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増える付き人

最初エリーを隣に座らせたのだが、お兄ちゃんの膝に座っちゃダメなの? と問いかけ、アリエッタが構いませんと俺が答える前に答えちゃったので、ならば良いかと俺の膝の上に座らせた。

 ほどなく、いい香りが充満し俺達人数分のお茶をシンディーが持ってくる。


「ほぅ、これは美味しいな」


 礼を良い、早速口をつけたアリエッタがそう漏らす。

 うん、俺猫舌だからもう少し冷まして飲むけど、今朝飲んだ時思わず感動するくらい美味しかったからな。本来は実家の方のお茶が好みなんだけど、こちらのお茶も好きになるくらいには。

 と、エリーのお茶が濁ってて不思議に思う。


「これ俺達のと違うけど、何か入れたのか?」


「はい。エリーはまだ幼いですし、ミルクとハチミツを少々入れております」


「ふわぁ、甘ーい。シンディーお姉ちゃん、ありがとう」


 ミルクはともかく、ハチミツって蜂の魔物の巣から採取する貴重で高価な代物の筈なんだが、よくあったな。なんて思って質問しようとしたが、上機嫌にシンディーに言ったエリーに遮られてしまう。

 まっ、この部屋備え付けであったんだろ。なんかランクⅢって俺が思っているより上等の扱いなのかもしれない。


「さて、このまま和むのも良いが、さっさと本題を終わらせよう」


 そう告げると頷くアリエッタ。


「ああ、まぁそう難しい話ではない。

 私もお前の付き人にしてくれないか?」


「おう、良いぞ」


「よくありません!!」


 うわっ、ビビった。

 大きな声がした方を向けば、執事服が入口から声を上げたらしかった。

 と言うか、同じ服装とか着替えたのだろうけど何着持ってるのだろう。大股で近づく執事服にそんな事を思う。


「アリエッタ様はランクⅥですよ! 上位ランク者が決闘もせず下位ランク者の付き人になるなんて前代未聞です」


「セルリック。そう堅い事言わないでくれ。もう決めた事なんだし、シンイチロウも受け入れてくれたんだ。

 前例があろうがなかろうが、お互い納得している以上問題ない筈だぞ」


 へー、この執事服セルリックって言うんだ。ってか、アリエッタが知っているって事は、本来もっと上位者に付く筈って事か?

 他の執事服よりも年長みたいだしな。まぁまだ爺って年齢じゃぁないだろうけど。


 俺が内心そんな事を考えていると、セルリックは力なく首を横に振り、懇願するように言葉を重ねる。


「お願いですからこれ以上我が儘を言わないで下さい。

 本来シンイチロウ様の腕輪の件だって無理とお伝えする予定でしたのに、突然貴方が会議に乱入してきて、貴方の意思を尊重した結果なのですよ」


 おお、だから遅くなったのか。

 ってか、俺が居るのにそんなベラベラ喋って大丈夫なのか? まぁ、そんだけ動揺しているって事なんだろうけど。


「ふむ、つまり貴様はランクⅥの私に意見すると言う事だな?」


「あっ……いえ、決してそんな訳では。

 しかし、他の方々やオーナー方が黙ってないと思いますよ」


 若干不機嫌そうに言うアリエッタに、慌てて姿勢を正すセルリック。

 上位ランクになると自由も増えるけど、シガラミも色々増えそうだなぁ。

 安易に上げすぎるのには気を付けよう。


「まぁまぁ、俺達が納得してるんだし、文句があるなら俺が決闘受けるなり対応するから良いじゃねーか。

 後、多分本当はエリーの付き人になりたいんだと思うぜ? それを譲歩して俺の付き人になるって言っていんだ。察してやれ……て、その時あんたは気絶してたか」


 フォローのつもりだったのだが、顔を青くしたり赤くしたりしつつ口をパクパクと喘ぐセルリック。

 うん、もう少し考えまとめてから発言すれば良かったかな?


「いや、迷惑は掛けられないし、私が決闘を――」


「いやいや、アリエッタが俺の付き人になるなら闘士を辞めるって事だろ?

