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2*戦争

ついに、ですね。

ある日のことだった。


先月行われた調査で、フォースの存在が確定されたことで、そろそろ地上に人間が出るべきなのではないかという意見がちらほらと上がり始めていた。


行きたい人間がいるのか、という意見があり、志望制にすると意外にも多くの人が手を挙げた。

このまま地下で野垂れ死にしたくない、という思いが皆あるようだ。


そして、生き残る確率が高く、そして家族のいない者が選ばれ、隊を組んだ。人数は6人。一番分けやすいからだった。

人間は夜目が利かないため、早朝に出発した。夜目が利かないといっても、この地下帝国で暮らしているため、昔の人間よりは夜目が利くはずだが。


夜暗くなる前に戻る、短時間の調査のはずだった。しかし、彼らは予想より早く、昼過ぎには戻ってきたのだ。


「地上では、戦争が起こっている」


人間と機械の戦いではなかった。機械と機械の戦いだった。


最近作られたフォースは、どうやらサードの管理下に置かれていないようだった。戦闘に特化し、殺戮兵器と化しているフォースは、サードのみならずセカンドにも攻撃を仕掛けているらしい。


セカンド上位種とサードは、フォースを死滅させるために戦っているとのこと。彼らは、地上に出てセカンドらと話をするチャンスだと思ったらしい。

しかし、フォースの戦闘力を目の当たりにし、その考えは改められた。


地上に出て見つかれば、一瞬で殺される。


自我をあまり持たされていないらしく、会話の余地もない。少数ではあるが、セカンド上位種とサードを相手に戦えている時点で力は察せる。


「一番人間に近いのはセカンドだ。上位種は自ら意思を持った種だしな。調査機で今のセカンドの根城を突き止め、そこに直接交渉しに行こう。ここにある資源で、武器に使えて、且つフォースの知らない物質もあるはずだ。取引をしよう」


そう結論付けたのは、調査隊をまとめるリーダー、ゼイルだった。


「ただ、どうやってセカンドのところに行くかだな」

「いっそ来てもらうか?」

「ばっ、それに着いてきてフォースがここまで来たらどうすんだよ!」


地下帝国の入り口は、普通に歩いていては分からないようになっているものの、セカンドの知能は高い。きっと知られている。

ただフォースは知らない。


サードが、フォースを作るとき自我を持たせなかったのは不幸中の幸いだ。

手っ取り早く自我を持たせるには、まず記憶を埋め込むのが良い。しかしそれをしていないということは、セカンドの記憶や意思は継いでいないということ。

つまりフォースは、私たちの存在や居所を知らないということだ。


「セカンドに協力してフォースを潰してもらえば、地上で共存もできるかもな!」

「サードはセカンドの管理下だし」


共存、という道がまだ残っていたことに驚きだ。だが、やはり地上で暮らすことには変えられない。


「……明日、調査機でセカンドの根城を探索する」


ゼイルの言葉に、皆賛同した。



翌日、調査機を出した。

いつもより、少なく。見つかる確率を下げるためだ。探索には時間がかかるかもしれないが、フォースに見つかることは避けたかった。


夕方頃に、ようやくセカンドの根城が発見された。少し遠いが、見知った場所だと言う人間が調査隊にいたため、土地勘には問題ないだろう。


安堵して調査機を帰還させようと操作していたときだった。

集会場で中継され映っていた映像がぶちりと消えたのだ。


調査機を遠隔操作していた調査隊のうちの1人が、言った。


「……フォースに撃ち落とされた」


慌てて残った調査機の回収に急ぐが、ゼイルは叫んで止めた。


「やめろ!ここへの入り口がバレる。調査機の回収は今度でいい。そのまま停止させろ」


カメラはそのままに、飛行を止めて地面に着地させた。操作を切り、皆映像を食い入るように見た。


「……これが、フォースか」


誰かがそう呟いた。

画面に写された黒い物体は、サードの騎士のような見た目とは全く違い、人間とはかけ離れていた。

殺戮兵器、とは納得だ。


その時、フォースはピピッと赤い光でこちらを見つめた。そしてどこか別の方向を見てから、何かを言った。


何語か分からず、集会場の中で分かる人はいなかった。直後、調査機は破壊された。


「今の、言葉だよな」

「知能は人間並にはあるってことか」

「翻訳機も反応しなかったけど」


彼らが作り出した言語か、もしくはセカンドやサードが使っているからと真似て覚えた言語か。どちらにしても、意味は分からなかった。


「ゼイル?」


眉間に皺を寄せ、地面を睨み付けているゼイルに、調査隊の人が話しかける。


「……今、フォースが見た方向にはここがある」


……まさか。


慌てて調査隊の人が別の調査機のカメラを画面に写し出す。

フォースは、移動していた。4体ほどが並んで向かっている方向には、廃れた教会が見える。あの教会の中に、地下帝国への入り口がある。


「調査機と繋がる微弱な電波の方向を、視覚で判断できるのか……?」

「奴ら本体が持つ電磁波が強すぎて判断できないはずじゃ」


一瞬、静寂が地下帝国を包んだ。

しかし、すぐに皆事態を把握し始めた。


「フォースが、侵攻してくる!」

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