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鮮紅令嬢は人生を謳歌したい~波乱万丈な人生に異国の皇帝を添えて~  作者: ほっとけぇき


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第33話 期が満ちるまで

「弟から、手紙が来たのです。『あの男がリュミエールにいる』と、ご丁寧に写真までつけて」


 ジョセフにとって、あの男はトラウマものだからね。

 彼に対しては、センサーみたいなものが働くのだろう。


 色々と落ち着いた後、直接聞いてみたらその巨躯をフルフルと震わせていることからも容易に察せられる。


 私は幸いストライクゾーンに入ってなかったからよかったけど。

 もし、入っていたと思ったらぞっとする。


 とりあえず、このことを考えるのはやめよう。一種のホラーだ。


「まぁ、世間話はここまでにしましょう。……本題へ入るまでに時間を浪費してしまいましたね」


 ちょっと2人の心をゆさぶるのを意識しすぎてしまった。


 2人をこちら側に誘導させるために遠回りしたが、2人の顔を見るにこれからすることもスムーズに通ると願いたい。


「本題って、アンパロたちを直接ひっ捕らえたりするってこと? でも、そんなことをしようとても……」

「まぁ、無理でしょうね。バックにあの男がついている時点で一筋縄でいくとは毛頭思っていませんよ。そこまで無策でかかるほど私は愚かではありません」


 直接ひっ捕らえるのだったら、すでに私自身で手を打っている。

 今も全く手を打っていないわけじゃないけどね。


 大物を狩るためにはいろいろと準備が必要でしょう?


「まぁ、彼女たちを捕らえるのはあなた方の手ですけど。自分たちの尻ぐらい自分たちで拭いなさいな」


 ――それぐらいはちゃんとやってくださる?


 そういう意図をこめて目を細める。


 彼らに残されている選択肢は『はい』か『イエス』でしか返事することだけ。


「アタシたちだったらもっと難易度が上がるだろう?! あいつら、この国に籍を置いているって言うのに。捕まえて戻ったところで……」


 あ、良いところをツッコんでくれた。

 そして、『殺してでも止める』と発言しない時点で、やっぱりビアンカは優しいなぁ。


 でも、やっぱりどこか詰めが甘い。


 私は一言も、()()()()()()()()()()()()()()とは言っていないのだから。


「それなら、フリーギドゥムに二度と入れないようにできると言ったらどうですか?」

「国外追放か。兵器として利用されていた強力な薬物の流出は、この条件に合致しているな。でも、そこまでどうやって持っていくつもりだ」


 アンパロ様たちがやったことは、捉えようによっては死刑に相当するからね。


 国外追放は死刑と同等の価値を持つ場合がほとんどだ。

 だからこそ、ヴィクトルが癇癪で国外追放を命令したときは、本当に腸が煮えくり返る気分だった。 


 フリーギドゥムの純粋な民だったら、死刑に処すこともできる。

 だけど、彼女たちはあくまでもフリーギドゥムが預かっている人間なのが厄介だ。


 今、一番考えられる穏便な方法がこれしか思いつかなかったけど、これ以外に手段はないだろう。


「どうとでもできますよ。この国の貴族たちは少なからず、彼女たちに恨みを抱いているようですから」


 図書館で本を読んでいたら、見知らぬ貴族に『あの小娘たちを追い払いたくなったら、いつでも言ってくれ。俺たちも追い出したいから』って初対面で言われたことがあったのだ。


 あの後、あの貴族の姿は見ていないが、そんなことを言う貴族とその令嬢が複数いた。


 というか、この情報を手に入れたのもその人たちの伝からだし。

 相当な量かつ詳細な情報が手に入ったときには彼らの殺意を明確に理解したよ。


 絶対に怒らせないようにしようと思うぐらいには、仄暗い何かを感じた。


「私がお願いしたいことは一つ。確実に彼女たちの処遇の判断ができるまで、あなた方の国のお偉方が介入できないようにしてください」


 どうにも、彼らの国のお偉方は相当うぬぼれているみたいだから、くぎをちゃんとさしてあげないとね。


 フリーギドゥムは彼らの傀儡国家ではない。立派な一つの大国だ。

 自分たちの足で立って、発展していっている。


 だから、彼らの思うとおりに進めるつもりなど毛頭ない。


「それだけでいいのか? 親父どもを言いくるめて、確実にアンパロたちが戻っても大丈夫にしろとでも言われると思ったよ」

「そんな危険度の高いことをあなた方にさせるつもりはありませんよ」


 今の案でも十分危ない橋を渡らせているけど、それは言わないお約束。


 まぁ、できるならそれが一番だけど、彼らを普通に言いくるめるには私たちは余りにも若すぎる。

 足元を掬われてすべてがおじゃんになる可能性が否めないのだ。


 それならば、少しでも確実性の高い手段を使った方が何倍もいいのだ。


「分かった。放っていていいことでもないからね。協力させてもらう。ただ、一ついいかい?」

「なんでしょう? なんでもお聞きください。」


 正直、ハロルドからすぐに了承を得られるとは思わなかった。

 

 自分の立場がどこにいて、その上で自分の安全を守りながら、どのような手を使うか。

 いつもなら、入念に思考をして行動するのに。今回は即答に近い反応だった。


 すでに被害が出ているから、あんまりのんびりはしていられないと言う事ね。


「絶対に重鎮たちが身を引くような情報を一個くれ。それさえあれば、あとは何とかできる」


 確かに、何も武器がない状態で立ち向かうというのはあまりにも無謀よね。


 身を引くような情報ね……。


 単純に彼女たちの罪をほのめかす?

 それだと気付かれてもみ消されるか、あるいはもっと薬が流通するようになってしまう。


 私が嫌だと言っているということにする?

 これは私が舞台から排除される可能性が上がるから、この手段も使えない。


 うーん、どうしよう。


 ……あ、一つあったじゃない。2人ともに共通して渡せて、ある意味強烈な情報が。


「そうでしたね。なら、こう伝えてください。『フリーギドゥムには【鮮紅令嬢】がついている。彼女は【敵に回るのならすべて叩き潰す】と言っていた』と」


 『鮮紅令嬢』は近隣諸国で要注意人物として扱われるほど、危険視しているのでしょう?


 その『鮮紅令嬢』が敵に回るのは彼らとしては避けたいはずだ。


「あぁ、十分だ。むしろ、想像以上の代物を出されるとは……。感謝する」

「さすがに()()()『鮮紅令嬢』から言われたとなると、親父どもも身を引かなきゃならないだろうしな。」


 二人は嬉しそうにあくどく笑みを浮かべる。

 ここまでやる気があるのなら、ちゃんとお願いを果たしてくれそうで私は嬉しい。


 これで、前段階の準備は一つ完了と言うことで良いかしら?


 あとは期が満ちるのを待つだけだ。

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