人物紹介 其の三
「新メンバー……一人目はあかリンこと矢野だ。
女性ながらその運動能力はpacchimoの中でも5本の指に入る。
幼少の頃から軽乗やバスケで鍛えあげてきた、バリバリの体育会系女子だ。
入社したばかりの会社で、腕力自慢の女性社員を腕相撲で秒殺して周囲を震え上がらせたのは有名な話だな。
サク、お前なんかもバッタリ出会ったら瞬殺されちゃうんじゃないか?」
「やめてくださいよ先輩……冗談になってませんよ……ってゆうか、ケイジョウってなんですか?」
「あぁ、知らんか?
さっくり言うと、走ってる馬の上でアクロバットとかをする競技だな。幼少期、バスケを始めるまで矢野はポニースクール に通い続け、その基礎体力が作られたといってもいい。
それともう一つ。矢野の優れた能力に『吸収力の高さ』があげられるな」
「ダブルギャザー的な?」
「そうそう。夜でも安心……ってやかましいわ!!
これは矢野がpacchimo最年少っていうのもあるかもしれないが、みんな妹の様な感覚で色々と教える。
矢野は兎に角貪欲だ。わからなければ理解するまでなんでも聞くし、そこに恥ずかしさも感じないから、物凄いスピードで自分の物にしていく。成長率で考えれば確実にpacchimo NO.1だな」
「じゃ、弱点はないんですか?」
「むー……あまりコレといったものはないが、素直過ぎるのが仇になる時があるかもな。
信じている人間の発言を疑うという事があまりない。 この人がこう言ったからこうするとか、変にずっとそ の事を信じる節があるから、そこを攻めるのは有効だな。
ちなみに今データを作っていても実験開始までは幾分時間もある。その間にもきっと矢野はステータスを伸ばし続けているだろう。恐ろしい新人だな。
ふむ。
次にいこう。新メンバー2人目はタクマこと佐藤だ。
EXIL◯の最終審査まで残った猛者だな。長身。色黒。髭面。イケメン。まさにEXI◯E。
佐藤はpacchimoの中で1番ドラムが上手い。そのリズム感があるから運動ができないわけがない。ゲームも強い。基本的にアレだな、リズム感いいやつはゲームうまいな。
佐藤はその見た目故チャラチャラした印象を持たれやすいが、かなり真面目で誠実な男だ。しっかりと筋は通すし上の者もたてられる。
スキューバーやスノボーもかなり好きで、忙しい仕事の合間をぬってよく遊びに行っているようだな。
チャラ男の見た目に恥じぬ、かなりのアクティブ野郎だ。それとフラッシュ暗算といったらいいのか? わからんが、暗算がめちゃくちゃ早いと巷で話題だ!
欠点としては矢野と少し似ているかもしれないが優しすぎる所。情にもろい所だ。付け入る隙があるとしたらココだろうな。
次、三人目は……クミさんこと清水。
前にも言ったが佐々木の彼女だ。
清水は恐ろしく頭が切れる。単純な頭の良さは勿論、回転もかなり速い。俺の見立てではPacchimoナンバー1だな」
「ナンバー1ですか……そんな風にはデータを見る限り感じないですけど」
「佐々木の彼女としてpacchimoに入ってきて、誰よりも知的に見せてみろ、すげー印象悪いぞそんな事したら。
清水はな、一歩引いて物事全体を見てるんだよ。仕事では人をまとめている立場にあるし、指揮能力の高さも伺える。
こうして清水の情報を見てみるとなんだかかなりやり手のキャリアウーマンっぽく見えるな。
男なんて興味ないですよ? 仕事命です! みたいな……。
だが、本当はかなりの乙女だ。嫉妬心も強く、よく佐々木と揉めてる。恐らく本当の感情はもっとあるに違いないだろう、押し込めてるんだ本当の自分を。
頭が良すぎるあまりその先を見据えて、少しでも危険な事にならないように感情をセーブしている」
「ちょっと諸橋君とか岩間君と似ていますかね?」
「保守的にって意味じゃ似てるかもな、ただ本質的にはかなり違うと思うぞ。
岩間はさっきも言った通り根っこの部分がわからん。
諸橋は無意識に保守的なのに対して清水は意識して保守的になっているんだ。今はな。開放状態にしたら面白いもん観れるぞ、きっと。
さて、最後の一人だな
最後は桜こと戸井だな。
戸井……遂に来たか…」
ニヤリ
「どうしたんですか先輩? いきなり笑顔になって…キモいですよ。」
「じゃかぁしいわ!」
