闘技場デビュー
「さて、丸腰でゴブリン10匹と死合か」
闘技場のステージのど真ん中。北側の入口から現れた野良のゴブリンと違い、キッチリと整備された装備を身にまとうゴブリン達を見つめつつポツリとそう漏らす。
全員同じ剣に皮の盾に鎧か。区別つかねーな。
ふん、それにしても俺をハメた奴らは俺がなぶり殺しになるところをよほど見たかったとみえる。
ゴブリンって言えば女は犯す道具、男は殺して更に死体になってもいたぶる事で有名だからな。
とは言え、奴らの思い通りになるつもりはサラサラないし。ここさえ勝ち残れば一応ここの闘士として認めて貰えるって寸法なら流石に気張らねーといけねーな。
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアア」
既に勝利を確信でもしているのか、威勢良く雄叫びを上げるゴブリン達に盛り上がる観客達。
客入りは半分よりちょい多いってところか。普通新人の初戦と言えばスッカスカらしいが……流石闘技場へと好んで足を運ぶ奴らだ。罪人がなぶり殺しに合う姿を好きなのは好きな連中が多いと見える。
「ふん、調子に乗るなよ。ご丁寧に魔法封じの腕輪なんざ付けなくてもお前ら程度魔法なんていらねーぜ!」
叫んで一気に駆ける俺に虚をつかれたのか、完全に動きの遅れたゴブリンのその顔に右踵をブチ込む。
そのまま吹き飛ぶそいつに巻き込まれるゴブリンが2匹。
そいつらを無視してまだ構えすら取れていない他のゴブリンに襲いかかる。
先ずは右にいる一番近くのゴブリンの腕を取り、そのまま捻り投げ飛ばす。うっし、上手く右側のゴブリンを全部巻き込めたな。
で、投げ飛ばす最中に奪った剣を思い切り背後に振るえば確かな手応えを感じる。
あめぇ。背中から襲いかかればどうにかなるとかそんな訳ねーだろ。
そのまま蹴飛ばしゴロゴロと転がる。
まぁ、流石にそのまま密集地帯にいたら面倒だからな、壁際まで行かせて貰うぜ。
あっさり壁際にたどり着き振り向けば、案の定距離を置いて俺からするとのろのろと走るゴブリン達。
はは、完全に頭に血が上ってやがるぜ。そんなに力んじゃモンスターも100%の力なんて出るわけねーだろっばーか!
内心で馬鹿にしつつ、何匹始末出来たか確認してみる。
蹴飛ばした奴に投げ飛ばした奴、後斬った3匹だけ殺ったみたいだな。
投げ飛ばした奴まで倒したのはラッキーだな。予定より1匹多く減った訳だ。
「さーて、それじゃぁ4匹目ぇ!」
俺に向かってきてた先頭のゴブリンに剣を投擲し、見事頭に命中っと。あらら、そのまま後ろのゴブリンまで貫いちゃったみてーだな。
ふむ、予定よりどんどん数が減ってくのはありがてぇな。その分無駄な汗かかなくてすむから。
それにしても、所詮ゴブリンと言うか流石ゴブリンと言うか。結局並の男より倍以上力があってもバカじゃぁ意味ない典型ってこったな。
ほら、既に半分まで減ったって言うのに何の警戒もなく俺の方へ走ってきてくれるし。
武器がなくともどうとでも出来ると最初の飛び蹴りやらで気づかないものかねぇ? そもそも、奪った武器をこんな気軽に手放すとか、余裕ですよってアピールしてやってんだが。
まっ、楽できて良いけどな。
「はい、ご苦労さん。そして残念!」
走りながら上段から繰り出される1擊を左に避ける。
あ、右後ろからうめき声聞こえたから、案の定壁に激突したみたいだな。どんだけ俺に首ったけっだっつーの。
んで、左から突っ込んできたゴブリンの攻撃を少し右の前に避けてっと。
「うんうん。前に殺した人間がやったんだろうけど、そうやって腰に手の甲を当て手のひらには剣の柄を当てたまま突撃するのは大変素晴らしいな」
言いながら思いっきり上に飛ぶ。
はっ、身体強化使えなくてもゴブリン程度の身長飛び越えるのわけないぜ。そのままポカンと俺を見上げつつそいつはそのまま通り過ぎていった。
直後いい感じの場所に同時に突っ込んできてた、同じようにポカンと俺を見上げるゴブリン2匹の顔面を思いっきり蹴りつける。
ははは、見事におててが遊んでるじゃねーか。チャンスだったっつーのによ。
はっきりとした手応え……いや、足応えと言った方が良いのか? ともかく、再び宙へ舞った俺はそのまま3回転しつつ地に降り、その勢いで前に数回転がって体制を立て直す。
「おうおう、見事に仲間突き刺してるじゃねーか。うんうん、それ本当に力入るよな」
正直そのレベルの学習能力が備わってるとは思っておらず、素直に賞賛をしてやる。
おぉ、怒ってる怒ってる。
しっかし、この闘争本能ってバーサーカー並だな。流石魔物ってか。
どうやら仲間に突っ込んでいったゴブリンは、最初と次のゴブリン2匹まとめて刺したようで、振り返って俺に暫く怒った後、振り返って剣を抜こうとする。
――褒めてやりはしたが、それでも救いようのないバカの領域は抜けてなかった訳か。
そんな事を考えつつ、後ろから飛び蹴りを後頭部に放って終了。
身動きをしなくなったそいつに、他のゴブリンが持っていた剣を拾ってそのまま念のための止めに深く体に差し入れる。
「ほら、お勉強だ。こんな深く差し入れたらすぐには全然抜けねーだろ? しかも自分の全力で刺したのなら尚更な。
まっ、俺レベルの力があったのならこうやって普通に抜くのも問題なかっただろうけどな」
言い終えるとともに勢いよく剣を引き抜く。
「来世じゃぁちゃんと活用しろよな」
ぽいっと引き抜いた剣をゴブリンの上に投げ捨てつつ吐き捨てる。
さーて、気配がなかったから放置してたが確認するか。
そう思いながら振り返れば、既に倒しておいたゴブリン達の姿は消えていた。
問題なく倒せていたようだな。
事実を確認して上機嫌のまま先ほど倒したゴブリンを見れば、その体が光の粒子となって徐々に消えていくところだった。
さーて、それじゃぁ静まり返った観客にアピールでもしてみるか。
「俺の勝ちだぁ!!」
拳を振り上げて叫べば、それで気を取り戻したかのように拍手が鳴り始め、やがてより大きなものへと変わっていった。




