当店はオッサン専用です。
他の作品を書く手が止まってしまったので、昔のサイトの作品を直してアップさせていただきました。
ご都合主義です。
ねこじゃららは心からオッサンを愛しています。
シリーズ化して、様々なオッサンとのやり取りが書ければ・・・・。
と思っておりますが、まずは連載の方、頑張ります。
息抜きなんです。すみません。
日本のとあるド田舎。
私はそこで《ドラッグストア》をのんびりと経営しつつ、店舗の二階に住んでいる。
25歳。女。独身。東根美紀。通称みっちゃん。
そろそろ結婚したい年頃だというのに、周りにいるのはお爺ちゃんやお婆ちゃん。
もしくは、農家の働き者の嫁さんを貰っている幸せ一家ばかり。
ガキも多い。
お菓子やらアイスを購入していくお得意様である。
しかも時々、
【花見つけたからオバサンにやるよ!】
なんて可愛いような憎たらしい様な事を言う奴もいる。
が、
セミの抜け殻やら蛇の抜け殻を持ってくるガキもいるので要注意。
ああ、我が家の近くには幸せ一家が大量発生、羨ましい。
私にもイイ男が現れないかなぁ・・・・。
出来れば、明るく元気なオッサン希望。
もしくは渋めなオジサマ希望。
体型は中肉中背、もしくは若干の太めを希望。
ビールっ腹も可愛いので可。
坊主やスキンヘッドも可愛くて好きだが、禿げそうなのを気にしてるのも愛しいので可。
毎日きちんと顔を洗うなら髭も可。
勿論、すね毛や腕毛が濃いのも男らしいので可。胸毛も可。
だが、ギャンブルと浮気は許さん。
全力で処す。
同年代の野郎には苦い思い出しかねぇぞ、この野郎。
そんな私は理想の王子様、もとい、理想のオジサマが現れるのを待ちつつ
今日も農作業に精を出す皆さまを相手に、まったりとした日々を過ごしております。
さて、そんな私の経営しているお店ですが、一言に《ドラッグストア》と言っても、そこはド田舎。
普通のドラッグストアとは違います。
まず、品揃え。
普通のドラッグストアで扱っている薬は勿論、シャンプーやリンス、ボディーソープに石鹸、日焼け止め、制汗剤。
洗剤関連に掃除用品、トイレットペーパーとティッシュペーパー、ゴミ袋やらホッカイロやら蚊取り線香、殺虫剤にペット用品、生活用品。
シャツに下着、スウェットとジャージに靴下に靴。
生理用品やらオムツ、赤ちゃん用品。
ガスボンベやらカセットコンロ、食器、紙食器、調理器具、飲み物、インスタント食品、カップラーメンやら乾麺、冷凍のお肉やら冷凍食品やらアイス、お菓子やら調味料やら何やら、かなり充実した食品コーナー。
まあ、この他にも普通のドラッグストアに置いてあるものはある程度置いてあります。
しかし、この《ドラッグストア》は他のお店とは違います。
お客様である、おじいちゃん、おばあちゃんからのご要望にお応えし、
雪かき用のスコップやら、草刈り用の鎌、灯油やら長靴やら麦わら帽子、ホースや松葉杖なんかのホームセンター用品もびっくりの充実ラインナップです。
更に、うちのお店は地域密着型。
毎日店頭に並ぶ
【野田の母上様特製、焼きたてパン】やら
【あいださん特製、250円弁当】やら
【トミコさん特製、おにぎりセット】やら
【おきぬちゃん特製、お漬物】
なんかの地域のお母様方がお作りになられる《お手製シリーズ》が大人気。
更に、野菜や果物なんかもみんなで持ち寄り、好きな人が持ってけスタイルで勝手に置いて行く。
村の皆さんがお知り合い。
店内の隅には一段上がりの和室があって、その周囲を障子で塞げるようになっている。
そこには外で農作業をしたご近所の方々が時間差でお昼を食べにくる。
店内はエアコンが効いているので、ご飯の間は場所の提供をしている。
皆、場所代の代わりにと、私にもお昼やあんころ餅なんかのおすそ分けをくれる。
素晴らしく良い関係を築けている。と、私は思っている。
私はそんな場所で、ゆるやかにまったりと過ごしている。
このお店は、私の父親が【故郷ではお店がなくて凄く不便な思いをして育った。私を育ててくれた村の皆に、そのお返しがしたい。赤字でも良い。色々な物が揃うお店を出したい。】
なんて理由で出店しているお店だ。
母方の祖父が超絶お金持ちだったのと、その祖父がお父様の想いに感動&賛同!!
