第2話 それぞれの作戦
けつの穴万太郎 他作品紹介
毎年恒例のパッチモ忘年会。一次会も終わりホロ酔いのもろちゃんは二次会に向かう途中、交差点で事故に遭ってしまう。意識の混濁する中、死を覚悟したもろちゃんだったが目が醒めるとそこはさっきまでいた一次会の会場だった。同じ人が同じ会話をする中、再び二次会へと向かうことに。気をつけながら交差点で待っていると突然後ろから誰かに押され……
気づくとそこはまたしても一次会場。一体誰が、何のために……
万太郎初のループミステリー
『トート&リュック』
ーーー健さんカー班ーーー
秋山とその取り巻きは部屋から出て行き、しばしの静寂が流れる。
沈黙を破ったのはしまちゃんだった。
「てっちゃん、なんか思いついたぁ??」
「ん? 何が」
「いや、なんか作戦とか?」
「ごめんまだそこまで状況を把握出来てなくて、サバイバルゲームでしょ? 一度人生経験としてはやってみたいな、ってのはあったんだけど今回のはちょっと違うんだよね」
「ね、ね、ね、てつさーん」
「ん、どうした?」
「なんかさー、本物か偽物かすぐわかるような物ないかな?」
「身に付けるものとかでって事?」
「うん」
「パァっとはうかばないなー、それにもし、それできてもウチら七人だけになっちゃうんだよねー判断出来るのが」
「そっかぁ、そうだよねー」
少しガッカリした様子の矢野ちゃん。二人から質問をうけ、このメンツの中で今やるべき事は舵をとる事だと再認識したてっちゃん。てっちゃんは矢野ちゃんからの質問にこそ答えられなかったが、敵がクローンだと聞いた時から何か出し抜く方法はないかとずっと模索していた。
視線を落とし考え込んでいると、
「イッシー、備品チェックしてみよー」
しまちゃんの隣にいたダイキが声をかけた。
「おれもするするー♫」
そうおどけて答えたのはイッシーではなくタクマだった。
がさっ、がさっ
……
「てつさん、これ何かわかりますか?」
イッシーが言いながら、てっちゃんの元に腕時計の様な物を持って来る。
プラスチックでできている赤いそれは一目でオモチャとわかるものだっだ。腕時計の形状をしているが、ベルトの部分までもがプラスチックでできているし、何より色が安い赤色をしていた。例えるなら学校のグラウンドなどで見かける運動会には必須のコーンの色そっくりなのだ。ロクな物ではないな。誰もがそう思った。しかし、
「あーこれしってるー、ドロケイとかでつかうやつでしょ。いちじわだいになっておれかおうかとおもったんだよね」
健さんが答えると
「それ私も知ってるー! pacchimoで買ったら超面白そうって思ったやつー」
しまちゃんも知っていた。
そんな会話がされ、部屋にいる全員の目線がイッシーの手元へと注がれる。
「何これ、けんさん」
「なんかね、しゅうはすうをあわせると、あわせてるひとどうしがちかくにきたとき、わかるらしいよ」
「めちゃくちゃ使えねぇ?」
てっちゃんが興奮し気味に言う。
「でもわかるのってこの七人だけですよね? 周波数合わせるってことは」
ピッ
ピッ
「いやもしかしたら可能性があるかも。今いじってるんだけど、周波数が四桁まであるから、他の班が選びそうなのを設定できれば……」
「いやいやいや、てつさんさすがに無理っすよ! 四桁っすよ!」
「無理かなー。俺は結構いけるとおもうんだけど。多分だけどうっちゃんはこっちの周波数に合わせてくると思うよ」
てっちゃんには自信があった。pacchimoメンバーが集まった時、あるいは盛り上がる時に使われる“番号”は限られているからだ。しかもその全てが四桁の数字。上手くいく可能性は十分にある。てっちゃんはみんなの意見が聞きたいと再度メンバーを集めた。
「pacchimoでよく使われる数字ってパッと誰か思いつく?」
「何だろう……」
「俺がパッと思い付いたのは三五九四。この番号だと中田さんも釣れるかもしれない。前の中田さんが乗ってた車、実家の車ね。鍵なくてもこの番号さえ覚えてるとドア開けられるんだよ。それから俺も語呂がいいしチョイチョイ使わせてもらってるんだ。俺の携帯の下四桁でもあるし、この番号はかなりいいと思う」
「えっ、テツさんのケー番暗記してる人いるのー?」
「いるいる! うっちゃんは確実に覚えてるよ。昔うっちゃん携帯無くした時、速攻で俺に電話かけてきたぐらいだもん」
「へー。うっちーさんすげー」
「ねー、てっちゃん、殿の実家の番号は?」
!!
