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死闘

 拳と拳が弾ける。無論、足や肘膝、頭突き等で楓のに攻撃したり、また楓の攻撃を迎撃したり。

 その1つ1つの攻撃が十二分に膨大な力が込められていて、ずっとニヤケが収まらない。


 久しぶりに感じる喜びと恐怖。実家を出た後何度味わえた事やら。

 実家ではほぼ毎日何度も味わっていたそれを殆ど味わえなくなって久しく、どこか懐かしく感じてしまう。


 色んな感情は渦巻くが、ふと楓を見れば体中を俺と楓の血で染めながら同じく凶暴な笑みを浮かべていた。

 ああ、逃げ出したい程恐ろしくて、心が震えるほど楽しいな。


 今のやり取りの言葉など蛇足でしかない。

 1つだけ不満があるとすれば、こんな戦いは長くは続かないと言う事だろう。

 だが、そんな些細なものより単純に全力を振るえる事と楓の気遣いに感じる喜びの方が比べるべくもなく圧倒的に大きい。


 ああ、本当いつまでもこうしていたいとすら思う。

 が、そうも言ってられない。さっさとケリを付ける為尚も1擊を重くしていく。

 それは自らの体をも破壊する諸刃の剣なのだが、同じように1擊に込める力を増して付き合ってくれる楓に感謝の念を抱く。



 ああ、本当に楽しかった。だが、終わりだ!


 自らの右腕が骨を残して弾けるのを感じながら、同時に楓の左腕を貫き更にそのまま胸のど真ん中を貫くのを感じた。


 盛大に口から血を吐き出し、魔力と気力の混合状態もすぐに解け一気に力が抜けていく。


「あーあ、負けちゃった……」


「いや、息の根残っているんだし俺の勝ちには違いないが十分だろ?」


 どこか満足そうに言う楓に、賞賛の意を込めてそう返す。


「むぅ、そうやってまた子供扱いするぅー。ゴホッゴホッ」


「そりゃぁまだお前子供じゃないか」


 強がるように言葉を紡ぎ続け、案の定咳き込む楓に半ば呆れながら告げる。

 まぁ、らしいと言えばらしいが。


「ふふん、でもこれ受けてくれたじゃない。ゴホッ。……はぁはぁ。正直ずっと一緒にいられるならどっちでも良いんだしね。

 はぁはぁ……あ、でも、勝つつもりだったし、ちゃんと私も殺す気でいたよ?」


「十分伝わってきてたから大丈夫だ。

 と言うか俺としても正直どっちでも良いって思いはあったし。

 って、そんな事はお前を治してから話すか。別に仕来りに従って本当に息の根止まるまで待つ必要もないだろう


「はぁはぁ……ゴホッ。……えー、女の子ゴホゴホっ……晴れ舞台なのに?」


 明らかに弱まっていく楓に苦笑いを浮かべる。


「ああ、俺が嫌だからな。それに、負けを認めなかった奴が多かったから出来た仕来りだしお前が負けを認めた以上必要ないって」


「あー、それもそガハッ。……はぁはぁ」


 もう答える事すら困難になってきた様なので、特に告げる事もせず腕を引き抜き魔力と気力を混合した物でそのまま包む。

 全く加減をしていないそれで包めば、あっと言う間に傷が塞がって行く楓。

 いやー、こんだけ回復力ある状態のはずなのに、よくここまでボロボロになるだけ戦ったな俺ら。

 片方がってんなら実家じゃぁよく見かけたけど、お互いにってのは今回が初じゃなかろうか?

 何せ、楓が口を開く前に完治してたくらいだからな。魔力と気力を消耗しまくって無茶苦茶しんどいけど。


「あうぅん」


 おっ、だいぶ進んだのか、悩ましげに声を漏らし始める楓。

 うん、マジでエロいな。血まみれなのはアレだけど、服あるかないかでかろうじて大事な部分を隠しているようなもんだし。いや、正確にはあんまし隠せてないけど。

 まぁ、俺も同じくらい見た目はボロボロなんだろうな。


「どうだ? なんかおかしなところないか?」


「滅茶苦茶……気持ちいいよぉ……」


 にやぁっと挑発するように言う楓。

 本当に負けん気が強いな。気持ちいいってのは事実かもしれないが、今の状態で俺の意思に逆らうなんてただただ苦しいだけだろうに。

 俺としちゃぁ首を振るか頷くか程度の反応を期待してたんだがな。

 それでもなお楓は言葉を紡いでいく。


「これで……これでやっとシン兄のモノになったんだね。

 私のモノに出来なかったのはちょっと悔しいけど……大事にしてね」


 ああ、きっとどうしても言いたかったのだろうな。何と言う精神力。

 嬉しくて俺も自然と笑みが浮かんできて、そのまま口を開いた。


「ああ、当然じゃないか。俺の奥さん」


 聞くやいなや目尻に涙を溜める楓。

 うん、なんか俺も感動してきたわ。


 と、丁度良い感じに混ざりきった感覚を受ける。

 よし、終わりだな。

 そう思って魔力と気力の放出を止めればあまりの気だるさにその場で崩れ落ちる。


「わわ、シン兄! 大丈夫?」


「あー、疲れたー」


 精根尽き果てたとはこの事だろう。これから逃げればならぬと言うのに情けない話だ。

 っと、それより気になる事があるぞ。


「そう言えば、皆は無事か?」


「んー? おお、凄い、満身創痍だけど結界守りきったみたいね。

 ミリアだっけ? 偉い偉い。正直見直したわ」


 体を動かせない為楓の姿を見れないのだが、多分本当に驚いているのだろう。

 俺もある程度被害が出てるかもと思っていたのでこれは予想外。ミリアの実力を上方修正しておかねばな……いずれ手合わせしようと思う程度位はありそうだな。


「あーもぅ! 殆ど2人で相殺した上での余波を防いだだけじゃない!

 しかもエリーちゃんが凄まじい働きしてくれたのよ。あんた達の戦い終わって疲れから寝ちゃったみたいだけど。

 悔しいけど私1人なら自分自身を守るので精一杯だったわよ」


「へー、流石にあの状態では旦那様の攻撃に私の攻撃を重ねるので精一杯だったから、気付かなかったわ。

 ああ、それでも十分すごいわよ貴方。勿論話を聞く限りじゃエリーちゃんの方が凄いっぽいわね。まるで私みたい」


 賑やかに言い合う2人に、よくそんな余力あるなぁと思う。

 まさか手抜きをしたわけじゃぁなかろうに、ほんと凄い。いや、俺も最後に楓に施していなければ立ってたろうけど、それでもこんなに元気に喋れたか自信はない。


「私みたいって、そりゃぁそうでしょうよ」


 呆れたミリアの声。

 ああ、多分楓はドヤ顔しているのだろうな。

 うん、多分ミリア勘違いしているだろうからちゃんと教えておかないと。

 魔力操作において俺は楓に1度として勝てた事はないし、エリーはその天才と同じレベルだって事を。

 俺も一緒にされたら困る。俺は魔力も気力も実家じゃぁ扱う能力は最低クラスだったからな。


 色々思うところはあったのだが、こうやって2人がのんきに話しているのなら別に危機的状況では無いと判断する。

 いや、命の危機とかは絶対有り得ないとは思うが、色々面倒くさい事態にはなる可能性はあるからな。


 うー、ダメだ、頭回らんしいい加減眠い。


 結局俺はそのまま後を放り投げ、闇に落ちていくのだった。

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