結果。
祖父の会社や不動産の一部を受け継ぎ、経営している両親と兄達のおかげで、我が家は結構なお金持ち。
そのおかげで大した売り上げがないこのお店でも問題なく経営していける。
あっちが相当な黒字を出してくれているらしいので、なんの気兼ねもなく、お店を出せています。
ありがたや。
しかも、【暴走族とか来たら危ないんじゃな~い?】と言う母の案で、リモコン一つでシャッターが下り、店内のドアも強制的に閉まったりする、中々の最新設備。
しかも、シャッターは2種類備え付けてあり、完全に視界が塞がるタイプと、柵を横にしたような格子型タイプ。
2種類同時に使う事も可能。
普段、時間外は柵を横にしたような格子型タイプを使い、ご近所さんが緊急で来た時にスグに顔が分かるようにしてる。
が、暴走族やら強盗やらに顔を見られたくない時は、完全に塞がるタイプを使う。
更には何故か窓ガラスは全て防弾仕様。
マタギのオジサンが間違って発砲しても良いようにって・・・。
母上様は心配性である。
さてさて、当店、《ドラッグストア》の説明も済みましたし、そろそろ開店の準備をしましょうかね。
店舗を十分に温めつつ、ホットレモンで一息。
お爺ちゃん、お婆ちゃん達の為に昆布茶を保温ポットに作っておかないと。
ではでは、早速、住居である二階から降りて、下の扉を開ければ店のバックヤードに出れ・・・・。
ん?
扉が二つあるように見えるのは気のせいでしょうか?
普段使っている扉の隣に、ゴッテゴテのメルヘェン調の扉。
若干イライラするデザインなのは気のせいでしょうか?
ぶっ壊したい衝動が溢れるのは気のせいでしょうか?
ああ、でも、気になる。
開けたいような、開けたくないような・・・・。
自分で取りつけた筈の無い扉。
んああああああああ。
気になる。駄目だ開ける!
扉を開けるとそこは・・・・。
何の変哲もない店内でした。
いつもと変わらぬ私のお店。
ドラッグストアの店内でした。
いやいやいや、この扉を付けた意味とはなんぞや?
ってか、本人の許可無しに既にある扉の横にこの扉を付けた意味は?
え~?
何のために誰が付けたのさ?
ん~~??
あ!!!!
もしかして、昨日のお昼の時間にでも、戸塚のおっちゃんが日曜大工のついでに作って、勝手に取り付けてったりしたの?
戸塚のおっちゃん、昨日、犬小屋作ったって言ってたし。
部屋に戻る時に気付かなかっただけで、昨日、戸塚のおっちゃん主導で取り付けたのかも。
一部のおっちゃん達は悪戯大好きだからなぁ・・・。
にしても、こんな扉まで作るなんて、どんだけ暇人なのよ戸塚のおっちゃん。
くだらない事するなぁ。
とは思うものの、
あの人は少年の心を持った可愛いおっちゃんだから許す。
木登りした時に落ちて欠けたままの前歯を見せながら、ニッカリと笑うのが可愛いのよ。
しかも、歯が欠けた原因の、木から落ちたってーのが30歳過ぎてからだからね。
大きいクワガタを見つけて木に登っちゃったおっちゃんだからね。
無邪気で可愛いわ~。
私の心の癒しです。
しかも愛妻家。
もう、素敵なご夫婦で、こんな家族を持ちたいと思うような理想の方たち。
まあ、そんな悪戯っ子の戸塚のおっちゃん達の話は置いといて、
取りあえず、店内に入りましょう。
開店の準備の前に、店内を温めないと。
と、扉を閉め、ふらふらとカウンターへ向かうと・・・。
「遅いじゃな~い!待ってたのよぉ!プンプン!」
ロリロリな服を着た、ぶりっこ幼女がいた。
いやいやいや。
この集落にこんな幼女はおらん筈よ。
金髪ウェーブの幼女とか、噂にもきかんよ。
なに?誰?どこから来たの?
