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当たり前の反応

 エリーを背中に抱えて勢いよく宙返りをする。


「きゃー。あははははは。楽しいー」


 最近のお気に入りの行為をすれば、やはりあっと言う間に機嫌は良くなるものでケラケラと背中で楽しそうに笑っている。

 うむ、この勢いで見知らぬ子にすれば、よほど肝が据わっているかネジが外れでもしていないと泣き出すのが普通なのだが、この場合は信頼しきっているからだろう。そう思えば俺もやりがいを感じる。


「それっそれっ。次は3回転だー!」


 縦にくるくると3回回って着地し、そのまま廊下を駆ける。

 移動している闘士達は丁度良い障害物だし、俺も楽しむ要因になっているので問題なし。

 まぁ、廊下でやるのは初めてだから、なんか皆あんぐりと口を開けて俺達を見送ったりしてるけど……怒られたら考えれば良いよな。


 そんな訳で、外に出た俺に付いて来たエリーと遊んでいるのだが、どのくらいで戻ろうか思案する。

 体調的にはいつでも目を覚ませる程回復させたのだけど、果てさていつ目が覚める事やら。精神的な疲れまでは取り除けても、傷までは同じように取り除くのは不可能だからなぁ。無理矢理ぶっ壊して再構築するのは魔法であるけど、そんな糞みたいな事は流石にするわけもない。


「あはははは、お兄ちゃん、楽しいね」


 背中で事実嬉しそうに言うエリーにおうっと声を上げて答え、期待に応えるかと更にスピードを上げる。

 とは言え、勿論楽に制御出来る程度だけどな。流石にぶつかればただの迷惑行為だからな。いや、偶に眉をひそめる奴らもいるからほどほどにはするべきだろうな。

 うーん、どのくらい許されるのか分かればなぁ。まぁ今度セルリックにでも聞いてみるか。



 しばらくエリーと戯れた後、幸いな事と言うべきか、それともどのくらいまではやって良いか聞けなくて残念だったと言うべきか。何にしろ注意も受ける事なく自分の部屋の前へと戻ってくる。


「はぁー、楽しかった。お兄ちゃんまたさっきのしようね」


 結構色々移動したのがよほど楽しかったのか、肩車をされながら上機嫌に言ってくるエリー。

 別に俺は問題ないので気楽に答える事にする。


「おう、あのくらいならいつでもいいぞ」


「わーい、やったぁ」


 にこやかに戯れつつ、さぁ、どんな反応が返ってくるかと内心で覚悟を決める。


「さて、そんじゃぁ一緒にただいまを言おうな」


「うん!」


 元気の良い返事に顔を崩しつつ、ほんの少しばかり緊張しているのを自覚しつつエリーを下ろして扉を開ける。


「ただいまー」


 異口同音で告げるそれ、ぱぁっとファニーは表情を明るくし、シンディーも僅かに口元を綻ばせる、アリエッタは丁度後ろを向いていたので分からなかったが、皆いつもの反応をしてくれたようだ。

 青髪の子は丁度アリエッタで隠れている。


「あ、貴殿のご主人……」


 ヒョイっと身を乗り出し、アリエッタの影からお互いに顔を合わせる。

 その美しく明るかった顔が俺と目が合った瞬間一気に血の気が引き、全身を硬直させる。

 って、これはマズイ!


 直感を信じるがまま可能な限り素早く彼女の背後に回り込み、まだ開けっ放しのその口に右の人差し指と中指を強引に突っ込む。

 次の瞬間その両方に激痛が走り、同時になんとか間に合った事に気付いた。


「ふぅー、ふぅー、ふぅー、ふぅー。ああああああああああああ」


 何度か噛んでくるものの、俺の指が邪魔して舌を噛み切れないのだろう。その邪魔する何かを外す為に思い切り暴れ始める。

 ちっ、想定していたとは言えこの反応は胸に来るなぁ。自業自得だが。


「お、おい、落ち着け! ここにはもうお前をきゃぁっ」


 慌てて諌めようとしたアリエッタが蹴り飛ばされる。

 ああ、体が壊れても気付ない程暴れているのか。既にその振り回された両腕に何度も殴られているが、よく見れば拳から血が流れている。

 リミッター外しか。いや、意図して出来るかはまだ判別付かないが、錯乱の極みだとは簡単にうかがい知れる。

 これで魔力なり闘気を纏わせる程度には正気であったら、正直俺でも一瞬拘束を緩めてしまったかもしれない。


 彼女の為にも、勿論俺達の為にも力尽きて動きが緩慢になるまで耐え続ける。

 治療する方法はあるのだが、集中力もそれなりに欲求されるからな。最悪気絶させると言う方法もあるのだが、これ以上彼女を傷つけたくないと言う思いから躊躇してしまう。

 結果的にはどちかが彼女が傷つかないか分からないが、少なくとも無理矢理この暴れるのを止めされるのがどれほどのストレスとなるか考えれば答えが出る訳もなかった。


 プツリと糸が切れたように大人しくなる青髪の少女。

 それを確認するや皆に治療する旨を伝える。


「俺はこのまま彼女の治療に入る。

 多分それさえ終われば俺を見ても今のような事にはならない筈だから、お茶の準備とかしてくれると嬉しい。

 あ、後血を拭く布の準備とかね」


 さて、それじゃぁ心を落ち着かせて気で彼女を包もう。


「むっ、また闘気で包むのか?」


「……違う。正確には同じものだけど、気を極限まで鎮めれば別の効果も得れるんだ。

 ただ、この状態になると気を練る行為自体が恐ろしく難しくなるから、出来れば見守っててくれないか」


 質問に答えた俺に心得たように頷くアリエッタ。

 うん、戦いに身を置く者として興味を抱くのは普通だろうし、俺も実家でこの行為を見た時は今のアリエッタのように食い入るように観察したからな。

 実家でもこの気の扱い方は皆が出来るわけじゃないし、そもそもあまり必要とされてもなかったから知る機会自体が少ないのもあったから……うん、出来るように修行してて良かった。


 傷んだ精神を癒すこの方法は、物凄い効率も何もかもが悪い。

 いや、他に何も方法がないのに回復する手助けを出来るこの方法こそ尊いものなのかもしれない。


 あ、しまった。色々準備してとか言ったけど、この方法最低でも数刻は掛かるのだった。

 まぁ準備が済んだら1度中断して休憩兼ねて説明を皆にすればいいか。

 うん、最低でも彼女が次に目覚めるまではする予定だったし。今後も数ヶ月は最低でも見積もらなくちゃならないだろうかなら。

 いや、怯えるどころかこの世から逃げようとしたんだ、そんなもんじゃない程時間が掛かるかもしれない。彼女自身の精神力に大いに左右されるとは言え、最後まで手伝うのは勿論借りを返さないとな。

 本当に1番の良案は俺以外でこの行為が出来る人に預ける事かもしれないが……他に出来る人間を俺の地元以外で俺は知らない以上それは不可能に近いだろう。俺がここから出れればまだ違うかもしれないが……いや、俺の紹介の時点で苦痛は変わらないなら、目の前で胸に抱える物をぶつけれる相手がいた方がいいのかもしれない。

 回復してきたら、多分そう言う事も出来るだろう。殺される手前までなら全て甘んじて受けねばなぁ。


 考え事をしていたら、僅かに気が乱れ始めてきた事に気付き、無心になる為ただただ集中の極みへと目指す。

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