国『ヤマト王国』を建国し、あらゆる他種族と友好を結んだヤマト王国は瞬く間に発展を遂げ、現在は様々な種族で形成された巨大国家となっております。今年で建国から五百年。その節目として異世界から再び勇者様をお招きし、王位を継承していただくことを目的として今回、カンナギ様を召喚させていただきました」


 自分が召喚された理由を説明された心哉は慌てた様子で返した。

 

 「突然そんなことを言われても困ります。王位を継承って、私はただの学生ですよ!」

 

 前世で『邪神』として滅ぼそうとしていた世界に『勇者』として召喚され、あまつさえ自分を討ち倒した勇者が建国した国の王位を継承してほしいと言われるなど欠片も想像していなかった。


 心哉の言葉にセルメスは首を横に振り答えた。


 「召喚される勇者様には勇者足る資質や実力を持った者が選ばれます。それは強大な魔力を持つ者であったり、比類なき戦闘技術を持つ者、はたまた神謀鬼策の知恵者など、様々ではありますが、今まで召喚された来た歴代の勇者様はその誰もが素晴らしい力を持っていたと伝わっております。勇者として召喚される……それだけで普通の者とは言えないのです」


 きっぱりと断言したセルメスに面食らう心哉だったが内心では納得もしていた。

 前世で自分を倒した先代の勇者ヤマトは確かに勇者足る存在だった。その戦闘技術、魔力、魔王すら仲間にする柔軟な思考、どれを取っても普通とは程遠かった。

 

 ―――あいつは本当に人族だったのか?

 

 そんな疑問が心哉の脳内を過ったが今はこの状況をどうにかするのが最優先だった。

 

「セルメスさんにお聞きしたいのですが、それを断って元の世界に返してもらうことは……」


 今度はセルメスが困惑した表情になり、少し考える仕草をして返した。


 「……どちらも難しいですね。もし断れたとしても勇者様を送還するために必要な送還条件が重なるのは十年後、魔法陣を発動するための魔力も足りません。今回の召喚は女神様の助力なしに先代勇者のヤマト様が亡くなる直前まで神具に貯めていた膨大な魔力があったからこそ可能でしたので、一般の魔法使いが貯めた場合に何百年掛かることか……」


 「ち、ちなみにその女神様の助力があれば送還は十年後でも可能なのですか?」


 表情を引き攣らせている心哉にセルメスは頷いた。


 「はい、女神イヴェリア様の助力があればそれは可能でしょう。しかしながら今回の召喚は世界に危機という理由で召喚したわけではないので、助力を得るにしてもそれなりの贄や奉仕が必要になると思います」


 ―――あのクソ女神に奉仕しなければならないとか屈辱だ。しかし俺の『力』を行使したとしても世界を超えて元の世界に帰るのは『力』の相性の問題で難しいだろう。ここは我慢して奉仕するしかないのか……


 それを聞いて諦めた表情に変わった心哉だったが数瞬後、決意した表情で言った。


 「王位継承は断らせていただきます。十年後に送還が可能になるようにどうにか女神様に助力をお願いできないでしょうか……」


 驚いた表情を浮かべたセルメスだったがすぐに元の柔和な表情に戻った。


 「女神様に助力を乞うことは神殿に任せて頂ければ可能です。ですが、本当によろしいのですか?この国は周辺国家の中でも一番の繁栄を誇り、その王位を継承できるとなれば一生の運を使い果たしても足りるものではありませんよ」


 「はい、お願いします」


 力強く頷いた心哉にこれ以上、説得しても無駄だと考えたのかセルメスは少し残念そうに返した。


 「カンナギ様のお話は分かりました。しかし私の一存だけでは難しい案件ですので、国王陛下とも相談させていただき「待ってください!」……」


 話しが一応のまとまりをしかけたところで待ったを掛けた者がいた。

 

 ◆◆◆◆◆


 「そんなの嫌ですっ!せっかくカンナギ様と一緒になれると思いましたのに……どうか帰らないでください」


 その美しい碧眼に涙を湛えながらもセルメスとの話を中断させたのはシルフィーナだった。

 今まで召喚時のファーストコンタクトの失敗から羞恥でおとなしくしていた彼女だったが、心哉が元に世界に帰る前提で話が進められていることを理解して、いても立ってもいられなくなり待ったを掛けたのだ。


