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出世

 なんだかんだ皆が落ち着くまで待って、ようやく自らの治療に入る。

 つっても気を利用して治すだけだから、お手軽なんだけどな。

 代わりに耐えるのに非常に苦労する程度の痛みがずっと襲ってくるけど。


「むぅ、便利なものだなぁ。私も身体強化のみじゃなくそう言う扱いも修練するべきか」


 綺麗に治っていく無理矢理塞いだ傷の数々を見ながらアリエッタが呟いてくる。


「やめとけって。言ってたと思うがこれやってる最中って激痛が走るんだぞ?

 常人なら気が狂うほどの。って待て待て、皆揃ってそんな心配そうな顔をするんじゃない」


「私はしてない!」


「あ、うん。ホーリンはしてないな。

 それは良いとして、別に俺は辛そうにしてる風に見えないだろう?」


「見える」


 即答するアリエッタ。


「見えるよお兄ちゃん。ほんの少し作り笑顔っぽいもん」


 心配そうに抱きついてくるエリー。


「同じく見えますねぇ」


 ファニーは心配そうに表情を歪めながら言葉を紡ぐ。


「私達を舐めてますか?」


 若干怒り気味のシンディー。


 自信満々に言った俺にそんな反応が返って来る。って、そんなに俺ポーカーフェイス下手なのか? 地味にショックなんだが。

 内心のショックを押し殺しつつ、気を取り直して再び口を開く。


「まぁ、あれだ、気が狂いそうには見えないだろう?」


 今度は異口同音で肯定の言葉が戻ってきたので、少しばかり胸を撫で下ろして続ける。


「別に俺はそれだけ使ってきているし慣れもあるからな。元々痛みに強いほうだし。

 勿論、痛いのが無くなった訳でも好きな訳でもないから安易に使うつもりはないが、どうせ治すなら完璧に治した方が良いだろうし。

 まぁ無茶はしないから安心してくれ」


 俺の言葉に素直に頷いてくれたり、不承不承頷く皆。

 ホーリンは戯言をとか言って蔑んだ目で見てきたけど……なんでそんな反応?

 いや、考えても分からない事は気にしない事にしよう。




 しばらく治す事に専念し、気付けば真夜中となっていたので流石に今日は休むことにする。

 うーん、本当はアレスのところに行きたかったのだが、仕方ない。

 あいつらも適当に休んでいるだろう? まぁ万が一起きてても1晩くらいなら大丈夫だろ。




「ずっと起きて待っていたのに、ずいぶん遅いご登場だね」


 結構不機嫌に出迎えられて、下僕って立場わかってるのかこいつと思わず思ってしまう。

 いや、まぁそう言う間柄になりたい訳じゃないから良いのだが。


「まっ、見ての通り傷の治療をしたんだがそれ相応に手間が掛かっちまってな。

 すまなかった」


 だから素直にこう言ったと言うのに、きょとんとするアレスと驚愕の表情を浮かべる女エルフ。

 おい、その反応はなんだよ?


「……僕は殺されても良いと思って言ったのだけど……君変わってるね」


 半ば呆然としながら言ってくるアレス。


「変わってるかは知らないが、折角出来た下僕を殺すかよ。

 これからお願いしなきゃならないし」


「お願い?」


 俺の言葉に益々不思議そうにするアレス。

 いや、このまま質問されても遅々として進まないから強引に話してしまおう。

 本当は情けなさ過ぎて嫌なのだが、背に腹は代えられん。


「ああ、実はあの決闘が俺がお前を殺したと勘違いされた所為でノーコンテストになったのは知ってるよな?

 で、入場料こそ変動はなかったものの、奴隷闘士だかって賭けの方ででた負債全額負担とやらでとんでもない借金を負わなきゃならなくなったって訳だ。

 だから、お金貸してくれ」


 一気に言い切った。情けなさ過ぎて涙が出そうだ。

 今朝セルリックから告げられた時、その額にここから皆を連れてここから逃げ出すか考えてしまったくらいだ。

 まぁ、下僕から財産を召し上げれば大丈夫かもしれませんねとか言われたから、泣く泣くこうやって本来はすぐに自由にする筈をお願いしている訳だが。

 何が悲しくて俺の方が下僕に借りを作って、その所為で解消できないってハメに陥らねばならぬのか。


「いや、構わないが……」


 面食らったように言いよどむアレス。


「すまん、恩に着るぜ。

 いや、本当は元々すぐに下僕契約解消しようと思ってたのだけど、それすら出来ないからな。

 ああ、他の闘士への牽制とかで俺も利用しただけから気にすんな。それと、別に大事なものまで売る必要はないから出来る範囲で構わないぞ」


 益々困惑を深めていくアレス。

 と言うか女エルフが静かだなぁと思ったら、可愛らしく口を半開きにして俺を見つめている。

 ……そんなに衝撃を受ける事話しているか?

 まぁいいや、混乱しすぎてあれ? それでいいのか? え? とか自分で自分に問いかけているアレスを現実に引き戻そう。


「それとだ、こっちの方の部屋の方が広いから俺達がこっちに引っ越してくるけど良いか?

 良かったな、アリエッタと会えるじゃねーか」


 ふと目に力が戻るアレス。ふーん、どんな思いを抱いているのかねぇ。

 女エルフも盗み見れば……ダメだこりゃ。全然現実に帰ってきてない。これはもう放っておこう。


「……ともかく、そちらの意見は分かった。

 これからよろしく頼む」


 真剣な表情で頭を下げてくるアレス。


「おう、まぁこちらこそよろしくな」


 そう返す俺。

 うん、全く下僕とのやり取りらしくないな。だがそれがいい。

 ってか、別に本当に下僕が欲しい訳じゃなく、単にインパクト重視してたらそれが1番だったってだけだからな。奴隷だと色々面倒くさい決まりとかあるし。


 そんなこんなで部屋が変わった訳だが。

 ただのだだっ広い広間に寝室しかなかった前の部屋と違い、流石ランクⅤだったアレスの部屋。大部屋のサイズこそ変わらないものの2つあるし、小部屋も6つもある。

 アレスと女エルフが増えた為1人1部屋を分け与えることは出来ないが、少なくともプライベートの場所を作ってあげる事は出来るだろう。

 これで部屋付き5人に下僕が1人とその付き人1人か。

 こうやって考えてみると、なんかだいぶ出世したなぁと思う。


 うん、このままとりあえず行けるとこまで頑張ってみるのも良いかもしれないな。

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