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夜が明けて

「がははは、俺様はもうすぐⅣに上がる。つまりⅢ相手じゃ連戦連勝って訳だ。

 初戦なのに相手が悪かったな、兄ちゃんよぉ」


 人を探していたら次戦の相手が貼り出されている広場でハゲ頭の巨漢にそう告げられ、身のこなしや気あたりからなるほど外では冒険者ギルドランクBの上位くらいの力かと推測する。

 確かギルドランクCからここのランクからスタートって話だったし。つまり闘技ランクⅢってのはおおよそギルドランクC~Bってとこか。

 なんだ、無茶なランクに押し込まれたかと思ったら、別にそうでもなかったか。


「あぁ、それはついてないな。まぁよろしく」


 そう返せば、俺様は例え奴隷闘士相手でも殺しまではしないから安心しろよと言って去って行く男。……あれ? なんかおかしな言い回しをするなとは思っていたが、あいつ何か重大な勘違いしてないか?

 あっ、そうか、闘技場にこもってりゃ幾つかの本当に事実の噂は嘘だって思ってんだろうな。何故か悪名の方はすぐ信用する癖に、高い実力持ってないと出来ない事実に対しては信用しない、もしくは人の手柄を取っただのなんだのうがった見方しかしないんだからな。

 ただ、それ以前に確かに気も魔力もある程度抑えている上魔力封じの腕輪までされているが、それでも意識して隠してないんだし気付こうぜとしか思わない。外で様々な危険と隣り合わせになる冒険者と、闘技場がほぼ世界の全てとなりやすい闘士とじゃ危機管理能力に差が出てるって訳か? 普通ギルドランクCでもベテランなら気が付くし、感の良い奴はもっとランクが低くても気付くからな。


 あぁ、そうか、同レベル帯の相手とばかり戦っているってのもあるんだろう。

 何にしろ、その程度の輩がこのランクの上位って訳か。中には単に勝利数が足りていない強者もいるかもしれないが、問題なく次のランクまで勝ち進めそうだな。


 と、そこで元々の俺のギルドランクを思い出す。


「そっかぁ、CからDに落ちたって最近の事実を知ってりゃぁ格上の中に放り込まれたってのが周りからの認識かな」


 つまり、それでおおよその判断をしている奴も多いってことか。

 それが限りなく事実に近いのではと思えるほど、周りを見ても特に俺に注目している奴はいない。

 それに、俺もこいつは注目せねばと思う奴もいない。これに関しては偶々いないだけかもしれないが。とりあえず、今日は他に何よりも重大な案件があるんだ。さっさと執事服見つけないとなー。


 いやはや、朝来ますと言われたが昼になっても来ないんだもんな。

 折角エリーとシンディーと親睦を深めてたっていうのに。しばらくは大丈夫だからぐずるエリーをシンディーに後を任せて取り敢えずこうやって探しに出てみたが。

 うーむ、別の執事服に聞いても知らないようだし。どうしたもんかね。



 結局、もう少し歩き回り聞き込みもしたのだが、俺の次の相手のハゲに絡まれた以外イベントすらなく探索は終わるのだった。




「はぁ、殆ど行き違いだったのか」


 戻ってきてみれば執事服は俺が出て程なく部屋に来たようで、部屋にとどまっていた。

 彼は恐縮した様子で頭を下げてくる。


「朝伺うと言っていたのにすみません。

 上が判断するのに少し時間がかかってしまいました。だからと言う訳ではありませんが、ランクⅥのアリエッタ嬢付き添いの下1度だけ外しても良いと言う事です」


「なるほど、奴隷闘士の魔法封じの腕輪を外すなら、それなりの相手の付き添いが必須でその許可がを得るのに時間が掛かったって事か。

 まぁ納得したよ」


 俺の答えに安堵したように息を吐く執事服。

 いや、別に脱力したけど怒るような事じゃないって。流石に許可が降りなければ上に文句を言いに行ったかもしれないが、許可も出てる以上不満はない。

 部屋に戻るとともに遅いと言って抱きついてきた、現在も俺に抱かれているエリーに視線を合わせて告げる。


「今から問題が解決するからな。なーに、俺に任せとけ」


「うん、お兄ちゃんを信じる」


 おぉー、満面の笑みとか嬉しいねぇ。実に可愛らしい。

 さてさて、お兄ちゃん頑張っちゃうからねー!