「ちゃんと説明して下さいよ」
「そーだな、戸井……戸井は岩間と高校が一緒、諸橋とは中学が同じだったんだ。そして高校生の時に諸橋の紹介で内田と出会ってるな。その後しばらくみんなとの交流記録がなくなる。そして最近また交流を持つようになった」
「なんで交流が途絶えたんですか?」
「うむ、まぁ簡単な話、女絡みでだな。当時戸井には彼女がいたんだが、別れた途端内田と付き合い始めたんだ。その事に激昂した戸井、後ろめたい気持ちのある内田。まぁ離れていくわな」
「そんな! 内田君ってただの下衆野郎じゃないですか!?」
「まぁ内田は内田で何が問題あるんだ? って思っていたみたいだな、別れてから付き合いました。順序守ってますし、私何も悪くないですよ? って具合だ。
ただ内田は口が悪くてすぐに相手を逆上させる。この時もしっかり説明していれば恐らく戸井がここまで長く関係を離れることは無かっただろう」
「…………秋山先輩……戸井さんの……特徴を……」
「おぉ、そうだなヤマ。お前から急に声をかけられると怒られてるみたいだな。
戸井の特徴。運動能力に関しては中の上程度。化け物みたいな身体能力を持つ他のメンバーと比べると見劣りしてしまうが、決して運動は苦手ではない。もともと身体を動かすのは嫌いじゃないようだし、学生時代はテニス部にも所属していたようだな。
運動以外の能力面では、論理的思考・頭のキレ・物事やゲームに対する理解力・底意地の悪さなんかも、岩間に似てる所があるかもしれんな。違うのはギャンブルが好きな事かな? ギャンブルに関して戸井は基本イケイケだな。流れを見て乗る時は乗っていくタイプだ。その分熱くなりすぎる事もあるようだがな」
「戸井君とだったら麻雀やりたいですね!!」
「やめとけ。ケツの毛まで毟り取られるぞ。あと、こいつは意外と、部下や後輩に対しての面倒見がいい。誰かに何かを教えたり、伝えたりする事が好きなんだな。
物を教える時も噛み砕きながら、順序立てて説明できるし、自己犠牲を厭わないから部下からの信頼は厚かったようだぞ」
「厚かった? ってどういう意味ですか?先輩」
「いやな、こいつは最近リストラに合ってるんだよ」
「え!? ……若いのにかわいそう……」
「そうだなサク。お前も気を付けないとな?
まぁ、元からブラックな職場環境で、会社の経営自体 もかなり悪化してきていた所の会社都合による退職って奴だな」
「じゃあ仕事ができないんですか?」
「お前さっきの話聞いてたか? 同僚や部下からの信頼は厚かったんだよ。
ただな、こいつは元々の性格上、発言に歯に衣を着せない事が多い。決して空気が読めないわけではないんだが、オブラートに包んだ物言いをして自分の意思が濁って相手に伝わる事を嫌うんだ。
部下や年下なら全く気にならない物言いが、上からするとカチンとする発言になってしまう。よく上司ともぶつかっていたみたいだな。
さっきも言ったように戸井は長いことpacchimoから離れていた。この時に……いやその前からか。ネット創成期の頃から戸井は電子の世界の人間と付き合う機会が多かった。一時期は、リアルの友達よりネット上での友達の方が多かった事もあったようだ。
昔はスカイプなんていう気の利いた物もなかったし、会話は全て『チャット』だったんだよ。直接の会話と文章での会話。自然とストレートな、わかりやすい物言いも多くなるだろうな。
最近になって付き合いが戻ってきた関係上、pacchimoメンバーもこいつの特徴を全て知っているわけではない。前回のデータもないので、新人達はどのように動くか、俺自身も予測が全くつかん。
今回は、戸井 を初めとした新人達が、ゲームを面白くしてくれる……そんな気がしているよ。
さて、これで全員終わったわけだが何か気になる事はあるか?」
「……秋山先輩……これ…」
「ん? なんだ?
!!!!
ヤマ……お前仕事早過ぎるな、全員分ステータス付きで紹介とか、ヤバイ見やすいなコレ」
「何すか、何すか? 僕にも見せて下さいよ」
「今俺が見てんだよ! あとでデータとしてLineしてやるから、あっち行け、シッッ、シッッ!」
♫ティンコン♫
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