というか、シャッターの閉まってる店内にどうやって入ったのさ。
え~。
なにこの子。
「こらぁ!無視しないでよぉ!私は女神様なのよぉ!この世界の美の女神なんだからぁ!ちゃんと私の話を聞きなさ~い!!」
腰に左手を当てて、右手の人差し指で【めっ!】とか叱る幼女。
ブチむかつく。
グーパンかましても良い?
しないけどさ。
顔面希望。
というか、自分を女神とか言っちゃうなんて、幼女なのに痛々しい子だな。
親御さんはどうしたんだ?
「だ~か~ら~!無視しちゃダメでしょっ!コッチ向いて、お話聞きなさい!コホン、あなたは私に呼び出されてこの世界にいるのよ~?私のお願いを聞いてくれるぅ?女神様である私からのお願い、聞いてくれるよねぇ?ねぇ?」
ウザい。
なんだこの幼女。
半端なくウザい。
ウザ幼女。
兎に角、態度もウザいが宙に浮いてるし、言ってる事もチンプンカンプンなので、説明を求む。
「良く分からん。」
この一言に尽きる。
「えぇ~?分からないのぉ?しょうがないなぁ。じゃぁ、詳しく教えてあげるね♪」
と、ウザ幼女は続ける。
「まず、この世界は貴方のいた世界の地球ではありませ~ん。この世界は【ロコココ】。この世界に存在している女神のうちの一人、美の女神を私が務めてま~すぅ♪」
と、無い胸を張るウザ幼女。
「良く分からん。ここ、うちの店だし。」
そう。
ここは私のお店だ。
お店の外に鬱蒼とした森が広がってんのも気のせいだ。
外が薄暗いのも気のせいだ。
絶対にそうだ。
「確かに、ここは貴方のお店だけど、この世界での貴方のお店なのよぉ。詳しく説明するんならぁ~」
意気揚々と話し始めるウザ幼女。
あまりにも長~い話。
しかも、話し方がウザすぎるので割愛。
私なりに纏めてみよう。
まず、ここは異世界。
私はこの世界の女神様(笑)である、このウザ幼女に呼び出されたらしい。
私が今いるドラッグストアは異世界に存在しているお店。
地球にある私のお店をコピーしたらしい。
しかも、異世界のお店は地球のお店と連動している。
商品も同じものが揃っている。
異世界のお店で商品が減っても、地球のお店の商品は減らない。
地球のお店の商品が減れば、異世界のお店の商品は減る。
所謂、地球のお店がモデルになっていて、そっちが元になる。
なので、地球で仕入れをすれば、その商品が異世界に追加されるらしい。
なんとまあ、ご都合主義。
地球での営業時間は6時~18時まで。(事前に電話を貰えれば、早朝開店可。農具が壊れた時などの対応。)
異世界での営業時間は18時~20時まで。
とな。
いやいやいや。
何を勝手な事をほざいてらっしゃるのか。
「ねぇ?聞いてるぅ?貴方を呼び出すのもぉ、《ロコココ》にそっちの世界のお店をコピーするのもぉ、すごぉ~く大変だったんだよぉ!そっちの世界にも神様がいるからぁ、そっちの神様に許可を取らなきゃいけなかったしぃ。そっちの神様に頭下げるのぉ、ほんとーに嫌だったんだからぁ。ブスのオバサンのくせにぃ、色々条件なんて付けちゃってさぁ。ウザイ~。ぷんっぷん!」
と、頬っぺたを膨らませるウザ幼女。
いやいやいや。
呼び出してくれなんて言ってねーし。
なに余計な事してくれてんだよ。
しかも、なんで上から目線?
なんで感謝してよね!的な態度なの?
馬鹿なの?
脳みそ溶けてるの?
病んでるの?
・・・・・・・・・・・・・。
あー。
もしかして、ウザ幼女の後ろにいらっしゃる、神々しいお姉様、地球の神様ですか?
