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もし、企画戦略部のマネージャーが異世界トリップをしたら  作者: 武龍・亜李ー
第1章 質の高いコミュニケーションとは、論理性と○○である
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第1話 マネージャー、異世界で出会う

読み専でしたが、触発されて書いてみました。よろしくお願いします!

「PDCA!ふたりにはPDCAが足りないっ!!」


ギルドの中に併設されている酒場に大きな声が響き渡る。

はじめて耳にするその言葉に、エルフ族の青年とドワーフ族の男は顔を見合わせた。

戸惑いを覚えつつ、エルフの青年は、目の前に現れた見慣れぬ青年に顔を向け、怪訝な表情で問いかけた。


「ぴーでぃーしーえーって何?」



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 俺の名前は織葉聡一オリバ ソウイチ26歳。

職業サラリーマン。

四菱商事で企画戦略部のマネージャーをしている。

マネージャーが何をするのかと言われるとちょっと説明が難しい。

 プロジェクトのリーダーをしたり、仕事がうまく行くように他のプロジェクトの支援をしたりするのが仕事だ。

プロジェクトの進行、予算取り、スケジュール管理や人の調整などなど。なんでも屋といったイメージに近いと思っている。


 ブラジル産のトウモロコシをオイルに変えて日本へ輸送する大きなプロジェクトを受け持つことになった俺は、視察で南米へ行くこととなった。

 仕事が忙しく寝不足気味の俺は、成田空港で飛行機に搭乗してすぐに、エコノミークラスのシートに身を埋める深い眠りに就いたのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 「・・・は?」

 気が付いたら背の低い草が生い茂る草原の真ん中で目が覚めた。

 空港で預けたはずのキャリーバックとビジネスリュックが足元に転がっている。


 「おいおい、まさか飛行機事故か?」


 墜落して外に放り出されたのかと焦るが、辺りを見渡しても、飛行機の痕跡は見当たらない。

 第一飛行機事故であれば自分は無事には済まないはずだ。

 周囲に人はおらず、とりあえず会社に連絡をしようとスマホを手に取ったが、電話もつながらない。


―――夢でも見ているのかな。

 顔をつねってみるとしっかりと痛みを感じた。

 どうやら夢ではないようだ。


―――困った・・・とりあえず誰かに助けを求めないといけないな。人がいる場所に行かないと。

 想定できない事態に頭が追い付いてこない。


 「スー、ハー。」

 気持ちを落ち着けるため深呼吸をし、それからゆっくりと周りを見渡した。

 すると遠目に塔らしき建物が見えた。

―――歩いて行ける距離ではあるな。

 幸い起伏はなだらかで、舗装はされていないようだが道も見える。

 1,2時間で到着できそうだ。


―――まずは人に会わないことには始まらないな。よし、目標はあの街だ!

 リュックを背負い、キャリーバックを転がしながら、

 俺は建物へ向けて歩みを進めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 途中、森を抜けると視界がひらけ、街が見えてきた。

 小高い丘に位置するその街は、中央に、立派な石の塔がそびえ、その塔を囲むように

 木造や石造りの建物が軒を連ねているようだ。


 ここにきて、自分が今いる場所はとんでもない田舎にあるのではないか、という懸念が頭をよぎる。

 スマホがつながらない。

 道路は舗装されておらず車も見えない。

 街にはビルが見当たらない。


―――少なくとも日本ではないな。ブラジルにしても雰囲気が違うような・・・

 不安な気持ちを抑えつつ、歩みを早める。

 街にさらに近づくと、入口らしき門が見え、小さな詰所があった。

 門前で2人の男が談笑していたが、その恰好を見て俺はまた驚愕した。

 ひざ丈ぐらいの長さのチュニックを着ている男たちは、その手に背丈ほどの長さの槍を持っていたのである。


―――・・・バチカン市国か??

 前にTVで見たことがある。バチカン市国の衛兵は、槍を持って今でも街を警護しているらしい。

服装がTVで見たときより地味だけど、そういわれてみると街もなんだか中世ヨーロッパ風である。

―――まいったな、イタリア語なんてしゃべれないぞ。ボンジュール、だっけ?