 だからセルリックだってそれを止めようと発言したんだろうし、俺だってハナからそのつもりでOK出したんだ。

 ほら、可愛い女に甲斐性見せるのは良い男の条件だろ?」


 にっと笑って言えば、どこか呆れたように笑みを零すアリエッタ。

 なんだよ、格好つけたって良いじゃねーか。似合わないだろうけど。


「……それで貴方がたは本当に良いのですね?」


 確認するように聞いてくるセルリックに、頷いて答える俺とアリエッタ。


「分かりました。では、すぐに報告させて頂きます。

 お2人ともお覚悟下さい」


 言い終えると1礼して部屋を出て行くセルリック。

 まっ、なるようになるか。


「恩人に色々と迷惑を掛けてしまう事になりそうだ。すまない」


「んあ? 気にするなよ。俺だって綺麗な女相手だから良いっつった部分あるし、これで惚れてくれりゃぁ願ったり叶ったりなんだがな」


 真剣な表情で言ってきたアリエッタに、肩の力を抜けと言う意味も込めて冗談半分で告げる。

 まぁ、実際惚れられたらって思う気持ちもあるけどな。


「うん。いくらでも私の体を好きにしてくれて構わないからな」


「ぶふぅ。ゲホッ、ゴホッ」


「お兄ちゃん大丈夫?」


 ぐはっ、丁度お茶を口に含んだ瞬間に何ドヤ顔で言ってんだ?

 変なところに入ったじゃねーか。

 心配そうに聞いてきてくれたエリーの頭を撫でつつ、溜息を思わず吐いてしまう。


「いや、そう言うの要らないから」


「何? この体じゃ不満か?」


 おい、胸を寄せるな目が離せなくなるだろう。


「じゃなくて、俺は気持ちが通じた相手以外とそう言う事はするつもりはない。

 例えどんなに魅力的だとしてもだ」 


「好意はちゃんと抱いているぞ。何が問題ある?」


 俺の言葉に不思議そうに聞いてくるアリエッタ。

 正直問題だらけだろうと言わざるを得ないが、どう言ったもんかねぇ。


「その好意ってのは愛しているとか、そこまではいかないだろう?

 この人になら抱かれてもいいじゃなくて、この人に抱かれたいと思うくらいに――」


「いや、だから抱かれたいと思う程度には好意は抱いているのだが」


 ……え? 待った。そうなのか? いかん、混乱してるぞ俺。

 でも、なんかそんなに淡々と言えるものなのか? 全然表情に変化ないし。

 あれ? 照れたりとかは?


「ご主人様、エルフの方々は長命故中々子供を孕みにくいと言う事情もございますし、性的な事に対する認識には誤差が生じて当たり前と思われます」


 助け舟を出してくれたのはシンディー。な、なるほど、そう言う事だったのか。

 じゃぁ、言い方を変えないとな。


「それじゃぁ、結婚は?」


「むっ。……確かに生涯を捧げようとまでは思わないな」


「それだよそれ、俺と結婚してもいいと思ったらって事で!」


「ふむ、承知した。が、抱きたくなったらいつでも言ってくれ」


「だーかーらー……はぁ、分かった。了解」


 どうしよう、なんかドッと疲れたぞ。

 ん? シンディーとファニーが何やらささやき合ってるな?

 気になって聞き耳を立てようとしたのだが、その前にエリーが無邪気に俺に爆弾を投げつける。


「お兄ちゃん。私はお兄ちゃんと結婚したいからいつでも抱いてね!」


「えっと、抱くってただ抱きしめるって事じゃないんだぞ?」


 俺が伝えると、不思議そうに小首を傾げるエリー。


「そうなんだ。じゃぁどう言う事?」


 しまった、薮龍だ。


「まぁあれだ、ちゃんと体が大きくなったら愛しい人と愛を確かめ合う行為って奴だ。

 だから、エリーにはまだ早いな。結婚だって12にはならないと貴族でもなけりゃぁ認められていないからな」


「そうなんだ。じゃぁ後5年したらお兄ちゃんと結婚出来るね!

 その時抱いてね!」


 キラキラと満面の笑みで言うエリー。

 うん、誘導の仕方間違えた。

 あ、でも少なくとも時間は稼げたし、その時には憧れとかじゃなく本当に好きな相手が出来てるよな、うん。


 げ、助けを求めようと視線を向けたら、なんか3人の視線が痛い。

 ご、誤解なんだ。俺には幼女趣味はないからな!

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