人物紹介 其の一
~~政府某会議室にて~~
コンッコンッ
「あいてるぞ」
「失礼します、秋山先輩」
「 どうした桜庭?」
「いえ、そろそろ時間かと思いまして……」
「ん?もうそんな時間か……って、桜庭だけか? ヤマはどうした?」
「そろそろ来るかと…」
コンッコンッ、ガチャ
「……失礼します……よろしく……お願します」
「まったく! 相変わらず暗い奴だな、まぁいい、じゃあ始めるか」
「え? 先輩、この3人だけでいいんですか?」
「問題ない。研究所にはデータを送るだけで全員が把握するだろうからな。ちゃんと記録しとけよ、ヤマぁ!」
「……かしこまりました」
「ふんっ、よし。ではこれからpacchimo D計画の説明を始める!!
まず初めに今回の目的だが、これはこないだの総会で説明された通りだから割愛する。
今回の説明は各個人のデータについてだ。」
「各個人ですか? 要ります? そのデータ?」
「アフォかお前! お前はpacchimoの何を知ってんだ?
だいたい、ちゃんと全員の事を把握しとかないから『前回』みたいにいいようにやられるんだよ!
今回はお前とpacchimoが直接対する事だってあるかもしれないんだぞ!?」
「すいません、すいません。軽はずみでした、続けて下さい」
「ったくお前は……。うぉほん!では気を取り直して始めるとする!
順不同でいくからな、後で整理しとけよヤマ!」
「……かしこまりました」
「まずは一人目。い っしーこと石塚。
pacchimoヤング組のリーダーとも言える男だ。
運動能力は高く、他人への気配りもできる。頭も決して悪くはない。家具職人であり、一つの事を追求しようとする心構えももちろんある」
「いやいやいや……待って下さいよ。そんな凄かったんですか? 石塚君って……完璧に近いじゃないですか?」
「最後まで話しを聞け!! 完璧な奴などいない!!
むしろ本人は自分の事を穴だらけだと思ってる。
何事にも興味を持ち、色々な事に手を出す。これこそこいつの『穴』だな。
まぁ……自分でも自覚してるみたいだがな。
楽しい事があると、どうしてもそっちを優先させてし まう、といった感じか。
あとは性格が優しすぎる。恐らく今回はそれも仇になるだろう。
物事 の最終判断を下すまでに、かなり時間を要するはずだ!
だが、全体的なバランスで言ったらかなり上位に食い込むから、油断はするなよ!」
「なんか最初から強そうだな……」
「桜庭……お前、pacchimoと会ってしまったら逃げた方がいいわ。
pacchimoにはクセの強いのがゴロゴロいるぞ。石塚はまだバランス取れてるしかわいいほうだ……」
「はぁー……。わっ、わかりましたぁぁ」
「じゃあ次行くからな。続いてはてっちゃんこと岩……」
「早くないすかぁ!!??」
「桜庭君、ちょっと黙ろうか!」
「だって、岩間君の紹介とか、普通最後のほうじゃ……」
「桜庭君、ちょっと黙ろうか!!!!」
「いやだって、完全にpacchimoのブレー ンじゃないすか! 中心人物の一人ですよ!」
「桜庭君、私の説明まで取るかね??
あのな……最初に言っただろうが、順不同だって!
いちいち入ってくんな話に。長くなるわっ!」
「すんません」
「全く……まあ気持ちがわからんでもないがな。
岩間……いわま……もちろん今桜庭が言ったようにチームのブレーンでもあり、一番敵にしてはいけない人物の一人だ。
理論的に物事を考え、常に自分の無理のない範囲で動く。保守的……だと思われる……。
身体能力はその自重故にかなり低いが、スキューバならライセンスも持っている。
まぁドラムをやっているし、運動感覚自体は悪くないんだろう……うん……」
「どうして、 そんなに悩ましい感じなんすか?」
「うーん……最近思うんだが、岩間の思考回路ってのは、本当に保守的なのか?」
「何言ってんすか先輩! 『前回のゲーム』だって常に【負けない戦い】をしていたし、本人だって公言してたりするじゃないですか!