 シンディーには部屋に残ってもらい、俺とエリーが連れてこられたのは、結界が張られたそこそこの大きさの部屋だった。

 執事服が言うには、100年ほど昔当時のトップレベルの闘士を監禁せばならず作られた部屋らしい。

 なるほど、確かに1つ1つはそこそこレベルの結界だが、何重もの結界がそれぞれに相乗効果を起こすように張られている為これを綺麗に破ろうとしたら俺じゃぁ無理だろう。

 しかも今は魔法封じの腕輪がある。それを付けたまま出ろと言われたら不可能だと断言できる。


「ほう、お前か。くだらぬ戯言をほざいたバカは」


 先に部屋の中にいたのは金髪青目に長い耳のエルフで、俺達が姿を現すに合わせその高めの声を響かせた。

 こいつがアリエッタか。うむ、髪や目に続き肌が透き通ったかのように白いのも、容姿が整っているのもまさにエルフらしいと言えるが、その身を包む雰囲気と特に胸のサイズは尋常じゃない。

 確かエルフは胸が非常に大きくなりにくいって言ってたし、事実俺が昔立ち寄った里では胸が実家の女性の平均以上に豊かな人物は居なかったと記憶している。

 はちきれんばかりに主張しているそれを見つつ、何事にも例外はあるのかと改めて思う。


「……やはり噂通りのクズか。実力の方も噂に違えぬようだが、クズに同胞を任せる訳にはいかん。

 その子をこちらに渡してもらおう」


 ガン見していたらそう言われてしまった。

 って、俺は馬鹿か。失礼にも程があるだろう。すぐに頭を下げる。


「すまない。以前エルフの里に立ち寄った事があったからぶっちゃけ全然違うなとジロジロ見てしまった。

 だからと言って許せる事ではないだろうが、せめてこの子の意思を聞いてやってくれないか?」


 頭を上げて相手の目を見れば、不快そうに細められたそれを緩めエリーへと向ける。


「だそうだが、本当の事を言っていいぞ。

 何があっても私が守ってやる」


 ……再び睨まなくてもいいじゃん。いや、まぁ、そのぉ……ごめんなさい。


「むー、お兄ちゃんの敵は私の敵だもん。嫌い!」


 俺の横に立っていたのだが、ぷいっとそっぽを向いて俺の後ろに隠れてしまう。

 あ、アリエッタの眉が情けないほど下がってしまった。

 そりゃぁショックだよなぁ。折角の善意なのに。まぁ、エリーも子供だからこそ表面上や雰囲気を重視してしまったのだろう。

 流石にこのままでは彼女の心意気が可哀想に思えてきたので、しゃがんで目線を合わせてエリーに口を開く。


「なぁエリー。このお姉ちゃんはエリーの事が心配だからあんな事言ったんだ。

 それに、先に俺が失礼な事しちゃったし、怒るのも仕方ないだろう?」


「失礼な事しちゃったの?」


「そうそう、親しくもない女性の胸を凝視するのはとても失礼なんだ。

 だからお姉ちゃんは俺に怒ったんだし、心配したんだよ」


「そうなんだ。でも私はお兄ちゃんに胸を見られてもいいからね!

 見る?」


「へっ? あ、いや、えっとー」


 あるぇー? なんか説得してた筈なのにおかしな方向に進んでねーか?

 内心焦りながら言葉を探す。


「あれだ、それだけ俺達は仲良しだもんな。

 でも、それより早く今の状態何とかしような」


「うん、仲良しだもんね! えへへへ。

 はーい」


 元気よく手を挙げて返事をしてくれたエリーの頭を撫でる。

 いやー、良かったー。なんとかなったわ。俺別に幼女の胸見たいとかそんな願望ないしな。マジ焦ったぜ。


 なんとかエリーを説得出来たので改めてアリエッタの方を向くと、腕を組んで何やら考えている模様。

 どうしたんだ?


「……わかった。ともかくお前の今からやる事を見てから判断するとしよう」


 しばらく閉じていた目を開いたアリエッタはそう口にした。

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