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仲良くなろう

 初戦を終え、今後の生活していく上で必要な金額を皆で話し合ったところ、とりあえずなんとかなりそうだって結論に至った。

 まっ、多少は揉めたのだがな。主に俺の武防具が新調出来ないって点で。

 ただ、ランクⅢのうちは少なくとも大丈夫だとアリエッタにもフォローしてもらったので助かった。ランクⅥのお墨付きは偉大だと言えるな。

 ちと予想外だったのが、エリーだけじゃなく、シンディーもファニーも難色を示した事だけど。確かに稼ぎ頭に死なれちゃ困るもんな。やー、それ以外の感情も少しは混ざってくれてると非常に嬉しいけど、流石に判断は付かない。


 で、ならば俺が最初に目標にするべきは、単純に皆と仲良くなろうって事だ。


 いや、真面目な話エリーやアリエッタとばかり話してる気がしてたからな。

 シンディーもファニーも気を使っていたのだろう。

 幸いな事に、アリエッタは俺より遥かにエリーにご執心だし、エリーも徐々にアリエッタに心を開いているようだからここは2人にしてあげるのも重要だと捉えておこう。


 さて、それじゃぁシンディーとファニーとも仲良くなろう計画スタートだ!







「う、上手く行かないにも程がある」


 今日は4戦目で闘士達で混雑する控え室にいるのだが、思わず頭を抱えて唸ってしまう。


 あれから色々と試みたのだが、どれも手応えを感じないどころか寧ろマイナスな印象を与えていないか心配になる事態になってしまっていた。


 例えば、シンディーの手伝いをしようとしたら、ご主人様に手伝わせると言う恥をかかせるつもりですか? と一蹴されてしまう。

 例えば、ファニーと色々話そうと声をかけたら、タイミングが悪かったらしくお茶が入ったポットをひっくり返させてしまい。助ける事には成功したのだけどお茶は浴びて熱いわ、ファニーを泣かせるわ、シンディーを不機嫌にさせるわ最悪だった。

 例えば、シンディーとファニーが仲良く話していたので混ぜて貰おうとエリーと一緒に突撃してみたら、俺は全く会話に入れずいつの間にか混じったアリエッタも含めた4人のガールズトークを永遠と聞く羽目になり、でも不快感を持たせなかったからマシだと自分を慰めてみたり。


 ああああ、思い返せば返すほどろくな事が出来てない。

 はぁ、やっぱり俺に女の子の相手は敷居が高いな。

 項垂れつつ、今日も今日とて八つ当たりに向かう事にする。

 相手が女の闘士ならまだ色々考えるかもしれないけど、元々男の闘士が遥かに多い上俺はまだ1度も当たってないからな。

 けけけけ、見れば既に戦意を喪失してるっぽいし、さっさとボコってやろうかね。





 今日も楽勝で勝利し、本来の10分の1程度のお金を受け取って部屋へと急ぐ。

 うん、あんましお金に興味なかったんだが。これの為に俺を皆が必要に思ってくれていると思うと、頑張り甲斐があるよな。


 よし、気分も浮上している事だし、今日も頑張ってコミュニケーションとろう!




「ご主人様、長いお時間を頂きありがとうございます。

 言葉がまとまりましたので、よろしければお時間頂ければ嬉しく思います」


 おおう、張り切ったソバから想定外のイベント始まっちまったな。

 いや、でも大事なもんだし、ここまで時間をかけてくれたって事はそれだけ真剣に考えてくれたった事だよな。まぁ自身が中心の問題だから当たり前だろうけど。

 ともかく、勇気を出して言い出してくれたであろうファニーを労う意味も込め微笑みながら口を開く。


「おう、勿論さ」


「ありがとうございます」


 顔を綻ばせるファニー。いやー、可愛らしくって実にグッドだ。

 堅苦しい話になっちまうだろうが、重々しい雰囲気で望んでも仕方ないからな。

 気負い過ぎは良くないだろうし、少しは堅さも取れたかな。


 テーブルを5人で囲む。

 ファニーは向かい側で、その両隣にシンディーとアリエッタがそれぞれ座っている。

 で、エリーは何時も通り俺の膝の上だ。

 テーブルの上にはシンディーが淹れたお茶が人数分並ぶ。エリーの前にはこれまた何時も通りお菓子が添えられている。今日はクッキーか。


「先ず始めに申し上げますが、私は庶子で母は貴族ではありません。

 ただ、ご覧の通り私の髪の色は赤です。それも貴族の中で丁度中間程の濃さもあります。責めて日に照らされれば赤く見えなくもない程度だったら良かったのですけど、その所為で1度抱かれた後見向きもされなかった母と共に父に引き取られ……いいえ、強制的に連れて行かれる事になりました」