麻雀の戦い方とか見ててもすぐわかりますよ! あのつまらない戦い方!! 絶対一緒にやりたくない!!」
「まぁ……な。ただ俺にはどうも信じ難い。というか本人も自覚してないかもしれんが、実は奴の思考回路は冒険的なんじゃないか?
冒険的という言葉が適切かはわからん、攻撃的、あるいは好奇心旺盛、とにかく少し変なんだよ」
「変?」
「うむ。自分が興味を持った事に対しては、リスクを度外視して動く事が多いんだが、その境界線がどうにも掴めん」
「例えば?」
「数年前、pacchimoで沖縄に行った記録が残ってる。そこで岩間が『執拗に米軍基地に行きたがった』っていう記事をこないだ読んだんだよ」
「それが何か?」
「いや……別にたいしたことではないかもしれんが、普通行きたがるか?
なんの興味があるんだ米軍基地に? 本当に興味本意だけだろ。
なんかトラブルがあってからでは旅行どこじゃなくなるんだぞ? 保守的?
なんかもうわからなくなってきたからいいか……」
「岩間君は保守的ですよ、職業だってほら、先を見据えての介護の仕事ですし」
「まーな……まぁ悩んでても仕方ないから次行くか!
続いては、五十嵐だ」
「あれ、五十嵐君はニックネームないんですか?」
「いや、あるにはあるんだが、あんまり呼ばれないしいいかなと。人によって、君付けされるか、さん付けされるかくらいだな。
五十嵐はpacchimoいちのプログラミングのスペシャリストだ。データの改竄をされないようにこっちのセキリュティしっかりやっとけ。
運動に関するデータはまるで入ってきてないな。こっちの方は特別視する必要はない。ただこの男はたまによくわからない発言が多いんだよ。
それが……非常に不気味だ。っていうか気持ち悪いんだよな……。
ま、それは置いとくか。
一番怖いのはやはりコンピューター・データ関連。
今回のD計画の要である『記憶銃』も回析されると非常に厄介だ。
できれば序盤に消えていただきたいものだ」
「はは、そんなすぐには出来っこないっすよ!」
「だから、その甘さが命取りになるといってるだろうが!」
「そうでした。すいません」
「次! うっちゃんこと内田。pacchimo古参の一人だな。運動 はからっきしだが、パン屋という職業柄、意外に足腰と腕は引き締まっていたりする。
こいつの一番の特徴はフットワークの軽さだな。とにかく自分が興味を持ったらどこでも行くし、ダメージなどあまり考えないで行動する。
短所でもあるかな。あとはこいつを四字熟語で表すなら、間違いなく「初志貫徹」
特に『口に出した事を無理矢理にでも実行』しようとする節があるな。
内田に関して一番気を付けないといけないのは、岩間を会わせてはいけない……という事だ」
「なぜですか?」
「こいつらは一人だと 何にも考えないが……二人揃うと異常な速さで物事を考え、色々な案を持ち出して実行しようとしてくる。これが非常に厄介だ。
あと、気になるのは異常な程の『記憶力』当の本人さえ忘れている、他人の詳細を色々と覚えてる。
あの時はこういう会話をしたとか、誰が何を食べただとか。まぁしょうもない記憶も多いがな……」
「それって今回のゲームだとすごく有利なんじゃ……」
「その通りだ。記憶力が良い。これは今回のゲームではタフネスがあるという事になるな。つまり内田はナチュラルな防弾チョッキを着ている事になる」
「ほぇー……ヤバイっすね内田君、大丈夫すか?」
「問題ない。すでに手は打ってある。内田は感情的なのも弱点なんだ。まぁいけるだろ!
