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決闘相手

 その後、ホーリンの親父さんや流派の者から何かあるかと思ったが、そんな事もなく。ただ、セルリックがホーリンの無事を確認しに来たので伝言だけは頼んでおいた。

 まぁ、綺麗に元通りになっているホーリンに驚愕してたがな。とは言え、俺を見るとまだ怯えを隠しきれないホーリンの姿も見て何やら頷いてたけど……あれ勝手な妄想してるのだろうな。アリエッタに流石ですねとか言ってたし。

 言われてすぐ俺を見たアリエッタに首を横に振って答え、ちゃんと俺の意思を読み取ってくれたアリエッタは自分が何とかしたように伝えてくれたけど。

 うん、他の誰にも危険が行くのは不味いし、少しでも不安要素は取り除いとかないとな。少なくとも恩人やその近くに居る人には手は出さないだろう。

 出すなら俺が1人になった時……エリーも連れ出すのはしばらく控えないとな。


 1人で移動する日が増えてだいぶ経ち、気付けばもうすぐランクⅣへと昇格出来る事になった。

 ホーリン以来女性の相手は当たった事がない。まぁ上も人気頭を潰されたのが問題となったらしく。貴方にはしばらく女性の対戦者を当てる事はありませんとセルリック越しに言われたからな。

 こちらの望みとも一致していたから、願ったり叶ったりだったけど。


「しっかし、早くランクⅣに上がりたいぜ。お金がなぁ」


 そう、結局ホーリンも養わなければならないわけで、稼ぎが少ない甲斐性なしな俺は物凄い肩身の思いをしている。

 主にホーリンにグチグチと言われているのだけど、他の皆はお気にされないで下さい。と言うか、もし捨てられた方が恨みます。とか凄いとしか表現しようのない表情で迫って来たからな。

 うん、手に入れた女性を本当に嫌がっていたりやむを得ない事情でもなければ、俺から手放す事はないよ。

 へへん、だいぶ素敵なハーレムを築いているのではなかろうか?


 なんて色々考え事をしていたのが悪かったのか、走って来た男とぶつかりそうになり、勿論難なく避けたのだが足を掛けてしまう。

 す、すまねぇ、本気でわざとじゃないんだ。なんかついやっちまったぜ。


「……いやぁ、まさかこかされるとは思わなかったなぁ」


 立ち上がりながら言う美少年。いや、耳が長いからエルフか。

 って事は、年齢は不明だな。


「いや、その。本当にすまない。わざとじゃないんだ。考え事してたらつい」


「君は考え事してたら人の足を払って転ばすのか?

 確かにわざと体当たりしにいった……あ」


「うん、良かった転ばしといて。

 で、何でわざと体当たりしてきたんだ?」


 こいつ興奮しすぎ。自分から犯行しましたって言うなんて間抜けもすぎるぞ。

 まぁ、体当たりしに行く程度ならバレても咎められないだろうから、なんて油断もどこかにあったのだろうけどね。

 案の定開き直ったかのように胸を張るエルフ男……いや、先ずはその顔に付いたホコリ何とかしないか? 滑稽でしかないから。服だけ直すだけじゃ甘いぜ。


「そりゃぁ君が気に食わないからさ!

 体術は得意じゃないから不覚を取ったが、エルフは本来魔術が専門。勿論僕も魔術使いさ!

