プロローグ〜死に戻りは赤ちゃんから、ですの?〜
煌びやかなホール。天井にぶら下がっているのは豪華なシャンデリア。アカデミーの卒業パーティーはとても盛り上がっていた。王太子とその婚約者は仲良く踊っている。筆頭魔導士の息子は魔法を披露している。皆楽しげで・・・。波打つ青髪を美しく流した彼女は酷く目立っていた。
なんで!なんであのお方は!パトリック様は!わたくしをエスコートしないんですの?!わたくし、せっかくパトリック様の色のドレスを仕立てさせましたのに!なぜ、まだいらっしゃらないの!
扇をギリギリと握りしめて、その整った顔を歪める。彼女こそがルミナス・フォン・カエルム伯爵令嬢。隣国の王子からプロポーズされても、決してその手を取ることがない。彼女が愛しているのはただ1人。騎士団長の息子パトリック・フォン・カンディド侯爵令息。10歳の時に婚約して以降、ずっと一緒にいたのだ。
バタン!大きな音を立てて、ホールの扉が開かれた。ホールがシーンと静まり返る中、ルミナスの顔がパッと明るくなるそこにいたのはパトリック。そして
「・・・キャロライン」
華やかな金髪と可愛らしい容姿。パトリックの後ろに隠れるキャロライン・フォン・カンドーレ子爵令嬢を見たルミナスは心の中で地団駄を踏んだ。
なんであの女が一緒なのよ!本当に役立たずだわ!なんのために毒を盛らせたか、なんのために刺客を送ったか!わかっていないのかしら!パトリック様はわたくしの物なのよ!馴れ馴れしく近づかないでちょうだい!
しかし、さすがの伯爵令嬢。そんな様子を微塵も見せず、パトリックのそばへ寄った。
「パトリック様。遅いですわよ。早速踊りましょう」
その言葉を聞いて、楽団も急いで音楽をもう一度弾き始める。
「いや、ルミナス。俺はお前とは踊らない」
「まあ!なぜですの?」
「なぜ?わかっていないのであれば、教えてやろう!お前は我が愛しのキャロラインに!あろうことか毒を盛り、刺客を送り、階段から突き飛ばし、噴水へ落とした!よって、お前との婚約を破棄する!」
「パトリック!やめろ!ここはそんなことする場ではない!」
王太子がパトリックのことを叱責した。しかしパトリックは動じない。
「殿下。このような女は公衆の面前で裁かねば、懲りないのです」
「パトリック様!全てはあの女が悪いのですよ?!なぜたかが子爵令嬢が婚約者であるわたくしを差し置いてあなたにエスコートされるのです!」
「俺がキャロラインを愛しているからだ。他に理由がいるか?」
「そ、そうなんです・・・。ルミナス様からその・・・パトリック様を奪ってしまうような形にはなってしまいましたが・・・。私とパトリック様はもともと結ばれる運命なのです!」
キャロラインがパトリックをルミナスの視線から守るように前に出た。
「だから?だから、なんですの?わたくしと、パトリック様の婚約は伯爵家と侯爵家が合意して結んだもの。たかが子爵のあなたが抗えるというの?」
「だ、だって!」
「だっても何もございませんの!あなたはわたくしにとってただの邪魔者でしてよ!だいたい、もう自分で告白しているではございませんか!婚約者がいるものに色目を使ったと!浮気していたと!」
ルミナスはキャロラインの顎を掴んだ。
「やはり、愛妾の子は程度が低いものばかりなのね。死んでしまえばいいのに」
「ルミナス、放せ!殿下、この女を牢獄へ!」
「残念だが、具体的な証拠を調べてからでないと・・・」
「なら俺がこの場で殺します!俺は大事な人を守るために騎士になったんだ!ここでお前を殺す、ルミナス!」
語り継がれることになる、悪役令嬢の断罪はルミナスの死を持って幕を閉じ・・・ることはなかった。
いや、正確には閉じた。しかしルミナスの死体が家族の元へ帰ることはなかった。なぜなら、切られた瞬間に、ルミナスの体が光の粒子となって消えたのだ。
そして、光の行き先は・・・
「バブバブ!バブバブバブー!・・・バブ?(パトリック様!何するんですの!・・・あれ?)」
赤ちゃんのカラダへと宿った。
なんか、気が向いて悪役令嬢を描き始めてみました。
書き進めたら、「ん?ラブコメ、書きたかったはずなのに・・・」感が半端なかったんですよね。
根気よく頑張ってみますので、よろしくお願いいたします。