 シルフィーナにとっては心哉は初恋の相手だ。その相手が自分との結婚を断り十年後とはいえ元の世界に帰る―――それは未だ精神が成熟しきっていない少女に耐えられることではなかった。

 

 「私に悪いところがあれば直します。今は色々小さいですが、まだまだ成長するはず……です」


 「王女殿下、落ち着いてください。まだ、カンナギ様が完全に帰るとは決まっていません。十年後までに気が変わる可能性もあります。今は以前とは違い、勇者様の『力』が必要な状況でもないのですから無理強いしてはいけません」

 

 セルメスがシルフィーナを落ち着かせようとするが彼女の耳にはそんな言葉は入ってこなかった。


 ―――心哉は困っていた。

 

 最初は彼女に何を言われているか分からなかったが、よくよく思い出してみれば、告白されていたし、緊張から言葉を噛んで顔を赤くした彼女は可愛かった。

 正直に言えば、涙目で下から覗く込むようにして「帰らないでください」と言われたときは一瞬頷きそうになってしまう程の可愛さだった。


 ―――地球でこの娘が告白しきてくれれば即OKの返事をしたのに……


 改めて心哉はセルメスに宥められているシルフィーナを見た。


 背はクラスの女子の平均より若干低いくらい、少々幼さが残る小顔に碧眼、手櫛で梳いたら気持ちよさそうな、腰までのばされたさらさらの銀髪、胸は小さいがそれも含めて彼女の可愛さを引き立てるのに一役買っている。


 ―――うん、とんでもない美少女だ。勇者の子孫とか関係ないな。そもそも勇者のことは恨んでないけど。そんな娘が俺のことを必死に引き留めてくれるのは男冥利に尽きるけど、いきなり結婚で王様、元の世界に帰れないとなると……


 内心では血涙を流すほどの葛藤があったが、そんなことはおくびにも出さず心哉はまだ落ち着かない様子のシルフィーナに言った。


 「シルフィーナ王女殿下。貴方の気持ちはとても嬉しいのですが、私は元の世界に帰りたい。突然いなくなった私のことを家族や友人は心配していることでしょう。私はどんなに時間が掛かってもまた、家族や友人に会いたいのです」


 心哉の真剣な言葉にシルフィーナは落ち着きを取り戻したが、その瞳からは涙が流れていた。


 「カンナギ様の心情を理解せず、我儘を言って申し訳ありません」


 涙を流しながらも真剣な表情でそんな言葉を返したシルフィーナに心哉は心が痛んだ。


 ―――こんな良い娘を振るなんて最悪な気分だ


 「カンナギ様に元の世界での生活があることは少し考えれば分かることでしたのに、憧れだった勇者様と会えることに舞い上がってしまって自分のことばかり……恥ずかしいです」


 ―――こんな時はどうすれば良いんだ?彼女なんかいたことないから全く分からん……そうだ!たしか、前に読んだライトノベルでこんなシーンがあったはず!


 罪悪感で一杯だった心哉は制服のポケットからハンカチを取り出し、シルフィーナの瞳から溢れる涙を拭った。


 「突然召喚されたことには驚きましたが、それはシルフィーナ王女殿下のせいではありません。貴方のような可愛らしい方が涙を流すのは世界の損失です。―――だから笑って下さい。貴方には笑顔が似合います。……それに帰る方法はあるのですから十年でも私は諦めずに待ちます」


 そう言い心哉はシルフィーナに笑顔を向けた。


 ―――時が止まった気がした


 シルフィーナは心哉の言葉と笑顔に引き込まれ、心臓は初めて心哉と目を合わせた時のように早鐘を打ち始める。見る見るうちに顔には熱が集まり考えが纏まらなくなった。


 まだ悲しい気持ちはある。けれど心哉の笑顔を見て、心哉の言葉に「応えたい」と思った。


 「カンナギ様は優し過ぎます」


 シルフィーナはそう言って花の咲くような笑顔を浮かべた。

 

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