 だから、ランクⅤに上がったら覚悟しておきたまえ!」


「ああ、了解、だいぶ先だろうけどな」


 ビシッと間抜けに決めていた顔も、俺の答えに不思議そうに首を傾げる。

 ……いや、男が首を傾げても気持ち悪いだけだぜ? いくらどんなに見目が整っていようが俺にそんな趣味はないし。


「いや、君もうすぐランク上がるだろ?」


「そう、やっとこさⅣに上がるんだが。それが何か?」


 なんとかの叫びのごとく表情豊かに変わるエルフ。ってかこいつ面白いな。なんだろう、友達になれそうな気がしてきた。


「ああああああ。い、今のは忘れてくれたまえ! くそぅ、アリエッタ嬢を取り返すチャンスだったのに」


「おいこら全部口から出てるぞお前」


 やばい、本気で愉快な奴だ。うん、嫌いになれないな。

 あー、不機嫌な表情作るの大変になってきたぞ。


「くっそぉ、掟で禁止されてなければすぐにでもこちらから決闘を申し込んだと言うのに」


「ほぅ、それじゃぁ俺から申し出ても受けれないのか?」


「いや、それは受けれるうわっ」


 言い終える前に剣を鞘に収まったまま投げつけてやる。

 うーむ、この決闘方式わりかし好きじゃないけど、まぁ初戦配給武器だしボロボロだし愛着もないからまだ良いかな。

 ってか、面白いからいいって事にしよう。


「これで受けれるだろ? まぁ楽しく戦おうぜ」


 ニヤッと笑って言ってやれば、ポカンとした後ニヤニヤと男エルフも笑い出す。


「ふはははは、貴様このアレス様の実力思い知るがいいわ!!」


 やばい、本当に面白いこいつ。うん、じゃぁ俺の欲求も決まったわ。


「オーケー。そんで何を掛ける?」


「僕はアリエッタ嬢の身柄の開放を欲求する」


「そんじゃぁお前が負けたら俺の下僕な」


「ははははは、何でもいいだろう、僕は貴様ごときには絶対負けない!」


 凄いなぁ、これが素か。楽しすぎる。やっぱバカ騒ぎ出来る悪友がいないと始まらないよな。

 実家にいた頃を思い出せる相手を見つけて、嫌でもテンションが上がってきている事を自覚する。


「はっ、実際戦って泣き言ほざかせてやるから楽しみにしときな」


 よしよし、俺も調子が乗ってきたぜ。


「はははは、今のうちに言っておくがいい」


 上機嫌に去って行くアレスに、同じく上機嫌で踵を返す俺。

 と、そこで周りの様子がおかしい事に……はっ、もしかして俺また性癖勘違いされている!?

 いやいやいやいや、そういう趣味は皆無だからな? ホーリンあそこまでボコボコにしたもの理由がちゃんとあってだし。

 うあああああああああ、一気にテンション下がっちまった。

 くそぅ。こうなりゃ今日の対戦相手で発散だ。ぶん殴ってやるから覚悟しとけよー!


 こうして今日も今日とて八つ当たりに闘技場へと向かうのだった。とほほほほ。




「アレスか、あれはあれで……ズレてはいるが良い奴だぞ」


 部屋に戻り、アリエッタに聞いてみればそんな答えが返って来る。

 うん、予測通り愛すべき馬鹿っぽい感じだな。人によってはうざく感じるかもしれないが、俺は許容範囲だ。


「お兄ちゃんなんか楽しそう」


「おー、何せそのアレスって奴と決闘する事になったからな。

 向こうの欲求はアリエッタの自由で、こっちは向こうの下僕化だ」


 俺の答えに集まる皆。って、素早いな。待て、何でホーリンも居る?


「ご主人様大丈夫なのですか? アレスさんはとてもお強いと聞いた事があります」


「ご主人様格好良いです、是非え? そうなんですかシンディさん?」


「お前は私が倒すんだ! 絶対負けるんじゃないぞ!」


「お兄ちゃん頑張って!」


「ご主人はそういう趣味があるのか? わ、私に手を出さないのもそういう趣味だからか?」


 おい、全員同時に喋るな訳が分からない。ファニーだって途中から混乱してるじゃないか。


「一気に言われても分かるかぁ! 取り敢えずアレスって奴には絶対勝つ。

 後アリエッタ。俺は女の子が大好きだからな。今後絶対間違うなよ!」


 アリエッタのみ良かったと安堵するものの、他の4人はやはり聞き取れてなかったようで不思議そうにしている。

 あ、ホーリンはこのゲスがぁとか呟いてるな……ぶっちゃけ好みの容姿してる君に呟かれるとダメージデカいんだぞ、仕方ないと分かっててもさ。


 とにかく、今度から男女問わず友人を作る時は気を付けようと思う。

 俺の恋愛対象はどこまで行っても女性だからな。まかり間違えて男に告白などされようものなら……消し飛ばしてやる。

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