 分かっちゃいたけど、間違いなく気持ちの良い話じゃないだろうな。

 自然俺を含めた全員の表情が堅くなっていくし、なるべく感情を抑える為だろう、淡々と話すファニーに胸に来るものがある。


「そこからは、詳しくは言いませんが私と母に取って優しくない日々が続きました。

 長い日々の辛い現実が体に障ったのでしょう、母は先日亡くなり私は唯一の味方を失う事になりました。

 きっと父と色々な約束事を交わしていたのでしょう、色んな仕打ちは受けてきましたけど、決定的な事は何もなかったですし、母が間際に私にただただ守れなくてごめんねと漏らしていましたから」


 いったん言葉を止め、目を瞑って深呼吸するファニー。

 彼女が落ち着くまで皆が見守る中、再び瞳を開いて喋るのを再開する。


「それが事実だと証明するかのように、あの日……ご主人様が初めてここで闘士として活躍なさった日に父にここに連れ出され、最近の流行に乗っかり私で賭けをなさいました」


 最近の流行り? 思わず思ってしまったのが表情に出てしまったのだろう。

 クスリと一瞬痛ましく微笑み、その疑問に答えてくれる。


「貴族の間で庶民や奴隷となした子を何かしらの賭けの対象にするのが流行してるのですよ。

 その流行に乗っかる為にわざわざ庶子や奴隷に子を孕ませる方もいるようですし」


 何とも胸糞悪い話だ。この国の貴族どもは性根が腐ってやがるな。

 多分不機嫌がそのまま表情に出てしまっていたのだろう。今度はクスクス長めに笑われてしまう。

 いや、まぁ悪い感じなないし、良いんだけどね。むぅ、ポーカーフェイスとやらを学ばないとなぁ。


「ありがとうございます。

 それで、父は丁度始まるご主人様の戦いに丁度良いと、ご主人様がランクなしから勝ち上がる事にお金をお賭になり。もし負ければ私を差し出すのを条件に、初期のレートのまま全額繰り越しで賭けが成立する事になりました。

 もし、ご主人様が全て勝ち抜いたら膨大なお金が手元に転がり込む事になりますし、その場合は私を奴隷としてご主人様に差し出すようにと。追加でそのような条件が盛り込まれましたので、私は今ここにいます。

 結局は私は邪魔だったのでしょう。」


 ふぅっと息を吐くファニー。喉を潤す為か、はたまた気を落ち着かせる為かお茶を1口口にする。

 闘士の戦いは賭け事に扱われていているとかは流石に知っていたが、そう言う事までやってたんだな。いや、これ以上の事も平気で色々やってそうだ。

 まぁ、闘士を他国の戦等に貸し出しているような国だ。色々業は深いのだろう。


 と、ここまで半ば虚空を見つめていたファニーが俺に視線を合わせた。


「正直に言います。私はご主人様が恐ろしかったです。

 見た事もないような化物を、何も武器も持たずに倒すご主人様が心の底から恐ろしかったです」


 ぐはぁ、面と向かって言われると流石に傷つく。が、当たり前の反応だな。

 なんて思っていると、そのままファニーは言葉を重ねる。


「いつしかご主人様が負ける事を願うようになり、奴隷となると決まった時は絶望しました。

 ただ、もしかしたら悪い人じゃないかもしれないと、そんな藁にも縋る思いでご主人様の部屋に向かいました。

 シンディーさんがご無事の姿でこの部屋にいらっしゃった時、そのもしかしたらが本当にそうなのかもと、そう思いました」


 言い終えると立ち上がり、フラフラと危な気な足取りでこちらへ歩き出すファニー。

 慌ててエリーを椅子に置き、俺もファニーの元へと急ぐ。

 ほどなく、後2歩ほどでぶつかるくらいの距離でお互いに立ち止まる。


「ありがとうございます。私ご主人様と出会えて幸せです。

 ご主人様の奴隷になれて本当に幸せなんです。父にもその気はなかったと知っていても感謝してしまうほどに」


 深く頭を下げ告げられた言葉。頭を上げたファニーは、その可愛らしい顔をクシャクシャにして涙を流していた。

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