気付いたら
「殿!起きてください!!」
この声に反応した私。
(あれっ!?船の起床は確か……心温かい怒号と温もりあるこぶしだったはず……。)
「殿!」
「どうしました?」
「どうもこうもありません。一大事が発生しました。」
(漁船の上で一大事となると……。)
「誰か居なくなった?」
(船の上で居なくなる理由は1つ。)
「大事な方が……。」
(船長!?)
「彼が居なくなってしまっては成り立たないでは無いか!?」
「いえ。そこまでの事ではありません。」
(コック長が!?しかしコック長が作業に従事する事は無い。しかも彼はベテラン中のベテラン。飛ぶ等と言う事はあり得ぬ。)
「……こっくちょうとは?」
「料理を担当されている方であります。」
「いえ。板長は炊事場に居ますが……。」
(どうも話が噛み合わない。それに気になる事が1つ。)
「さっきから私の事を『殿』と言っているが、それはいったい?」
「殿は殿であります。」
(私は作業未達の責任を取り、乗組員になった身。殿であるはずは無い。)
「皆さん徹夜続きでお疲れなのでありますね?」
「いえ。ぐっすり眠りに就く事が出来ています。」
「えっ!だって一度作業が始まったら3日は不眠不休……。」
「いくさになればそうなる恐れもありますが、幸い殿の御力により平穏が保たれています故。」
(一人前と見てくれているのかな?)
「ありがとうございます。」
「……まだ寝ぼけているようでありますね?」
(褒めるだけ褒めておいてのパターンかな?)
「ところで一大事とは?」
「織田信長が倒れました。」
(えっ!?)
「織田信長って……。」
「織田信長は織田信長であります。我らと手を組み、上杉と相対している織田信長であります。」
「止めてください。冗談にも程がありますよ。」
「殿。紛れも無い事実であります。」
「いや確かに信長は440年以上前に明智光秀に……。」
「何故その事を御存知なのでありますか?」
「授業で習っただろ?」
「何の授業でありますか?」
「歴史に決まっているでしょう。」
「歴史とは古の?」
「そうですが。」
「信長が倒れたのは……3日前の事であります。」
(ん!?)
「1つ教えてくれますか?」
「何なりと。」
「今って……何年?」
「天正10年でありますが、それが何か?」
「天正10年って事は……。」
頭に手をやると。
(あれ!?ちょんまげが……。どうやら私。戦国時代の誰かに……。)
「すまぬ。教えてください。」
「何でありますか?」
「私は……誰ですか?」
「えっ!蘆名盛隆様でありますが……。」
(あしな……もりたか?)