って事で次ぃ! しまちゃんこと大嶋。
数少ないpacchimoの女性陣のうちの一人だな。
この後紹介する高橋の彼女でもある。
大嶋はpacchimoの中では、バカキャラで通っているようだが、応用力があったり、行動力があったり、実はその能力を隠してるのかもしれん。
pacchimoに多い「A型長男タイプ」の男の顔を立てる振る舞いをナチュラルに行っているように見えるな。
論理的な思考をするタイプではないが、その分直観力が働くほうだな。女性的というか。
最近同棲を初めてメキメキ女子力もあがっているらしい。まぁ今回の勝負には関係ないがな。リア充爆発しろ」
「pacchimoは行動的な人が多いすね。リア充爆発しろ」
「大嶋のは行動力ってのは……他のメンバーとはちょっとだけ違うんだ。なんと いうか、さっき話に出た岩間の沖縄話あるだろ?あれに似てる。
要は他人がブレーキかけるところを平気でアクセル踏むような感じか。『日本人的ではない』言った方がしっくりくるかな。
運動能力、思考能力に関してはそこまで気を付けるところはないし、ある程度泳がせておいても平気だろ」
「わかりました」
「じゃあ次いくぞ。かわしーこと川島。
女メンツが続くな。
彼女は……運動能力が非常に優れている。男を入れてもpacchimo上位に食い込む。
もちろん行動的でフットワークの軽さも魅力のひとつだな。あと、とにかく空気が読めるな。
最近流行りのオタサーの姫ってあるだろ。あれのpacchimo版だな」
「で、でたー(笑)欠点がない!パート2!!」
「欠点 がない?? ふっふっふ……見てろ。今回は面白い物をみせてやるから。
それはそうと川島はこの後紹介する柘植の元恋人でもある。なにか展開があれば面白いんだがな」
「じゃあそういう風に配置しますか?」
「いや、大丈夫だ。望む望まないに関わらず、二人が出会うならばそれは因果だ。こちらが何かする必要はない」
「はぁー。そうですか。因果ね。わかりました。じゃあ次お願いします」
「次は……佐々木か。
きっぺこと佐々木。pacchimoでトップ3に入る運動能力。というか間違いなくNo1だ。
瞬発力も持久力もある。スポーツはなんでもこなせるな。音楽に対するセンス・努力もずば抜けている。
ゲームも強い。ゲームというより、基本勝負事には強い。
論理的な思考能力と直観力のバランスもいいな。
おしゃれ。いけめん!死ね」
「・・・・」
「どうしたサク??気分悪くなったか?」
「いや、なんですか、このラスボス感……」
「まぁ、さっきから言ってた欠点がないというのを体現したような男だな。
唯一弱点と呼べるかわからんが、こいつはやる気が基本的にない。無いと言うと語弊があるか、スイッチをいれるまでに時間がかかるんだ。
自分が納得できない事にはその能力を発揮しない。 『意に沿わない説得には決して応じない』って奴だな。どこの蟻の王だよ。
だから潰すなら『佐々木が本気を出す前』これは絶対だ。そうでもしないとこちらの被害がどれ程になるかわからんぞ」
「……秋山さん…… 例の……人達は……また雇用するんですか……?」
「ん?おぉヤマぁ、やっと口を開いたか。お前ミスト◯ーンか?雇用?あぁ、あれか。
おう。今回もちゃんと使うぞ。手配しといてくれ」
「……わかりました」
「ん? 先輩なんですか?ソレ?」
「サクぅ、お前こないだの会議寝てたのか?今回の計画は自殺防止委員の初の実験的施工も絡んでるんだぞ」
「????」
「いや……だからな? 会社をリストラされた、未来無い親父とか、まだ年いってないのに物凄い借金してるアホとか。
そういうのを特定の条件で雇用してなんとか役立てようとしているんだよ」
「あぁー……あぁー……ありましたね?ソンなの」
「お前なぁ……ったく、今回はきっ ちり聞いとけよ……じゃあここまで駆け足で来たし、ちと一回休憩挟むか。15分後に再開する」