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再会してみた

※文章に矛盾を発見したため修正しました。




夜は、一般的に盗人の時間と言われている。


それは夜になっても活動する人間は夜盗か泥棒くらいだからだ。

人々は特別な理由が無い限り、夜に外に出たりはしない。


それに街中は希少な“祈りの炎”が届かぬ暗闇を埋めるように松明が配置されているが、事故で暗闇が出来て“影魔”が出現したということも少なくない。


町の中で過ごす町人でさえ、“影魔”の危険とは隣り合わせなのだ。

であるからこそ、町と町を行き来する商人たちは大勢でキャラバンを組み、傭兵を雇い、準備を怠らない。


町の外ではこの間の山賊たちのような実力も無ければ夜盗は割に合わないが、居ないというわけではない。

こう言った脅威から商人たちを守るのが、傭兵や冒険者たちの主な収入源であった。


だから、このような依頼は初めての事だった。






くしゅぅーーー。


吐息のような唸り声のような音に私は注意を払う。


一度目を離せば目で追うことは困難であろう、暗闇の中の住人。

それが“影魔”だ。


その姿は獣のようだが、輪郭が絶え間なく炎のように揺らめく不定形であり、今にも闇の中に溶けて消えてしまいそうである。


しかし奴は私に向けて殺気を向けて威嚇しており、一触即発の空気である。

私はいつでも奴がとびかかってきても良いように構えていると。




「そーれ、“炎撃”どっかーん!!」

影魔の足元が真っ赤に膨れあがると、たちまち爆発して影魔は爆散して地面に散らばった。

血は無い。奴らにそんなものは無い上に、四散した肉体はすでに半分以上が消滅している。


それより私はむしろ、何の前触れもなく魔法を放った後ろの依頼主に振り返って言った。



「魔法を打つ時は先に言って欲しいのだが。」

「え、だから掛け声かけてるじゃん、そーれって。」

彼の悪びれもしない物言いには内心腹が立ったが、相手は依頼主である。

彼の怒りの買って報酬関係のトラブルになどなりたくないので、私は大いに我慢した。



「ほら、次のが来ているよ。」

「く・・・。」

私は出かかった文句を飲み込んで新たに湧き出てきた影魔に相対する。





ウェルクが急に私に尋ねてきたのは、今日の昼の事であった。

王都にまで彼を送ってあと別れて以来、滞在先も意思疎通できなかった故に教えられなかった。


ところがある日、私は酒場でほかの同業者と情報交換している中に、漆黒の装いを新たにして現れてこういったのだ。


「やあエリン久しぶり。今日の夜中だけどまで北の街道を散歩したいんだけど、雇われてくれるかな?」と。


勿論、狭い酒場の中は静まり返った。

夜、しかも町の外を出歩こうなどと、正気の沙汰ではないからだ。


夜中を出歩く事になる商隊でも、出発は朝早くが基本だ。

夜中は基本的にできる限り明るくして、四方八方から現れる影魔に備え、朝が来るのを耐えるのだ。


それでなお、一度の護衛で死人が出ないのは稀である。

こちらは疲れを知る人間であり、影魔は斬っても斬っても湧いて出てくる。

誤って隊伍から突出しようものなら、瞬く間にそいつはずたずたになるだろう。

それくらい、夜の街の外と言うのは危険な場所だった。


前の村を襲った山賊たちがほぼ無傷で夜中にやってこれたのも、彼らの練度が優れていたからだ。

そうでなければ山賊稼業など割に合わない。



「料金は、相場の三倍は出すよ。勿論、嫌なんて言わないよね。」

彼の言葉は私に尋ねるつもりすらなく、決定事項をただ伝えるようですらあった。


「そういうことで、北の門で紫の刻に集合ね。

遅れたりすっぽかしたりしたら怒るから、そのつもりで。」

ウェルクは別れた時とは想像もできないほど流暢な公用語でそういうと、銀貨がずっしりと詰まった革袋を投げ渡してきた。


私が目を白黒させている間に、ウェルクは去って行った。

銀貨の詰まった革袋の齎す重さだけが圧迫感のように残っているだけだった。






・・・・

・・・・・

・・・・・・




「よしよし、今日はこんなもんでいいかな。」

ざっと二刻分は付き合わされると、ウェルクはそう言って荷物からカンテラを取り出した。

荷物の中でもその存在を主張し続けた光は、外に出されその本分を果たすように闇を退ける。


その光に、今まで獰猛だった影魔たちも、遠巻きにこちらを睨むことしかできなくなる。



「よく個人が“祈りの炎”を借り受けられたものだな。」

「いいや。王都の中央にあれだけ大きな燭台があるんだから、そこから拝借してきたよ。」

ウェルクの言葉に、私がギョッとして顔を強張らせたのはきっと無理もないことだろう。



「あはは、なにそれ、変な顔。」

下方からの光と影も相まって、ウェルクに指を刺されて笑われた。



「“祈りの炎”を許可なく勝手に持ち出すのは重罪だぞ。

それ以前に、神官たちでもなければそれの火種を分けることはできないはずだぞ。」

「ふーん、道理で。町中に設置されていないわけだ。

もっと分散して配置した方がリスクを減らせるのに。」

「何を言っている。そんなことを炎の神々を祀る神殿が許さないだろう。

