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お兄ちゃん・ご主人様の日常(※別視点)

 最近はアリエッタお姉ちゃんとよくお喋りしたり行動したりするようになったのだけど、お兄ちゃんを見るとシンディーお姉ちゃんやファニーお姉ちゃんと一緒に居る事が多い。

 なんかモヤモヤするから、抱っこをしてくれても思わずぷいっとそっぽを向いてしまうのだけど、ニコニコ微笑んで頭を撫でられちゃうと、あっと言う間に幸せな気持ちになっちゃう。


 私どうしちゃったのかなぁ? そうアリエッタお姉ちゃんに聞いてみたら、強い男は女の囲うのは義務だから、気持ちに折り合いを付けなきゃいけないよって返って来た。

 よく意味が分かんないけど、大好きなお兄ちゃんとずっと一緒に居たいだけなんだけどな。

 あ、でも、お兄ちゃんも皆で幸せになろうってよく言ってるし、シンディーお姉ちゃんもファニーお姉ちゃんも好きだから、皆で幸せになる為に必要なのかな?

 でも、やっぱりモヤモヤする。もっと私を見て欲しい! ギュって抱きしめて欲しい!!


 別の日に、やっぱりお兄ちゃんと1番一緒に居たいけど、どうしたらいいの? ってアリエッタお姉ちゃんに聞いてみたら。正妻になれば良いのですよって言われた。

 正妻って何の事か最初全然分かんなくて聞き返したら、1番のお嫁さんの事なんだって! 他のお嫁さんはただの妾だとかそく……なんとかとか。

 うん、とにかく正妻になれば良いんだよね!


 私絶対負けないんだから!



 ……。でも、何でアリエッタお姉ちゃんはお兄ちゃんを見ながら、ポツリと私も頑張らないとなぁって言ったんだろう? それに呟いた後口抑えてキョロキョロしてるし。

 それよりも、お兄ちゃんにまた抱っこしてもらおう、突撃ー!





 正直ご主人様は人を扱うと言う事に全く慣れていらっしゃらないのだろう。

 どこの世界にお付きの者達の仕事を取りかねないほど手伝いをしようとするご主人様がいらっしゃるとお思いなのだろうか。少なくとも以前の私のご主人様や話に聞いた方々では皆無である。

 無論、好きで家事をなさる方もいらっしゃるようだが、そう言う方も私達の仕事を尊重して下さっていらっしゃるようだし。ああ! また食器を運んでる間にテーブルを拭いていらっしゃる!


「何をされているのですか! ほら、ご主人様は座ってて下さい!」


「あ、いや。でもどうせテーブル拭くだろう?」


「わ・た・し・た・ちの仕事でございますから、邪魔をなさらないで下さい!」


「あぅ。ご、ごめんな」


 し、しまった。そんなに私の仕事は信用出来ないのですか? と悲しくなって、それを誤魔化す為についまた強い口調で注意してしまった。

 本当は素直に聞きたいのだけど、うんと頷かれてしまったら……私の居場所がなくなってしまったらと思うと恐怖を感じてしまう。

 いや、今も言葉を吐いてしまった後にすぐ血の気が引く思いをしているのだ。


 どうしてこんなに上手くいかないのだろう。昔はこんな感じではなかった筈なのに……、シュンとしてエリーを抱いて邪魔にならないようにアリエッタさんと移動するご主人様を眺め、善意でなさっている事くらい察せると言うのに。

 まだ幼く純粋なエリーほどとまではいかなくとも、せめてアリエッタさんくらいには気負い無く対応したいと強く思う。


 いつからだろう、ご主人様に捨てられたくないと思ったのは。

 いつからだろう、もう2度と屋敷に出戻りはしたくないと願ったのは。

 いつからだろう、この生活を手放したくないと祈ったのは。


 いつからだろう。ご主人様ともっと素直に話したいと心が叫ぶようになったのは。

 ああ、普段は少しも動かないこの表情も、隠す為に怒る時だけはきちんと変化してしまっている様だし。人生本当に上手く行かないものだ。


 お願いです。きっと……今は全く出来ていませんが、きっと素直に想いをお伝え致しますから、せめてそれまではお側に居させて下さい。

 どうか……どうか――。


「シンディー。食器拭くの手伝うよ」


「っっっっっ!! で、ですから邪魔しないで下さい!!」


 し、心臓止まるかと思った!! あああああああ、じゃぁなくて。もう、私のバカあああああああああ。

 くすん。またご主人様にさせたくもない表情をさせてしまっちゃったよぉ。





 ご主人様はおかしいと思います。

 いえ、こんな事を思うのも恐れ多いのですが、それでもどうしても思ってしまいます。


「ファニー。何か手伝う事ない?」


 ほら、こうやって使用人に気遣いを見せるとか、少なくとも私は聞いた事も見た事もありません……。いえ、あまりよその家の事は分かりませんから、実際はそう言う方もいらっしゃるのかもしれませんが。

