水野 実花
「っ、はぁ……チッ、そこまで追ってきてるのね…」
「水野!夏樹が限界だ!一旦止まってくれ!」
「はぁっ?!あんた、何言ってるのよ!止まったら死ぬわよ!!」
「………ごめんな」
二人分の足音が止まる。振り返ると倒れこんだ夏樹と夏樹を抱えて座っている夏帆がいた。大人たちはすぐそこまで来ているのに!
「夏帆っ!なにやってん」「水野さん」
立ち止まった私の手を彩都が掴む
「行きましょう」
「でもっ!」
「夏帆さんは夏樹さんと死ぬって決めたんですよ。止めないであげてください」
「っ、夏樹!夏帆!」
「…早く行け…行ってくれよ!!」
ガタンガタン、と大人たちがドアを揺らしはじめた。夏樹を見捨てれば、夏帆は助かる。なのに…なんで…
「…俺、夏樹が好きだったんだ。姉だったとしても…好きだったんだ」
「!」
「…頼むから、二人にさせてくれ。水野、お前には感謝してる。だから…生き残ってくれ」
「………水野班!」
「「「「「はいっ!」」」」」
「このまま走れぇっ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
先頭に立って走りだす。最後に一度夏樹と夏帆を振り返ると…
「姉さん…ごめんな。ダメな弟で」
「なつ、ほ、?」
「…目ぇ閉じろ」
バン!と扉が開けられた。機関銃をかまえた大人4人が夏帆、夏樹を目ざとく見つけ撃つ
水っぽい音が響き血と肉片が飛び散る。角を曲がると一方通行だったので目を少し閉じる
これでも祈りのつもりだ。この世界ではすぐに人が死んでいくので墓なんか作ってる暇はない。寧ろ墓を作ってる間に自分が死ぬ。文字通り、墓穴を掘る行為だ
ああ、なんでこんな事になったんだ。誰が…こんな地獄を作ったんだ。答えは……でない