決着
アレスの装備はかなり良いものみたいで、エルフにとって最も馴染み深く魔力と抜群に相性の良い世界樹の樹と呼ばれる木の繊維を編みこんだ服に杖の上、魔力媒体には全ての鉱石の中で最高と言われているオリハルコンだった。
魔力特化のアダマンタイトの方が魔力のみに限れば増幅値は上なのだが、代わりに闘気とはそんなに相性が良くない上何より脆いからな。オリハルコンは鉱石としては珍しく闘気とすら相性いいし、何より壊れない事で有名だから、今みたいな近距離戦も想定しておくべき1対1の戦いではベストの選択と言えるだろう。
それだけの装備を整えているのなら慢心や油断を期待出来そうなものだけど、一切そう言う空気が見られない。
個人的にその姿勢に好感を抱くものの、状況は想定している中でもほぼ最悪に近い。
「悪いが全力で戦わせて貰うぞ。
安易に決闘を選んだ事を後悔するんだな」
自信満々のアレスに、そりゃそうだよなと思う。
正直ぼろ服に支給された鉄の剣のみで対応しろと言うなら、俺にだって無理だ。
闘気で底上げしても限度があるし、あの服魔力込めれば込めるほど強度上がるもんなぁ。
せめて他の防具なら良かったんだが、旧友の元白髪エルフが装備していた時はオリハルコンの剣ですらダメージを与えれなかったし。
「どうした? 答える余裕もないのか?
まぁ当然だな。このまま僕に無様に倒されるが良い!」
気分良さげに高笑いをするアレス。
正直少しイラっとしたからこのまま返事はしない。
つっても、流石に今回は選択肢がない……か。
はぁ、ならば気は進まないけどやるしかないだろうな。
後の事を考えれば憂鬱になってしまう事が目に見えていたので、目の前の事のみに集中力を高めて開始の合図を待つ。
「――それでは魔法の申し子のエルフの実力を垣間見るとしましょう!
始め!!」
ズドドンと凄まじい音爆裂音のようなものが数回会場中に響いたのだろう、一斉に静まり返る。
ちくしょう、全身がいてぇ。バラバラになっちまったかのようだ。
激痛を堪えながら前方を睨む。
「な、何が起こったのでしょう? 奴隷闘士が全身血まみれだぁぁぁあああああああ!!」
審判兼解説役の声が響き、同時に会場中が盛り上がる。
そんなに俺が血まみれで楽しいかい? ってかそう言うの見るの好きな奴らの方が遥かに多いからその通りなんだろうな。
いいけどよ。
そんな事より、俺の前方モクモクと砂煙が上がった壁を注視しておかねば。
正直アレスに攻撃されたら避けられるかも怪しいからな。
「そう言えば闘士アレスの姿が見えないぞ? まさかこれがエルフの秘技なのか?」
トンチンカンなセリフを吐く審判が、全く状況を理解していない事を知る。
まぁ、今のが見えたのなら審判なんて器に収まっている訳ないだろうからな。
と、徐々に砂埃が収まると壊れた壁の姿が現れる。
ふと視線を上げれば、そちらの方にいた観客達は皆キョロキョロと怯えたように辺りを見回している。
じゃない、目を離すな。くそ、痛みから集中力が乱れているっぽいな。やっぱりこれは慣れたり耐えたり出来るようにはなっても、なくなったり気にせずにいられたりするようなものじゃないな。
ともかく、お願いだから立ち上がってくれるなよ。
「あああああああああああああ!? どう言う事だ? 闘士アレスが破壊された壁にめり込んでいるぞぉぉぉおおおおお?」
思わずホッと息を吐く。
良かった、ありゃぁ間違いなく振りじゃなくて気絶してやがるな。
胸は上下しているから死んでなさそうだし、まぁ急いで治療しないと死にそうだけど。
んなら、俺もさっさと傷を治したいし急ぐかね。
「俺の、勝ちだぁぁぁぁあああああああああああ」
拳を振り上げて宣言すれば、アレスの姿に静まり返っていた会場が再びわき出す。
こうして、決闘は俺の勝利で終わりを告げた。
短くて申し訳ございませんでした。
次回更新時は頑張ります。