 ともかく、最初は驚きのあまり粗相ばかりしてしまい、それがトラウマと言う訳ではありませんが、仮にあったとしてもお願いするつもりはありません。

 本来、ご主人様に何かをお願いするなんて言語道断と言う事もあるのですけどね。


「いいえ、エリーを見て下さって頂けているだけで、物凄く感謝しております」


「あ、いや、エリー見てるのアリエッタなんだけど」


 きゃぁ、上手く誤魔化せたと思ったのに失敗してしまいました。あわわわわっ。


「ご主人様。ファニーの仕事の邪魔をなさらないで下さい。

 こうも邪魔されると終わる仕事も終わりません」


 救いのごとくシンディーさんが来て下さったのだけど……表情も口調も変化なさそうだけど……いえ、少し不機嫌?

 と、慌てて平謝りなさるご主人様。

 ふぅ、私ももう少し余裕持たないと、正直今まで使用人達がやって来た仕事なんて見ているだけだったから、実際に自分でするとこんなにも大変だったのだと余裕が持てない日々が続いている。

 お陰てテンパってばっかりで、皆さんに迷惑かけてばかりで……。

 シンディーさんも表情など外に出ないだけで、物凄い心配りの出来る素敵なお方だし。エリーちゃんのように天真爛漫と出来る訳もいないし、アリエッタさんのように対等にお話するなんてとてもじゃないけど今の私にま無理だ。


 はっ、ダメダメ、ネガティブになっちゃうと他人にまで伝染しちゃうから、無理せず自分に出来る事をなさいってお母さんに言われてたんだった。


 うん、私は大丈夫。仕事も少しずつ出来てきてるのは間違いないし。それでもご主人様が私を手伝おうとするのは正直心配なのだからだろう。

 勘違いしちゃダメ……あ、全然整理出来ないなぁ。


「ファニーもごめんな。今度こそちゃんとタイミングをバッチリ見計らうからさ!」


「い、いいえ。こちらこそいつもいつもありがとうございます」


 右へ左へブレまくる思考をしていると、いつの間にかシンディーさんは仕事に戻っているしご主人様には謝られてしまう。

 勿論慌てて頭を下げたのだけど……うん、私もっと頑張ろう!

 お母さんと2人で暮らしてる時を笑顔で思い出せるほど、今は幸せだもんね。


 おかしな私のご主人様。まだ貴方に対する自分の感情もよく分かりませんけど。きっと近いうちに事情も気持ちもお話できると思いますので、もう少しだけ待ってて下さいね。





 実に面白くて面白くない。

 いや、正直何で自分がこんな訳の分からない感情に振り回されているのか、はなただ疑問でしかないのだけど。

 うん、エリーさ……エリーとさえ一緒に入れればそれで良かったはずなのに。


「うわーん、癒してくれエリー」


「うん、お兄ちゃんよしよしー」


 エリーを抱えてくるシンイチロウ。どうやら懲りもせずシンディーやファニーの相手をしようと頑張っているようだ。

 そんな暇あれば私とエリーにだけ構ってくれてれば……じゃなくて。どうした私? 抱かれてもいいと思った事なんか多々あるが、こんなおかしな独占欲なんて初めてだぞ?


「アリエッタも色々助言くれたのにすまねぇな」


「いや、こちらこそ役に立たずにすまない」


 いや、正直もっといい助言を出来なくもない筈なのだけど……何故か出来ない。

 何故だろう? 面白く思う自分と同じくらい面白くないと思う自分がいる。


 本当に一体なんなんだ? と言うか、もっと私とだって色々話してくれてもいいじゃないか……。



 むぅ、エリーに質問されても最近妙な事口走ってしまうし。

 うーん、からかって楽しんだりは昔からしてた筈なんだけどなぁ。

 いや、なんかうっすらと予測は付くのだが……いや、やっぱり私にはありえないな。それなりの年月生きてきてエルフ族だと鑑みても蛋白なナイプだったし。


 ……、まぁ、自ずと頃合になれば答えは出るだろう。

 分からない事をそのままにするのは私の趣味ではないのだけど、取り敢えず上に置いておく事とする。

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