ウザ幼女が【ブスのオバサン】呼ばわりした御方。
すんげぇ笑顔なのに、頭の血管浮き出てるもんね。
ウザ幼女と違って、神々しい御方な上に、地球の女神だとかいう話だし、取りあえず会釈しておこう。
神々しい御方は私に会釈し返してくれた。
おお、良かった。
第一印象は好感触らしい。
ウザ幼女は私が会釈したのを見て
「ふに?ど~したのぉ?」
なんて馬鹿みたいな声を出していらっしゃるが、
「うふふふふ。【ブスのオバサン】にお願い事するなんて、貴方は度胸があるのね?脳みそも胸も成長してない、お馬鹿なオチビちゃん。貴方、今回の我儘の為に、私に10回分の【命令権】を渡してるの忘れてない?まあ、そんな命令権を使わなくても、貴方くらいのオチビちゃんは消せるけど。試してみる?ねえ、私、こう見えても気が短いのよ?ふふふ。」
笑う女神様、パネェっす!!
美人の冷笑って本気で怖いわ。
すげぇ!!
一生ついて行きます!!お姉様!!
って感じだわ。
ふざけたウザ幼女な女神(笑)を見た後だから、尚更、神々しい高貴なお方だというのが分かるわ。
「キャー!!ごめんなさーい!!!」
ウザ幼女は涙目で叫んでいる。
ざまぁ!!
手を叩いて笑ってやりたい気分だが、地球の女神様が近寄ってきたので、我慢。
「巻き込んでごめんなさいね。このオチビちゃんが煩くて煩くて煩くて煩くて。つい、許可しちゃって。でも、安心してね。私が許可したのは【この店のコピーをこちらの世界、《ロコココ》にも作る】であって、このオチビちゃんの思い通りにして良いなんて約束はしてないから。」
女神様、微笑み全開っす。
きっと、ウザ幼女が碌でもねぇお願い事すると思ってたんだろうなぁ。
ウザ幼女、騒いでるし。
「ええ??なんでぇ?!なんでなのぉ?!私の世界の事だよぉ!私の思い通りに出来るでしょう?」
と、心底不思議そうな様子のウザ幼女。
この様子からして、自分の思い通りに私を使うつもりだったんだなぁ。
胸糞ワリィー。
地球の女神様は終始笑顔。
「ふふふふ。やっぱり頭が足りてないのね、オチビちゃん。このお店はこの子の所有物。この子自身は私の世界の人間。いわば私の子よ。この世界の女神であるオチビちゃんでも、この子に強制することは出来ないわ。もし、この子に何かして御覧なさい。ふふふふふふふ。」
地球の女神様、目が笑ってねーですよ。
それを聞いて顔色を変えるウザ幼女。
「なんでよぉ!!話がちがうー!!私のお気に入りのイケメン達を助ける為のお店にするんだからぁー!!怪我を治したり、病気を治したり、食事を振る舞ったりするんだからぁー!!それで!それで!女神である私の逆ハーレムを作るんだからぁー!!!!」
ウザ幼女は叫んだ。
はあ?
