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07,ザ・バトル・オブ・エバーモア

 「ザ・ロック・福神」の演奏は相変わらずすごかった。観客の一部は多いに盛り上がった。だが激しすぎるパフォーマンスは客の大半を占める「サーラ」ファンには受けず、短かったサーラのステージにがっかりしながら席を立つ姿があちこちで見受けられ、手拍子を打ちながら下手くそな踊りを踊っていた吉祥天がようやく歌い出すとまるで歌になっていない歌に白けてぞろぞろ退出しだした。

 そこへ苛立ちを爆発させた弁天が飛び入りして歌い出した。

 ハードで分厚いドコドコ雷が転げ落ちるようなサウンドに負けない図太い金属質の力強い超ハイトーンボーカルが突き抜け、出口に向かっていたサーラファンはびっくりして振り返った。会場は嵐のように盛り上がり、久しぶりに思い切りシャウトした弁天はすっかりノリノリで、リクルートスーツからへそ出しセクシーコスチュームにチェンジして思い切りロックに弾けたボーカル・ダンス・パフォーマンスを繰り広げた。サーラに癒しを求めていたファンも、最初唖然としていたが、やがて拳を振り上げてワーワーキャーキャー思い切り声を上げて楽しそうに大騒ぎした。

 舞台袖で眼鏡の見習い僧と秘書その5は笑顔でガッチリ握手した。秘書その5は弁天が個人ユニットのサーラに満足できず、もっと有機的結びつきの強いバンドサウンドを求めているのを知っていた。目立ちたがり屋で我が儘で練習嫌いというバンドメンバーとしては困ったヤツながらロックンロールパフォーマーとしては最高のボーカリストである弁天自身、本心ではバンドとしてやりたいと「ザ・七福神バンド」に未練を持っていたのだ。その未練があったから過去の確執がある両バンドとのジョイントコンサートにも参加したのだ。

 弁天は水を得た魚のようにパフォーマンスをし、会場は総立ちで熱狂し盛り上がった。

 予定のセットリストを終えた後もアンコールは鳴りやまず、更に1時間延々と演奏し続け、バンドは力のすべてを出し尽くし、我を忘れて熱狂していた観客もぐったりして心から満足して満面の笑顔で万雷の拍手を送って最高の雰囲気でコンサートを終わらせた。

 この大成功でプロモーターは『これは行ける!』と興奮し、さっそく大晦日のカウントダウンライブと全国ドームツアーを計画した。


 元気があれば何でも出来る!


 日本の未来は明るいぞ!




 三大神様バンドのジョイントコンサート全国ドーム巡りツアーが発表された。

 その発表記者会見でバンド間のメンバー交代が発表された。弁天が「ザ・七福神バンド」に復帰することが正式に発表され、実質的に個人プロジェクトだった「サーラ」は楽曲ごと吉祥天に受け継がれ、「ビューティー・リッチ・アンド・ラック・シュッドゥ・ミー」略して「ラクシュミー」へと新生され、メンバーは吉祥天をボーカルに、謎の黒子=ミス・スターレスナイトをサウンドメイカーとするデュオである。後の話であるが線の細い吉祥天のウィスパーボイスとそれを生かす音響系のデジタルサウンドのおしゃれな楽曲は吉祥天のセレブリティーなルックスとキャラと共に大人気となり契約事務所には大金が転がり込むことになる。しかし、実はミス・スターレスナイトの正体は功徳天である姉吉祥天と対を為す黒闇天、別名「世界終末の夜」黒耳(こくに)であり、常に姉の陰につきまとう妹は姉がバブリーに稼ぎまくった金をありとあらゆるアンラッキーで散財させるという貧乏神であったが、ま、それだけ世の経済を循環させることになり、これも世のため人のための神である。

 「鷹となすび」も順調な活動を続け、宗像三女神は弁天と和解、良好な関係を築く。

 「ザ・七福神バンド」は結局吉祥天が抜けて6人になってしまったが、せっかく弁天が戻ってめでたいと言うことでゴスペル調に声の出るバックボーカルとしてお多福を暫定サポートメンバーにくわえて七福神体制を保つ。声も出てダンスも得意のお多福はバンドにコミカルな風味を持ち込み楽曲の幅を広げることに貢献する。楽器主体のテクニカルに走りすぎる嫌いのあったバンドは昨今隆盛を極めるアニソンを参考にパワフルなボーカルを生かしたハードでありつつポップで壮大な、カラオケでも歌える楽曲で一般にもファン層を広げることに成功する。もっともこれは従来のハードロックファンにはイマイチ不評で痛しかゆしではあるが、まあ、元々弁天のために始めたバンド活動の一つの理想の形と言えるだろう。

 こうして全国ドームツアーは成功していき、忙しいスケジュールの間に制作されたそれぞれのアルバムのセールスも好調で、おめでたいバンドグッズも売れまくり、テレビに出演しては楽しくお茶の間を明るくし、かくしてどん底に喘いだ日本経済に回復の兆しが見え始めた。七福神を招来した政府の決断もようやく実を結んだと見て良いだろう。



 201X年正月、めでたしめでたし。





 と思いきや、

 朝鮮半島からは非常にパフォーマンススキルの高い男芸能神集団「東方神技」が来訪して多くの日本人女性のハートを鷲掴みにし、第二陣としてこれまたヘルシーでセクシーな美脚を見せつける女芸能神集団「神羅」「女神時代」が相次いで来日しその完成された美と圧倒的なパフォーマンスで日本中に旋風を巻き起こし、本邦の神々の脅威となった。

 さらに、

 大陸より「八仙楽神」と名乗る男神七人女神一人の神(仙人)集団が来日してパフォーマンスしたが、その楽曲は「ザ・七福神バンド」の丸パクリであった。その抗議に対して「八仙楽神」側は

「そもそも福の神として我々がオリジナルであり、日本の七福神こそ我々八仙人のコピーであり、不当にキャラクターを使用している七福神は我々に権利料と損害賠償金を支払う義務がある」

 とまったく盗人猛々しい。本当に困った国である。

 「ザ・七福神バンド」はパワフルなライブ活動を続けていく。「鷹となすび」も「ラクシュミー」も自分たちのフィールドでオリジナルの活動を続けていく。

 本物のパフォーマンスは必ずや聴衆の心を掴み震わせ、皆に善良なパワーを与えていくだろう。

 行け!七福神!

 雷鳴のごときパフォーマンスで我々の心を天上へ昇華させてくれ!



 そして、戦いは続く。



 おしまい。

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