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プロローグ 樹人、大地に立つ

 私が人であった頃、私はいわゆるサラリーマンであった。

 朝早く出勤し、仕事をこなし、同期と飲んでから帰る。プライベートの時間は車で遠出するぐらいしかする事のない平凡な人間だった。


 ある休日の日、私は日の出が見たいと思い早朝に車で山に向かった。まだ空は暗く、山道に電灯も無いため車のライトだけが道を照らしていた。山道を登り、あと少しで頂上というところで私は見通しの悪い曲がり道で対向車と衝突し、ガードレールを突き破り山から転げ落ちた。


 私の人間としての記憶はここまで。気がついたら私は木になっていた。最初こそ動揺したが木になって数日は経つと慣れてしまった。腹も減らない、喉もそれほど乾かない、寝ようと思えばいつでも寝れる。

 しかし、ここで問題が出来た。


(‥‥暇だ‥‥)


 暇すぎなのだ。暇を潰そうにも動けないし、話すこともできない。何も出来ないという事がこれほど苦痛だとは思わなかった。唯一の楽しみは見たことのない動物を見かけた時だけ。美しい毛並みの動物を見かけるだけで嬉しい気持ちになる。

 だが、私の心は人間のままだ。動物たちをみるたびに動けない自分の身体に腹が立ってしまう。日が過ぎて行くたびに動きたいという願いが強くなっていった。

 変化が起きたのはいつだったか。不自然な部分に枝が左右に伸びていた。なんて事のない変化だと思うだろう。しかしその左右の枝は動くのだ。動かせるのだ。それを実感した時は涙が出るぐらい嬉しかった。2、3日は腕を動かすだけで楽しかった。


(このまま足も生えてくれないかな‥‥)


 そう思った次の日、私は日本の太短い足で地面に立っていた。いつ地面から抜けたかは分からない。だが私は確かに足を動かす事が出来ていた。また嬉しさの余り涙が止まらなかった。


(‥‥涙?)


 自分の身体に水が伝っていく。今まで涙が出るとは言ったが、それは比喩表現だ。本当に涙を流した訳ではない。 それに今までの私は幹の部分を中心に360度回転するように見たい方向を見ていたが、今の私は人間の時のように目と思われる部位がある。

 自分の容姿に興味が湧き、水場がないか森の中を彷徨う。歩くこと数分、水の落ちる音が聞こえ、その場所に向かうと滝壺を見つけた。


早速水に映る自分の姿を見る。私の容姿は手足が短く、胴体はサッカーボールのように丸く、その丸い体の割れ目に2つのクリクリの目がある。胴体の上には盆栽のような小さな木が生えていた。


(まるでマスコットだな)


そう思いながら私は新しい自分の身体に満足するのであった。


このまま声も出せたら言うこと無しだ。一度試しに声を出そうとした。すると、


「ミーーーーー!!」


とても可愛らしい声が出た。

解せぬ(´・ω・`)


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