それに、たとえそれが適ったとしても、全ての炎に祈りを捧げていては幾ら時間があっても足りなくなるだろう。

仮に“祈りの炎”を絶した場合、それを管理している者に死罪が適応されることもあるのだからな。」

太古の昔から絶えず燃え続けている“祈りの炎”だが、その種火は厳重に管理されている。

神々の言い伝えにも、むやみに種火を増やすことなかれと記述されているとも聞く。

それ故に絶対数も少なく、地方都市にもなると街の中央に一つだけということも珍しくない。

王都ですら“祈りの炎”の燭台は三つしか存在しないほどだ。



「確かに、今の時代じゃ物理的に無理か。

これって神官が一緒じゃないと燃え盛らせるのもダメなんでしょ?」

「当たり前だろう。」

それ故によほどのことが無ければ、大抵炎を絶やした責任を取らされるのは神官長である。


「でも確か、例外もあるんだよね、確か・・・。」

「王族、または騎士位以上の貴族のみだ。

これを破ると罰金が科せられる。これは緊急の場合でも認められない。」

「ふーん、でもこれ、もう消えそうだよ。」

ウェルクの言うとおり、カンテラの中身の”祈りの炎”はその勢いが急速に衰えだしている。


それと共に周囲で唸っていた影魔たちが嬉々として距離を詰めてきた。




「やっぱり弄ったりしたのが悪いのかな。

前に拝借した時はもっと長持ちしたんだけど。」

「ななな、なんて罰当たりなことを!!」

「それより、この状況どうする? このままじゃこいつらの餌になっちゃうよ。」

「うぐぐぐ、ウェルク、貴様私を巻き込む気かッ!!」

「僕が拾ってやった命だろう?」

実にいやらしい笑みを浮かべて、ウェルクは言った。



「もうッ、貸せ!!」

私はウェルクからカンテラをひったくると、それを地面に置いて跪き祈りを捧げた。

すると、瞬く間に“祈りの炎”は勢いを取り戻した。

影魔たちも、カンテラいっぱいに燃え上がったそれの前に逃げるように消え去って行った。



「あーッ、いーっけないんだぁ!!

勝手に“祈りの炎”に祈りをくべているよ。」

「何をたわけたことを。もうわかってて言っているだろうに。」

私は立ち上がって、思いっきりウェルクを殴りつけた。


「まあね。一度師匠に王城を見て回らせてもらったんだ。

それで確信した。君ってばどこかの貴族だろう。」

私の右拳を頬に受けておいて、微動だにせずウェルクはそう言った。

殴った感触はあるのに手ごたえが無いという不気味な感触だった。



「人間っていうのは幼い頃から受けた教育ってものはなかなか抜け出せるものじゃないからね。

粗野な連中を見比べると結構浮いていたよ。君ってさ。」

「一応、準男爵の末席を汚させて頂いているよ。」

「えーと、この世界の扱いだと準男爵ってあれだろ、男児が居ない貴族の跡取りの暫定一位に据えておくための訳有り爵位だったっけ?」

騎士位、つまりナイトは平民がなる一代限りの貴族なので、元々貴人の縁者をそれらと区別するために作られたという経緯がある。



「そういう貴様は何を司る神だ。いかに神と言えども、地上に降りてきた以上天上の方々と同列には扱わんぞ。」

「僕が神様だって? 残念だけどそれは勘違いだよ。

でも良かったね、取りあえず僕を崇めたりしないで。そうしたら八つ裂きにしていたところだったよ。」

ウェルクはにこにこと笑みを浮かべたままそう言ったが、私はその奥に隠された殺意には思わず剣の柄に手を掛けたい衝動に駆られた。



「僕は、そうだね、君に分かるように言うのなら、天上の神々が住むところの更に遠くの向こう側から来たってところかな?」

「空から降りてきたのなら何が違いがあるというのだ。」

「ああ、あー、そうだね。君たちのような未開の蛮人から見れば、僕は神の遣いやらなんやらに見えるってことか。

まあ確かに、別大陸に渡った冒険家が現地の住民に崇められるとかよく聞く話ではあるけどさ。」

これは面倒くさいなぁ、などと呟きながら、ウェルクは頭を掻いた。


「じゃあ、言い方を変えよう。とっても遠くの大陸から来たの。

君らが千年旅しようとも辿り着けない遠くの大陸からきたのさ。」

「ところ変われば神々も変わると言うが、別の大陸からきた神なのか?」

「もうッ、だから違うって言ってるでしょ!! これだから未開の蛮人は嫌なんだよ!!」

「私を蛮族扱いするとはいい度胸だ。」


拗ねてそっぽを向いたウェルクとの話は拗れに拗れ、さらに私も剣を抜いたものだから、結局話は翌日の朝が訪れるまで堂々巡りを続けることになったのだった。










こんにちは、ベイカーベイカーです。皆さんお久しぶりです。

しばしば更新が途切れてしまいましたが、別に飽きたとかそういうのではないのです。

じつは私が使っているパソコン、時々調子悪くなって、11111111、とか、666666、とか勝手に打ち込まれることがあるのです。

そうなっている間はなんというか、すごく萎えるんですよ。創作意欲が。

そうでなかったら佳境に入った第一章をあんなところで切ったりしませんよ。

・・・おっと愚痴になっちゃいましたね。

ともかく、これからもボチボチ更新していきますので、それではまた、次回。

よろしくお願いします。



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