お前の好みの男を囲うための施設にするつもりだったのかよ。
アホだろ。笑える。
ってか、さっきの発言で気になったんだけどさ。
「あの、ちょっといいですか?確かに私は《ドラッグストア》の店主ですが、薬剤師ではないので専門の薬とか出せませんよ。効き目とか箱の裏に書いてある程度の事しか分かりませんし、病気や怪我を治すとか出来る訳ないじゃないですか。たかが《ドラッグストア》ですよ?」
そう、さっきのウザ幼女の言い方だと、病気や怪我を治せるとか、助けるみたいな事ほざいてるけどさ。
私のお店は薬剤師の桜田さんというナイスミドルがいるからある程度のお薬は置いてるけど、んなに大したもんじゃない。
ちなみに、桜田さんはとても優しくて、【今日はどうなさいましたか?】とか【今日も素敵な御髪ですねぇ。】とか【お嬢さん方、今日はお花見日和ですねぇ。】なんて敬語をお使いになる素敵紳士です。
ご近所のお婆ちゃん方のアイドル。
ちなみに、小学生の女の子達の初恋はほぼ桜田さんである。
しかも、男にも優しく、愚痴なんかも親身になって聞くもんだから、まさに老若男女、かなりの人気を得ているナイスミドル。
そして当然、既婚者である。
残念。
まあ、桜田さんの話は置いといて。
目の前には不思議そうに、頭元にハテナマークを飛ばしている様なウザ幼女。
「なにそれぇ??ここって、怪我を治したり病気を治す為の施設じゃないのぉ?」
何言ってんだこいつは。
『それは病院。』
私と地球の女神の声が重なった。
すると、ウザ幼女は怒りだした。
「なによそれぇ!!じゃあ、じゃあ、私のしたい事、出来ないんじゃない!!じゃあ、じゃあ、命令権10回は??無しでしょぉ!?」
「まさか。私は貴方と【この店のコピーをこちらの世界、《ロコココ》にも作る】を条件に契約しただけよ?イケメンなんか知らないし、ちゃんと約束は守ってるから有効。ちゃんと契約の内容を確認もせず、この世界とあちらの世界の関わりを理解してなかったオチビちゃんの落ち度。残念ね。」
ここで心からの笑顔を見せる地球の女神様、マジすげぇ。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!うそぉぉぉぉ!!!!」
ウザ幼女の叫び声が響いた。
くっそウケる!!
ウザ幼女ざまぁ!!
耐えきれず笑っていると、地球の女神様が泣き崩れるウザ幼女を鼻で笑って、私に寄ってきた。
自然と背筋が伸びる。
女神ってパネェ。
そう思っていると、地球の女神様は困った様な表情で
「巻き込んで本当にごめんなさいね。でも、貴方が一番適役というか、図太かったから。ごめんなさいね。勿論、こちらで貴方が死んだりしないように、このお店には私の加護をかけておくわ。攻撃も効かないから安心してね。こちらでお店を運営したい時にはあの恥ずかしい扉を通るだけ。あとは、このお店に入店出来るのは貴方と貴方の認めた人間だけ。このお店のルールは常に店長である貴方が変更できる。営業所間も好きに決められるし、入店を許可した相手を即座に店外に放り出すことも、貴方に害意のある人間をシャットアウトする事も出来るわ。勿論、相手を退店させる場所も貴方が選べるの。ここでは貴方がルールよ。ふふふ。刺激のある日々を楽しんでね。」
そう言って、地球の女神様は微笑んだ。
ふむふむ。
そう頷いていると、ウザ幼女が騒ぎ始めた。
「キャー!!私のお気に入りイケメン555号!!」
店外を見ながら叫ぶウザ幼女につられて、視線をそちらに向けると
ガラスの扉越しにこちらを見ている団体さんが。
なんつーか、勇者のパーティーとかあんな感じじゃないのかい?
ゲームとかに出てくる感じの奴らにそっくりなんだけど・・・・。
「なんだこの建物は!!もしや、コレは新しい魔王城か!?いた!!中にいるのはきっと魔族の一人だ!ブサイクな黒髪の女型が一体!!人質が2人!!みんな!!油断するなよ!!」
と、剣を構える団体様。
・・・・え?
この場にいるブサイクな黒髪って私じゃん。
女神は両方金パだし。
何、こいつらは。喧嘩売ってんの?
ウザ幼女が私に囁く。
「早く開けてあげてよぉ!!あんなに沢山の怪我をしてて可哀想じゃなぁい!治せなくても休ませてあげられるでしょう?気の利かない子ねぇ!顔色も悪くてしんぱぁい!早く!はやくぅ!」
どうやらウザ幼女はウキウキが止まらないみたいだ。
私はもちろん笑顔で
リモコンを操作し、お店のシャッターを下ろした。
シャッターと言っても、横向きの柵状の方なんで外は丸見え。
「ちょっ!?ちょっと何してるの!?」
騒ぐウザ幼女。
「いやいやいや。有り得ないでしょ。こっちに向かって剣を構えてる団体さんを店内に入れるとか、ナイナイナイナイ。あんな危険な人達、怖くて無理だわー。」
断る私と笑う地球の女神。
それに対して
「ええ!?誤解なら私が解いてあげるからぁ!はやく入れてあげてぇ!嫌な感じがするのぉ!!お・ね・が・い!」
あざとく首を傾げるウザ幼女。
「いやいやいやいや。無理ですってー。こーわーいー。」
私は首を振る。
「助けてよぉ!私の逆ハーレム作るんだからぁ!!」
涙目のウザ幼女。
「いやいやいや。剣とか。ホント、包丁なら私も使えますけど、あんなに大きいのは困りますよー。しかも、相手は私を殺す気じゃないですかー。ホント、勘弁してくださいよー。」
心の中ではウザ幼女ざまぁ!!の私。
そんなやり取りを繰り返している間に、団体さんの背後に大きな影が。
あれ、ドラゴンさんじゃないですか?
