冷酷な生存原理
第101回フリーワンライ
お題:
サヨナラと手作り
冷たい方程式
フリーワンライ企画概要
http://privatter.net/p/271257
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
部屋には四人の男が詰めていた。正方形の卓を囲んで、椅子についてる。重苦しい雰囲気に反して室内は明るく、また卓の鮮やかな緑色が男達を下側から照らす。
Aはゆっくりと、目を伏せながら見回した。誰も彼も表情を押し殺している。
まだ終わっていない、終わらせてはいけない――そんな雰囲気が漂っていた。
「……仕方ないか」
やがて、ふっと吐息をつくと、Cが動いた。決心したのだろう、手を崩す。
Cの言葉に弾かれたように、全員が顔を上げた。諦観の過ぎるB。他の三人は失望とも、希望ともつかない顔だった。
そんな中、口を開いたのはBだった。
「仕方ない……お前の分まで俺が生き残ってやる」
「おい」
狼狽えたようにDが割って入った。
「なんでないてんだよ……」
「だってよ……だって、もう他に方法はないだろ」
Bの何かを振り切るような口調に、それ以上言えずDも押し黙った。
それでも、まだA、B、C、Dは互いを計るように順繰りにこれまでのやりとりを繰り返した。同じようでいて、違うやりとり。
違ったのはAだけだった。密かに彼のプランを練り続けていた。最適解を求めて。癖で、指が忙しなく動く。
焦ってはならない。だが急がなければ間に合わない。
バレてもいけない。彼の救いの手。この手しか生き残る方法はない。
しかし無情にも時は過ぎた。最後の瞬間が近付いてくる。
すでに我が身を諦めたC以外は、ことここに至っても決めきれずに焦っていた。Aも例外ではなかった。表面上、平静を装ってはいるが内心穏やかなはずもなかった。
そしてついに――沈黙を貫いていたDが決定的な一打を打った。
「終わりだ。さよなら、D」
潔く手を切ったDに、Bは手を開いて告げた。その別れの言葉は喜悦が混じっている。安堵と優越感で胸をなで下ろしているのだろう。
(そうは行くか!)
すかさずAが動いた。
まだ終わってない。いや、これで終わりにする――
「ロン! 頭ハネだ。
ピンフ、タンヤオ、イーペイコウ、三色同順。頭がドラで七翻、跳満だ。
俺の勝ちで文句はないな? ほら、精算だ精算」
三人の懐事情を知っていてなお、Aは冷酷に告げた。
『冷酷な生存原理』了
「麻雀かよ!」っていうツッコミがいただければ大成功。
いやあ、つい最近某ニコニコする動画で、なんでか第一話無料配信のアカギがランキングに上がってて、久しぶりに見たばっかりでして。お題の「手作り」を見た時に、「手作りの○○」ではなく「手牌で手作り」と連想してしまったんですよこんちこれまた。
「冷たい方程式」は第36回のお題になっていて、拙作『たった一つのやり方』以来二回目ですな。似たような話になる恐れはあったものの、お題自体でミスリード(シリアスなSF)出来ないかな、と思って再択してみました。