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目覚め

 魔力封じの腕輪が外され、久しぶりに強制的に魔力が外に放出される感覚がなくなる。

 よしよし、これで早速行えるぜ。


 軽く腕を振って自由になった事を確認し、いざ取り掛かる。


「今から俺の魔力でエリーを包むから、ちょっと辛いかもしれないけど我慢してくれ」


「うん! 頑張る!」


 満面の笑みで頷いてくれるエリー。いやー、全幅の信頼を得てる感じだな。

 ならば、その信頼に応えるまでよ。

 若干久しぶりに魔力を開放する事に高揚する自分に気付きつつ、失敗しないよう頭の中で言い聞かせる。


「おい待て、何をするつもりだ!」


 と、その最中でアリエッタに怒鳴られ、何故怒鳴られたか分からない俺は振り返って答える。


「いや、だからエリーの今の状態を治そうとしてるんだが」


 素直に答えたと言うのに眉をひそめる、ってか睨みつけてくるアリエッタ。

 そして、噛み付くように言葉を放つ。


「それのどこがだ! 可視化するほどの魔力はなるほど確かに凄いだろう。

 が、まさかそれでその子を包むつもりか?」


「ああ、これでこの子を包む訳ねーじゃん」


 俺の言葉を聞いてあからさまに安堵するように息を吐くアリエッタ。

 なるほど、何にも知らないんだな。

 一気に己の中に留めている魔力を放出しつつ、霧散しないように固定する。


「あんなのじゃなく、これでエリーを包むんだよ」


 目を見開いて絶句しているアリエッタ。ってか、あんたランクⅥだろ? 別にこんなの珍しいもんでもないと思うがね。

 さて、そんじゃぁちょちょっとやっちまいますかね。


「お兄ちゃん、綺麗」


「おう、ありがとうな。

 さ、もうすぐその状態治してやるからな」


 魔力を全身に固定したままエリーを抱き抱える。続いてその小さな体を魔力で包む。

 抱き上げられて笑顔になった顔がすぐ苦悶の表情へ変わる。

 予定通りとは言え胸が痛む。とは言え、これ以上出力抑えちゃもっと時間掛かっちまうからな。

 でも、子供だからそこまで長い時間は掛からないと思うのだがな。


 多少は時間が掛かるのは既に予想出来ていたので、少しでも気が和らぐように頭を撫でてやる。

 辛いだろうに、少しくらい弱音を吐くかなと思ったのだけど、エリーは撫でられると俺に対して笑みを見せた。


「……めろ……」


 もどかしいと言うのに、何やら声が聞こえそちらを見れば、下を向いてブツブツ呟くアリエッタの姿が。

 おいおい、今エリーが頑張ってるんだ。頼むから邪魔せずさっきまでのように大人しくしてくれ。


「止めろ! その子を殺す気か!!」


 うわっ、ついに怒鳴り出しやがった。ブルブルと全身が震えるほどの怒りらしいが、さっぱり原因が分からない俺には対処しようもない。

 と、胸の中のエリーがだらりと脱力した事に気付く。

 よし、ようやくか。


「おい! 聞いてるのか! その子を放せ!」


 喚き散らすアリエッタに、さてどうしたものかと思っていると、胸の中のエリーが俺に囁いてくる。


「お兄ちゃん……な……にか……変……」


「おー、それが良くなってきている証拠だ。

 なーに、俺を信じろ」


 顔色を見れば、若干頬が朱色に染まり経過が順調なのがうかがい知れる。

 瞳の色は……まだエルフと同じ青か。じゃぁもう少しかかるかな。


「おい! 聞いてるのか!」


「あーもう! 邪魔すんなお前! 俺の行動見るっつったんなら言葉に責任もって最後まで見てろ!」


 エリーに気を割きたいのに邪魔ばかりするバカ女に怒鳴る。

 息を飲んで黙ったのを確認すると、すぐにエリーへと視線を戻す。


「ごめん、耳元でうるさかったか?」


「ううん、大丈夫……けど、……どうしよう、な、何か。何か来るよ。

 こ、怖いよ」


 首をゆるゆると横に振った後、震えながら俺に抱きつくエリー。

 この様子なら後一息ってところだな。

 抱きしめ返しつつ、その時が来るのを待つ。