初めて見るんですが。
大きいですねぇ。
うちのお店には入れませんね。
あの大きさでは。
なんて意味不明な事を考えていると、
「グオォアアアアアアアー!!」
という咆哮と共にドラゴンブレスをこちらに向かってドーン。
あーあ。
勇者たちは燃やされたらしいね。
目の前から消えた。
その後もドラゴンはお店に何回かブレスを吹きかけてきたが、効かない事に飽きたのか去っていった。
その間もウザ幼女は叫ぶ叫ぶ。
「なんで助けなかったのよぉ!!勇者よぉ!?イケメンなのよぉ!?なんで、どうして、死んじゃったじゃなぁい!!」
泣き崩れて叫ぶウザ幼女。
どうでも良いわ。
最初に剣を向けてきたのあっちだし。
見ず知らずの人間だし。
私はお前に手を貸す気はねぇ!!
「いやいやいや。関係ないし。元々この世界には無かった店なんだし、これがあの人達の運命だったんじゃないですかね。イケメンは私に関係ないし、怖かったし。協力する気ないし。」
素直に心境を語ってみる。
それを聞いたウザ幼女がキーキーキーキー騒いで煩い煩い煩い。
なので、ウザ幼女を今後は入店禁止にしようと考えてみる。
すると店内からウザ幼女が消えた。
自動ドアをくぐらなくても入店・退店が出来るらしい。
すげぇ。
即座に私は、私に敵意・害意のある人間、及びウザ幼女の立ち入り禁止を心から願った。
「ふふふふふ。追い出してくれて助かったわ。あのオチビちゃん、本当に煩くて。今後もまったりとゆったりと、こちらの世界と地球を楽しむと良いわ。」
という言葉を残して、地球の女神様も去っていった。
そして、それから・・・・・。
一応、あれから毎日、異世界でもお店を開いているけど、まだ誰も来ない。
が、1つ重要な事が分かった。
この世界でのドラッグストアは何か所かあるらしい。
あのウザ幼女、この店を複数コピーしてやがった様子。
例の恥ずかしいデザインの扉を通って店内に入ると、外の景色が3種類あったので気付いた。
詳しくは良く分からんが、今のところ分かっているのは、鬱蒼とした森の中の一店舗と、ダンジョンの中っぽい一店舗と、街はずれ的なところ。
ダンジョンだと思ったのは、土の壁や天井が周囲にあり、ガラス越しにミノタウロスの様な得体の知れない獣が歩いていく姿を見たからだ。
縄張り確認なのか、敵を探しているのか、毎回同じような時間に目の前を歩いていく。
しかも、なぜか数秒、私と目を合わせていく。
最初に見た時は腰を抜かした。
もう一つの街はずれっぽいのは、目視できる範囲の少し離れた所に大都市みたいなのがあって、見た感じ人が多そうだし面倒そうなので、恥ずかしいデザインの扉を開けて直ぐに閉めた最初の一回以来、行ってない。
人間が近くにいる以上、既に何かしらの攻撃はされていると思う。
店舗の周囲に塹壕とか掘られてたら笑える。
恐らく、ウザ幼女がイケメンを死なせないように、様々な所に設置したと考えられるが
本当に要らない事ばかりしてくれるウザ幼女だ。
まあ、ウザ幼女の希望に沿うように動く事は一生ないがな!!
地球の女神様に土下座でもして、他の人間でも呼べばいいさ!