しまちゃんからの一言にてっちゃんは、それだ!! と人差し指を差しながら答える。
「あるわ、あるある。むしろこっちかも、うっちゃん、柘植ちゃん、きっぺ、もしかしたら本ちゃんもか、俊ちゃんはわかんないけど、ここら辺はこの可能性ありえるわ」
てっちゃんは興奮し気味にそう言った。しかしその後直ぐに問題は起きた。
「うーん、いいねいいね。でそのばんごうってなんばんなのー?」
……
「わかんねーや、しまちゃん知らない?」
「しらないお」
「じゃあウチらはこの番号わかんねーわ。うーん、いいの見つけたんだけどなー」
……
「じゃあ最初のでいきましょう。三国志で! 時間もあまりないですし」
イッシーはそう言うと再び備品のリュックを漁り始めた。
「ねねね、みんなでどこか目指すっていうのは?」
備品から今回の舞台となる地図を見つけ矢野ちゃんが言う。
「それいーんじゃない、みんなでそこめざせばあえそう」
「そーだね。決めておこっか。ここの左上のB地区って書かれてるとこはどお? わかりやすく一番北に位置してるし。地区内に入りさえすればさっきの周波数も拾えると思んだよね」
「んふふふ、びーちく。ふふふふ」
健さんが一人で笑っていた。
「もー、ホントしょうもないことで健さんはー、次のこと決めるよ」
てっちゃんが呆れたように、しかし笑顔でそう答える。
「あのさーもしさ、誰かとあったらさウチらの情報とかさ、その人に話してもいいの?」
「うーん、とりあえず情報話すかは置いとくとして、敵、味方に会った時どうするかぐらいは決めとくか。まぁ敵って断定出来たら勿論その場で倒して欲しいんだけど、さっきのうっちゃんを見る限り見た目はかなり難し
…」
「あっ俺、とりあえず原沢やりますから!」
タクマが声高らかに宣言する。
「アハハハハハっ、もし本物だったら?」
「いや、関係ないっす! 一撃でやります!」
「「「アハハハハハ」」」
会議室が一気に笑いに包まれた。
「ホントおもしれーなー、いや流石だわ。一撃て」
てっちゃんが爆笑しながら答え、更に続ける
「みんなさ、うっちゃんの違和感ってどっか感じた?」
「違和感かわからないすけど、目が違うような……」
「それ!!!
俺も言おうと思ったんだけど、多分あのクローンのうっちゃんって二重だったと思うんだよね。多分だよ」
「それがなんかかんけーあるの?」
「あるある、おーあり! もしホントにそうならクローンは完全コピーの可能性がなくなるもの! 例えば目が二重になってたりとか、利き手が逆になってたりとか、身長が劇的に変わってたりとか。外面が変わってるのかなって単純に思ったんだよね」
「あー、ありえますね」
「さすが、てっちゃん! フーッ!」
てっちゃんがそう言われ右手を高らかに挙げ、何度か頷いた。
と、その時、だいきが誰にともなくポツリと言った。
「なんか部屋……もやがかってません?」
!!
「はぇーな、もう時間かよっ。 えーと、あとは何だ。
あぁそうだ、健さんっ! 記憶の飴を!」
「うん、よっ、どうすればいい? てっちゃんにわたしとく?」
「ーーーー。しまちゃんに渡してもらっていい??」
「おん。わかった」
だいきが気付いた時よりも、更に部屋の中は白く霞んでいた。
そして………
「やばい限界だわ! 眠気が……
みん、な、がん、ばろ。 な、にかぁったら、かなら、ず、ぅた、がってから……」
こうして健さんカー班は全員眠りについた。
どうも、イガライブ総統です。
今回出てきた周波数。これはかなりロマンのある話。全ての物質は周波数によって構築されていて、宇宙も周波数で表現できるという話もあるくらい。全ては振動で表現され理解されるというなかなかに深E
話。カオス理論やショーネス理論なども元を辿るとルーツはここにあったりする。
次回、真説・もうこはん第3話
『それぞれの作戦2』
君の後ろに黒い影