決闘
いよいよやって来た決闘当日。どうやら付き人も強制で試合を観に行かねばならなかった。それで普段は観る事の出来ない試合を観れると言うことで、エリーのテンションは高い。
反面、シンディーは不安そうに時折俺を見てくる。色々知ってる事と、俺の戦いを観た事がないからたろう。
ファニーは俺の戦いを何度も観ていたお陰か、純粋に頑張って下さいと応援してくれている。
アリエッタは不安そうに加減を間違えて殺さないようにとか失礼な事を言ってきた。
ちゃんと加減するさと言ったのにそれでもまだ心配そうで、どんだけ信用無いんだよと思わず思ったものだ。と言うか、お前も俺の戦いを観たことがないのに、その心配の仕方はどうかと思うぞ。
もっとも、今朝起きた時からずーっと無言で睨みつけてプレッシャーをかけ続けて来るホーリンが1番タチが悪いのかもしれないが。
「会場へのお客様の入りは上々どころか、あまりに人が集まりすぎた為立ち見すら出来ないお客が声だけでもと周辺に集まったままと言うような状況です。
本当に物凄い人気ですね」
セルリックに状況を聞いたところ、そんな答えが返って来る。
「へー、純粋に俺かアレスの応援に加えて倒される事を期待している客も多そうだな。
いや、経緯とか考えると、俺が負けるのを楽しみに来ている客が1番多いと思って間違いない。そうだろ?」
「ええ、人気等の動向は大切ですのである程度は常に把握しておりますが、シンイチロウ様の考えで間違いはないでしょう。
賭けの倍率にも影響しているようですね。実際、一攫千金を狙う者以外殆どシンイチロウ様には賭けていないようで、確実と思う時以外賭けをなさらない堅実に賭ける方々でさえ、アレス様の方にほぼ賭けていらっしゃるようですからね」
つらつらと説明してくれているセルリックの言葉に頷いて聞いていたのだが、疑問を覚えてしまう。
「おい、なんで堅実に賭ける奴らまでアレスに賭けているんだ?
いくらなんでも1つしかランク違わない同士なのに、流石におかしくないか?」
「ああ、ご存知なかったのですね。
奴隷闘士から他の闘士の方に決闘を挑まれる場合は、その魔力封じの腕輪を付けたまま戦う事になります。
逆の場合でしたら勿論外すのですが、そう言う決まりですので」
いや、おい。そう言う事は早く言おうぜ!
くっそー、Ⅳから腕輪を外せるんだし何が起ころうと大丈夫だとか思っていたけど、完全に予定外だ。
うーむ、アレスの試合の時も必要ないとシンディーの進言を退けて皆で和気あいあいと過ごしたのだけど、失敗したかも。
「あー。まぁ聞かなかった俺が悪いってここじゃぁなるんだろ?
奴隷闘士だしな。ったく、だから向こうから来なかったってのもあるのか」
言った後溜息を吐き出す。
あくまで規則ですので悪しからずと言うセルリックはもう無視していいだろ。
さて、確実にこうなる事を知っていたのにアドバイスどころか教える事すら怠ったアリエッタに事情を聞かねばな。
ジトーっと半目で見れば、何故か不思議そうに首を傾げられた。
「そんなに見つめてどうかしたの?」
「いや、どうかしたの? じゃなくてなんで教えてくれなかったんだ?」
不思議そうに聞いてきたので、内心若干呆れながら問いかける。
と、何を言われてるのか一瞬理解出来なかったようにキョトンとされてしまう。ほどなくぽんと手を叩いて言わんとするところが通じたようだが。
「なるほど、魔力封じの腕輪の事か!
……で、それがなんの問題なんだ?」
いやいやいやいや、なんでまた不思議そうに聞く?
相当重要な事じゃないか! 他の皆だって顔色が……変わっているのシンディーとファニーだけだね。エリーはよく分かってないのか無邪気にじゃれてきてるし、ホーリンは変化なしだし。
いや、まぁこれは仕方ないか。
「も、問題でしょう。魔力封じの腕輪を付けているのですよ!」
「そうですよ、魔法が使えないだけで全然アドバンテージが違うのは闘いの事が一切分からない私でも分かりますよ。
なんでアリエッタさんはそんな問題なさそうに言うんですか?」
俺が何か言うより早くシンディーとファニーがアリエッタに詰め寄る。
その迫力に目を見開くものの、ニヤリと楽しそうに口を歪めるアリエッタ。
「いや、ご主人なら魔力封じの腕輪なんて全く問題ないよ。
と言うか、なんでご主人もそんな深刻そうにしているの?」
アリエッタの言葉の意味がさっぱり分からなくて、俺は首を傾げてしまうしシンディーとファニーは更に憤りを顕にする。
なんか良くなさそうな雰囲気なので、アリエッタの問いかけには一瞬息を飲んだ2人よりも先に俺が答える。
「いや、だって壊したら弁償出来ないぞ?
これ普通に高いだろ?」
俺のその言葉を聞いて首を傾げるファニーとシンディー。
アリエッタは目と口をこれ以上ないくらいに開いた。
「……まさかそう言う……え? じゃぁご主人はそのままで戦うつもりなのか?」
「いや、だから今知ったからどうしようかと、うわっ」
答えている最中にアリエッタに両肩を強く掴まれてしまう。
「ご、ご主人! 悪い事は言わないから。違う、お願いだからその考えは捨ててくれ!」
「いや、無理だろ? これ以上借金増やせねーって」
俺の問いに絶望したかのように表情を変えるアリエッタ。
うーむ、なんか色々意思の疎通が取れてないようだけど、残念ながら時間だ。
結局そのままセルリックに時間ですと告げられ、問答無用で会場へと進ませられる。
いや、そりゃぁ拒否しようと思えば出来るけど、リスクを考えれば出来ないしな。
まっ、でもやりようはなくはないし。とりあえずやるっきゃないか。