そして、私は異世界と地球のお店を経営する店長になった。
異世界のお店では
【私がルール】
をもっとーに、好き勝手に経営していく。
地球のお店が元になってるから元手はかからないし、値段設定も、来店する人間も完全に私個人の独断。
時には泣き叫ぶオッサンを助け、時には困ってるオッサンを助け、時にはお腹を空かしているオッサンを助け、私は異世界を満喫していく。
その結果・・・・。
__________________
《ロコココ》中の大国が集まる会議で、とある報告がなされた。
ある日を境に、様々な場所で不思議なお店が発見されるようになった。
その名も
【オッサン専用店】
である。
フザケタ名前ではあるが、これ以上にこの店を的確に表現できる言葉は無い。
このお店では、今まで様々な場面、店で優遇されていたイケメン達は完全に無視される。
それに引き換え、売れていない冒険者のオッサンや、貧乏な農家の優しいオッサン、鍛冶屋の頑固なオッサン、貴族で穏やか紳士なオッサン、などなど、
小説であれば、完全に脇役と呼ばれるであろうオッサン達のみ入店出来る、幻のお店として君臨している。
勿論、乱暴者や意地汚い者、店長である女性に害をなそうとするものは、オッサンであっても入店はできない、
選ばれしオッサンしか入店出来ないお店だと広く知れ渡っている。
更に、お店から出たい時には、女店長にお願いすれば、自分の自宅や最寄りのギルドに送られるらしい。
一瞬で自分の自宅やギルドに到着出来れば、そのまま食べ物や購入品を隠せるので助かると、女店長にお願いするオッサンがほとんどらしい。
女店長はオッサン達にお願いされると、嬉しそうに鼻の下を伸ばす、変人であるという噂もある。
しかも、選ばれるオッサン達の基準は顔ではない。体型もしかり。
既婚者であれ、一人者であれ、爺寄りであれ、女店長が気に入れば入店が許可される。
穏やか、泣き虫、豪快、元気、紳士、
まさに国中の様々な種類のオッサンが集まる、オッサン為のお店の完成である。
更に、このお店で売っている物は摩訶不思議な物ばかり。
一部の商品は持ち出し禁止、もしくは中身を自分の持ってきた箱や袋に入れ替える。
購入数の制限。
などなど、多少のルールがあるものの、多くのオッサン達はこのお店を嬉々として利用している。
女店長は小銀貨などの料金を請求する時もあれば、櫛や手編みのリボンなどの安物を求めたり、その辺に咲いている花を求めたり、筋肉を触らせることを条件にしたり、お茶を一緒に飲んでいくことを代金の代わりにすることも多い、変わった女だそうだ。
しかも、なぜか。
金がなく、何も買えないオッサンに対しても、
嬉々としてお茶を振る舞い、茶菓子を用意し、一緒にお茶を飲もうと数々のオッサンを誘うという噂もある。
兎に角、オッサンの憩いの場【オッサン専用店】に入店出来るかどうか、それが今の《ロコココ》での一番の関心事である。
そう、報告がなされた。
報告した国は、その怪しげなお店を今後どうしていくかを議論したかったのだろう。
だが、他の国からの反応は薄い。
【今更か?】
【既に調査済みだ。】
【我が国は植木職人の頭が通っておるわ。】
【私の国は傭兵の方が~】
【農民が~】
なんて話が出てくる出てくる。
最終的に
【《オッサン専用店》に手を出せば、今後そこに通えるかもしれないと楽しみにしている若い人間や、今通っているオッサンが反乱を起こす可能性があるから却下。】
と、話し合いにもならなかった。
との内容を、うちの店に通い始めて半年のオッサンから聞いた。
オッサンはとある国の前王様らしい。
【国家機密だから内緒な?】
なんてニヤッと笑うオッサンが可愛くて、大福を献上させていただいたのは内緒だ。
にしても、私は知らなかったよ。
私の経営する《ドラッグストア》が《オッサン専用店》と呼ばれているなんて。
そう思いつつ、店内を見渡してみると、囲碁を楽しみ、団子を食し、酒を飲んで笑うオッサン達が目に入った。
眼福。眼福。
そうですよね。
今後も、この方針で経営させていただきます。
【当店はオッサン専用です。】