表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ワンライ投稿作品

冷酷な生存原理

作者: yokosa

第101回フリーワンライ

お題:

サヨナラと手作り

冷たい方程式


フリーワンライ企画概要

http://privatter.net/p/271257

#深夜の真剣文字書き60分一本勝負

 部屋には四人の男が詰めていた。正方形の卓を囲んで、椅子についてる。重苦しい雰囲気に反して室内は明るく、また卓の鮮やかな緑色が男達を下側から照らす。

 Aはゆっくりと、目を伏せながら見回した。誰も彼も表情を押し殺している。

 まだ終わっていない、終わらせてはいけない――そんな雰囲気が漂っていた。

「……仕方ないか」

 やがて、ふっと吐息をつくと、Cが動いた。決心したのだろう、手を崩す。

 Cの言葉に弾かれたように、全員が顔を上げた。諦観の過ぎるB。他の三人は失望とも、希望ともつかない顔だった。

 そんな中、口を開いたのはBだった。

「仕方ない……お前の分まで俺が生き残ってやる」

「おい」

 狼狽えたようにDが割って入った。

「なんでないてんだよ……」

「だってよ……だって、もう他に方法はないだろ」

 Bの何かを振り切るような口調に、それ以上言えずDも押し黙った。

 それでも、まだA、B、C、Dは互いを計るように順繰りにこれまでのやりとりを繰り返した。同じようでいて、違うやりとり。

 違ったのはAだけだった。密かに彼のプランを練り続けていた。最適解を求めて。癖で、指が忙しなく動く。

 焦ってはならない。だが急がなければ間に合わない。

 バレてもいけない。彼の救いの手。この手しか生き残る方法はない。

 しかし無情にも時は過ぎた。最後の瞬間が近付いてくる。

 すでに我が身を諦めたC以外は、ことここに至っても決めきれずに焦っていた。Aも例外ではなかった。表面上、平静を装ってはいるが内心穏やかなはずもなかった。

 そしてついに――沈黙を貫いていたDが決定的な一打を打った。

「終わりだ。さよなら、D」

 潔く手を切ったDに、Bは手を開いて告げた。その別れの言葉は喜悦が混じっている。安堵と優越感で胸をなで下ろしているのだろう。

(そうは行くか!)

 すかさずAが動いた。

 まだ終わってない。いや、これで終わりにする――


「ロン! 頭ハネだ。

 ピンフ、タンヤオ、イーペイコウ、三色同順。頭がドラで七翻、跳満だ。

 俺の勝ちで文句はないな? ほら、精算だ精算」

 三人の懐事情を知っていてなお、Aは冷酷に告げた。



『冷酷な生存原理』了

「麻雀かよ!」っていうツッコミがいただければ大成功。

 いやあ、つい最近某ニコニコする動画で、なんでか第一話無料配信のアカギがランキングに上がってて、久しぶりに見たばっかりでして。お題の「手作り」を見た時に、「手作りの○○」ではなく「手牌で手作り」と連想してしまったんですよこんちこれまた。

「冷たい方程式」は第36回のお題になっていて、拙作『たった一つのやり方』以来二回目ですな。似たような話になる恐れはあったものの、お題自体でミスリード(シリアスなSF)出来ないかな、と思って再択してみました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