 あちらもこちらに気づいているようで、どきどきしながら近づいていく。

 警戒されないように、表情は笑顔で話かけようとしたところで、

 2人の男のうち、年配のおじさんが、先に話しかけてきた。

 「兄ちゃん、変な恰好してるなー、どこから来たぁ?」



 ん? 日本語??




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 門番の2人は気のいい人たちだった。

 ここがメルクフィアという人口6000人ほどの街であること。

 20年前にダンジョンが発見され、ダンジョンに眠るお宝を求めた人が集まってできた街であること。

 おすすめの宿と食堂まで聞いてないのに教えてくれた。


 「つかぬ事を伺いますが、メルクフィアってどこの国の街ですか?」

 「ははは、兄ちゃん無学だな。東ドーゴ王国だよ。」

 東ドーゴ王国・・・知らない。

 「日本って国、知ってます?もしくはジャパン、ジャポンとか。」

 混乱して浮足立つ気持ちをなんとか落ち着けながら、俺は質問を続ける。

 「日本?聞いたことないな。」

 じゃあなぜ俺はこの2人と日本語で会話をしているのだ。

 「じゃ、じゃあイギリス、フランス、アメリカ、中国、どれか知っている国は?」


 「聞いたことないな。」

 若者のもう1人が怪訝そうに言葉を続ける。


 「おい兄ちゃん、いろいろ知りたかったら、街の教会で司祭様に聞いてみたらどうだい。俺たち門番にそんなこと分からねえよ。」

 ここであまり変な質問を続けるのは得策ではない。警戒されて、不審者として捕まってしまうかもしれない。

 俺は質問を切り上げ、門番2人にお礼を言って、街の中へと入っていった。

 なお、俺の身分確認のようなことはされなかった。

 あっちからすると自分は結構不審者だと思うんだけど、それでいいのか。


 街についてから、とりいそぎお金を両替しようとしたが、銀行、両替所らしきものが見当たらない。当然、クレジットカードも使えないだろう。

 このような不慣れな場所でお金を使えないのは非常にまずい。


 想像してみて欲しい。気づいたら知らない場所にいる。

 連絡手段はない。お金も使えない。泊まる場所もない。


 とても焦る状況だ。



 途方に暮れた俺は、街の外から見えた石の塔の横に立ち並ぶ、立派な建物に入った。

 おそらく市庁舎のようなものだと俺は予想した。

 公共機関に助けを求めるためだ。

 建物の多くは2階建ての木造だが、その建物は石造りの4階建てであった。

 正面玄関があり、何人もの人が出入りしているのが確認できる。



 恐る恐る足を踏み入れた建物の中は少し薄暗くひんやりとしていた。

 窓から日の光が入ってくるが、電気照明は見当たらない。

 やはりこの町は電気が通っていないのだろう。

 2階まで吹き抜けになっており、開放感があるつくりだ。


 正面奥に受付のようなものが見えたので、向かおうと足を踏み出したところで、右奥側から言い争うような声が聞こえてきた。

 思わず視線を送る。

 建物の右奥はどうやら酒場のようで、昼から酒を飲んでいるオヤジや爺さんが何人かいる。

 声の主は、細見の長身の青年と、背が低くガタイの良い男だ。

 2人が話している内容が自然に聞こえてくる。やはりこちらも日本語だ。

 自分の常識が通じない世界に世界に迷い込んだという懸念が強くなる。


(ちょうどいい、ここがどういったところか、聞き耳を立てて情報収集しておこう。)

俺は会話を聞くため、こっそりと近づくのであった。





 オリバ ソウイチ 26歳。

 後に、最難関ダンジョンが1つ「魔術師の墓」の制覇、聖都レッドドラゴン討伐、冒険者ギルド「フォーピース」の設立など数多くの偉業を成し遂げることとなる男であり、これら偉業の数々をともに成し遂げることとなる仲間と出会った瞬間である。


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