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06,レッツ・スペンド・ナイト・トゥギャザー

 持国天と宗像三女神のユニット「鷹となすび」は哀愁のメロディー「ホテル軽井沢」をアダルトコンテンポラリーのベスト10にチャートインするヒットを放ちじわじわ人気を獲得していった。

 全国各地で神出鬼没のライブ活動を展開する「ザ・ロック・福神」も謎の覆面(?)バンドとしてハードロックファンの熱狂的人気を獲得していたが、そもそもハードロックファンの絶対数が少ないのでライブの盛り上がりの割りには世間一般の反応は鈍く、チケット配布の商店街振興策としてはご当地B級グルメにはるかに及んでいないのが実際だった。

 「ザ・ロック・福神」の人気が今ひとつお茶の間レベルに普及しないのはカラオケで歌えるようなキャッチーでポップなヒット曲がないからであろう。超美人であるが声が細く歌唱力も凡庸な女性ボーカルがウィークポイントである。

 そして「ザ・ゴスミックス・弁天・バンド」を解散した弁天は実質的なソロプロジェクト、本名サラスバティーから取った「サーラ」名義で「負けないわ」を発表、逆境にめげない青春応援歌が就職難に苦しむ新卒者や就職浪人のハートをガッチリ掴んで大ヒットする。ミュー○ックステー○ョンに出演した弁天はへそ出しセクシーコスを封印した地味なリクルート狩衣で誠実なキャラクターを演じてしっかりお茶の間の人気を獲得した。


 三者三様にそれぞれしっかりした活動でそれぞれの人気を得ていったが、招来された所期の目的である不況脱出を果たすには至らず、こっそり活動資金を出資している政府官房は苛立ちを募らせていた。政府内の極秘の仕分け会議に取り上げられ、「経済対効果が弱い」とやり玉に挙げられ、「なんとかオリ○ンの1位を取って…」と食い下がる官僚に対し与党女性議員は「1番じゃなくちゃ駄目なんですか?」と痛烈な批判をくわえた。『やっぱオンリー1よりナンバー1だよなあ〜……』と官房秘書は苦い思いをしたが女性議員が怖くて言い返せなかった。

 仕分け会議の結果、七福神及びその周辺ユニットの活動への助成は1年間で打ち切られることが決定した。


 そして1年が経とうという師走、12月半ばという微妙な時期に「スノーパーク音楽祭」という雪の雪像に囲まれ端で子どもたちが雪だるまを作っていそうな雪のお城の舞台ででも行われる歌謡ショーのようなこれまた微妙な名称のイベントが行われることになったが、実態は札幌ドームにて行われる神様三バンドのジョイントコンサートである。現在三者はそれぞれ別の音楽スタイルで活動しているため「ロック」または「ポップ」と限定して名乗ることが出来ず、大晦日のカウントダウンライブという案もあったが、全国からのお客を当てにしているため荒天で交通機関が乱れる、宿の確保がたいへん、公務員は28日仕事納めが慣例で大晦日に仕事なんかしたくない、等の理由で地域振興という所期の目的はすっかり後退したやっつけイベントになってしまった。官公庁に七福神好景気計画の熱はすっかり冷め、民間イベント会社に丸投げされ、チケットはかなりの高額になったが、11月後半に入って急遽発表された割りにはチケットの売れ行きは良好であった。やはり弁天の「サーラ」の人気が高いようで7割、あとの3割を「鷹となすび」「ザ・ロック・福神」が分け合う感じか。


 収容人員5万の6割ほどが埋まって、「スノーパーク音楽祭」が始まった。


 最初に登場したのは「鷹となすび」。ヒット曲「ホテル軽井沢」をメインに「お持ち帰り(テイク・イット・アウト)」「鳴らし物」「その他大勢(ワン・オブ・ゼーズ・ゴッド)」などを披露し、地味ながら高い音楽性と演奏で会場の温度を温め、好評の内に出番を終えた。

 次いでメインの「サーラ」が登場しファンの歓声に迎えられた。弁天以外のメンバーは衆生のプロミュージシャンで構成されている。紺のリクルート狩衣で登場し「負けないわ」を披露する弁天にファンは大喜びし、「祈る想い」「舞い踊ろう」とヒット曲を連続して大いに観客を沸かせた。

 しかし客席の盛り上がりとは裏腹に弁天は今ひとつパフォーマンスに乗り切れていなかった。演奏を披露するのはテレビが主で、CDのプロモーションでインストアライブを何度かやっているが、カラオケか、シンセでリズムを流してキーボードやギターで弾き語りしており、こうしてバンドといっしょにコンサートを行うのはほぼ初めてのことで、練習嫌いの弁天はろくにリハーサルもしていなかった。バンドは一流プレーヤー揃いで、弁天の注文通りの歌いやすいバックミュージックに徹していた。それなのに歌いながら弁天はどうにも気分が乗らず、持ち歌の5曲を歌い終わると、アンコールを叫ぶ観客に対し予定の「ザ・ゴスミックス・弁天・バンド」の曲はやらずに自分のステージを終えてしまった。

 取りの「ザ・ロック・福神」の演奏が始まった。

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