 それは、以前出会った白髪のエルフにやった時と同じく唐突にやって来た。


 一気にエリーの中から魔力が吹き出し、それが周りに飛ばないように俺の魔力で干渉して抑える。


「お、お兄ちゃん! わ、私どうしちゃったの?」


 突然自分の身に起きた出来事に動揺するエリー。

 さて、ここからが重要だからな。


「エリー、よく聞いてくれ。

 今お前の自分を守る為に作られた蓋を無理矢理壊したんだ。

 だから、この吹き出る魔力を何とかしないといけない。

 このままだと魔力が枯渇するまで全部外に出ちまうからな」


 俺の言葉に目をパチクリさせるエリー。子供ならではだろう、あいつは真っ青になったからな。

 とは言え、俺がこうやって干渉している限り全く問題ないけどな。

 問題あるとすれば、出来れば少しでも早く魔力の扱い覚えてくれるとありがたいけどな。あいつは3日3晩も掛けやがって、正直眠くて仕方なったのを思い出す。


「まぁ、今後相手の魔力を吸うも吸わないも自分でコントロール出来るようになったって事だ」


 なるべく分かりやすいよう簡単に説明すると、理解が及んだのか喜色が浮かぶ。


「それじゃぁ、もう誰も辛い思いさせなくて済むの?」


「ああ、勿論だ。

 でも、このままだとエリーがキツくなっちゃうから俺の真似をするんだ」


 言いながら魔力を循環させる。

 先ずはこれが出来なきゃ話にならないからな。


「うん、分かった!」


 元気よく返事して、早速魔力を循環させるエリー……え!?

 言われてすぐ出来るものなのか? いや、よく考えればあいつが底抜けに不器用なだけかもしれない。

 何せ、魔導の申し子と言われるエルフの癖して魔力循環させるのに数時間もかけやがったからな。

 ともかく、これは案外すぐ終わってしまうかもしれないな。


「そうそう、ばっちりだ。

 で、次はその魔力を自分の中にとどめてみてくれ」


「こう?」


 ……、うん、今度あいつに会った時は何かしら嫌がらせしよう。今決めた。

 ってか、これはエリーが凄いだけかもしれないけど、方や一瞬で出来た事だ。苦労の差が段違いだし、そのくらい許されるよな。うん、許される。俺が今決めた。

 そうやって俺が内心で決意している僅かな時間のうちに、体内魔力循環を洗礼させていくエリー。


「よし、完璧だな。

 ほら、俺の魔力なくなっても全然平気だろ?」


 もう大丈夫だと確信を持ちながら魔力を自分の中に再び抑えると、そこに問題なく笑顔を見せるエリーの姿を確認する。

 ははは、あいつは3度も失敗しやがったからな。あまりの差に失笑してしまったわ。


「んー、平気じゃないよ!」


 と、俺の目から見て全く問題ないのに、笑みを消して不満そうに言うエリー。

 って、平気じゃないってどういう事だ!?

 凄まじく焦りつつエリーに聞く。


「平気じゃないって、ど言う風に?」


「だってー、お兄ちゃんの魔力暖かったのに、なくなったら寂しいもん」


 拗ねるように言うエリー。って、俺の魔力が暖かい? そんな事言った誰も奴いな……あー、1人居たか。

 って、どっちにしろ訳が分からんな。

 あれか、互いの魔力の相性が良かったとか。まぁそんなもんだろう。

 ともかく、ちゃんと本来の状態になれたようなので頭を撫でる。


「そっか。じゃぁまた包んでやるよ」


「ほんと? やったぁ!」


 嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねて言うエリー。

 こんなに喜んでくれるのなら、別に疲れもしないんだし魔力で包んで上げるのもやぶさかではないな。


 用事は終わったとエリーを抱き抱え、満足げに今まで意図して意識から外していたアリエッタを見る。

 ……え? ど、どうしたんだ?


「お、おい。どうしたんだ?」


 動揺したまま思考が口に出る。

 いや、本当に意味が分からない。ってか、いつからその格好しているんだ?

 俺の視線の先に、平伏しているアリエッタの姿があった。

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